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ドキドキ同棲編
それは緑色の目をした怪物
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「大輔って!悪いとは思ったけど、仕方ないじゃん」
粒の大きい苺を求めて離れてしまった大輔くんを呼ぼうと探していると、向こう側で彼を呼び止める男の子の声が聞こえた。
「…別に、俺たちに構わなければ何でも良いよ。腕離してくれる?」
「だから、それじゃあの子の機嫌が悪くて、俺もモーションかけるどころじゃないんだって」
「俺には関係ないよ。俺たちは俺たちでデートを楽しむから邪魔しないで」
普段より幾分か冷たい声で淡々と話す大輔くんが、私の知らない人のようで不思議な気持ちになる。
私に背を向けて立つ大輔くんの表情が伺えず、ヤキモキと二人のやり取りを見つめた。
「なぁ頼むって!大輔が来るからって、あの子も今日ここに来てるんだって!俺と良い感じになるまで一緒に居てよ~」
「意味が分からない。自分の好きな相手に近付くのに、何で俺を頼るわけ?自分でどうにか出来ないなら諦めなよ」
「イケメンのお前には分かんないだろうよ、ブサメンの俺の気持ちなんてさ!!勉強だけ頑張ってやっと医大に受かったら、今度はお前みたいなイケメンと並べられて外見競争とか…。医大に行きさえすりゃ可愛い彼女が出来ると思ってたのに…!お前がミスコン上位者と片っ端から付き合ってる間、俺がどれだけ枕を濡らしたことか…」
ほうほう。ミスコン上位者と片っ端から、とな。
そりゃ、あの外見に医大生と言うスペック、なおかつあの性格なら女子が放っておかないだろう。
過去の恋愛の失敗から、大輔くんの元カノの話は避けて来たけど、やっぱり気になるものは気になる。
それにしても、…ふ~~~ん。ミスコン上位者ねぇ…。
「ミスコン上位者とか関係ないよ。告白してくれたから付き合っただけ。君も付き合いたい子に告白したら良いじゃない?勝手にしなよ」
「だからそれがイケメンの考えなんだよ!告ったら絶対に付き合えるってもんじゃねぇの、普通は!!」
「知らないよそんなの。それじゃあ頑張れば?…俺は彼女の元に行くから、いい加減腕離して」
段々と大輔くんの冷たい声にイライラとした怒気が含まれていく。
私は大輔くんの元に歩み出るかどうか迷っていた。
すると、あの八頭身美女が練乳よりも甘ったるい顔で大輔くんに近付いていく。
「やぁだ~~♡ここに居たんだぁ♡亜子向こうのハウス行ってたぁ♡」
白の萌え袖セーターに茶色のフレアのミニスカート、そのスカートから伸びる脚はほっそり長い。
ストッキングをはかず生足なのに、輝くように真っ白で滑らかな肌は、若さがもたらす勲章のようだった。
綺麗に作り込まれた指先、その指先を交差させながら口元へ持って行く仕草は、ドラマで良く見るもののように完璧だ。
長い首の先にあつらえられた顔は小さく、それでも顔面のパーツの一つ一つが「ここ以外ありえない」と言うくらい完璧な場所にそれぞれ位置しており、一介の大学生とは思えないほどに可愛い顔立ちをしている。
卒業後は芸能事務所にでも入るのだろうか。
ぷっくりとしたピンク色の唇から紡ぎ出される声も可愛らしく、その全てが男性の心を射止める出来栄えだと思った。
いやだ、私。
さっきからあの子のことを好意的に評価出来ない。
若くて可愛いあの子のことを敵意剥き出しで見てしまっている。
「亜子ちゃん!む、向こうの苺は美味しかったかい?」
「…知らなぁい♡亜子、ダイエット中だし、あんまり食べてないもぉん♡」
亜子と呼ばれた子は、大輔くんに縋っていた男の子には目もくれず、大輔くんを一心に見つめている。
上目遣いで、口を半開きにして、わざとらしくない程度のアヒル口。
ゆるふわパーマがかけられた髪の毛は亜麻色で、ツヤツヤと光り輝いている。
私の伸ばしっぱなしの直毛黒髪とは全然違う、手入れの行き届いた『女の子』。
「よ、良かったら俺と…」
「ねぇねぇ、大輔ぇ♡亜子さ、よく考えたんだけどぉ、また大輔と付き合っても良いよぉ♡」
『女の子』は男の子の言葉を遮って、彼女面で大輔くんの腕をとる。
その姿は美男美女カップルそのもので、私が大輔くんの隣に立つよりも自然に思えた。
「だってぇ、亜子と別れた寂しさで、あんなおばさんと付き合ってるんでしょぉ?可哀そうだしぃ、最近の大輔、なんか前より良い感じだしぃ、もう一回付き合ってあげるぅ♡」
いやだ、私。
胃がムカムカしてる。
まだいつもの半分以下しか食べてないのに、胃もたれかな。
そりゃあの『女の子』におばさん扱いされちゃうわ。
「ねぇってば、大輔ぇ♡今なら大輔の束縛もぉ、ちょっとは我慢できるかも♡だからぁ……ねっ?」
自分が可愛いと自覚している女子特有のソレで、大輔くんの腕に絡みつく。
ソレは彼女の全身に漲っていて、まるで世の中全ての男性が自分の好意を受け入れると信じて疑わない素振りだ。
私は彼女のソレ、つまり『愛される自信』を粉々にしてやりたいと思った。
大輔くんの囚われていない方の腕がピクンと動く。
私は大輔くんが何かアクションを起こす前に彼の背中に声を掛けた。
「大輔くんっ!」
精巧に作られた表情を崩して『女の子』がギギッと私を睨む。
彼女の瞳を見つめ返した私の目は、きっと緑色をしていたと思う。
私の胃をムカムカさせていたのは、私の中に居る緑色の目をした怪物だから。
粒の大きい苺を求めて離れてしまった大輔くんを呼ぼうと探していると、向こう側で彼を呼び止める男の子の声が聞こえた。
「…別に、俺たちに構わなければ何でも良いよ。腕離してくれる?」
「だから、それじゃあの子の機嫌が悪くて、俺もモーションかけるどころじゃないんだって」
「俺には関係ないよ。俺たちは俺たちでデートを楽しむから邪魔しないで」
普段より幾分か冷たい声で淡々と話す大輔くんが、私の知らない人のようで不思議な気持ちになる。
私に背を向けて立つ大輔くんの表情が伺えず、ヤキモキと二人のやり取りを見つめた。
「なぁ頼むって!大輔が来るからって、あの子も今日ここに来てるんだって!俺と良い感じになるまで一緒に居てよ~」
「意味が分からない。自分の好きな相手に近付くのに、何で俺を頼るわけ?自分でどうにか出来ないなら諦めなよ」
「イケメンのお前には分かんないだろうよ、ブサメンの俺の気持ちなんてさ!!勉強だけ頑張ってやっと医大に受かったら、今度はお前みたいなイケメンと並べられて外見競争とか…。医大に行きさえすりゃ可愛い彼女が出来ると思ってたのに…!お前がミスコン上位者と片っ端から付き合ってる間、俺がどれだけ枕を濡らしたことか…」
ほうほう。ミスコン上位者と片っ端から、とな。
そりゃ、あの外見に医大生と言うスペック、なおかつあの性格なら女子が放っておかないだろう。
過去の恋愛の失敗から、大輔くんの元カノの話は避けて来たけど、やっぱり気になるものは気になる。
それにしても、…ふ~~~ん。ミスコン上位者ねぇ…。
「ミスコン上位者とか関係ないよ。告白してくれたから付き合っただけ。君も付き合いたい子に告白したら良いじゃない?勝手にしなよ」
「だからそれがイケメンの考えなんだよ!告ったら絶対に付き合えるってもんじゃねぇの、普通は!!」
「知らないよそんなの。それじゃあ頑張れば?…俺は彼女の元に行くから、いい加減腕離して」
段々と大輔くんの冷たい声にイライラとした怒気が含まれていく。
私は大輔くんの元に歩み出るかどうか迷っていた。
すると、あの八頭身美女が練乳よりも甘ったるい顔で大輔くんに近付いていく。
「やぁだ~~♡ここに居たんだぁ♡亜子向こうのハウス行ってたぁ♡」
白の萌え袖セーターに茶色のフレアのミニスカート、そのスカートから伸びる脚はほっそり長い。
ストッキングをはかず生足なのに、輝くように真っ白で滑らかな肌は、若さがもたらす勲章のようだった。
綺麗に作り込まれた指先、その指先を交差させながら口元へ持って行く仕草は、ドラマで良く見るもののように完璧だ。
長い首の先にあつらえられた顔は小さく、それでも顔面のパーツの一つ一つが「ここ以外ありえない」と言うくらい完璧な場所にそれぞれ位置しており、一介の大学生とは思えないほどに可愛い顔立ちをしている。
卒業後は芸能事務所にでも入るのだろうか。
ぷっくりとしたピンク色の唇から紡ぎ出される声も可愛らしく、その全てが男性の心を射止める出来栄えだと思った。
いやだ、私。
さっきからあの子のことを好意的に評価出来ない。
若くて可愛いあの子のことを敵意剥き出しで見てしまっている。
「亜子ちゃん!む、向こうの苺は美味しかったかい?」
「…知らなぁい♡亜子、ダイエット中だし、あんまり食べてないもぉん♡」
亜子と呼ばれた子は、大輔くんに縋っていた男の子には目もくれず、大輔くんを一心に見つめている。
上目遣いで、口を半開きにして、わざとらしくない程度のアヒル口。
ゆるふわパーマがかけられた髪の毛は亜麻色で、ツヤツヤと光り輝いている。
私の伸ばしっぱなしの直毛黒髪とは全然違う、手入れの行き届いた『女の子』。
「よ、良かったら俺と…」
「ねぇねぇ、大輔ぇ♡亜子さ、よく考えたんだけどぉ、また大輔と付き合っても良いよぉ♡」
『女の子』は男の子の言葉を遮って、彼女面で大輔くんの腕をとる。
その姿は美男美女カップルそのもので、私が大輔くんの隣に立つよりも自然に思えた。
「だってぇ、亜子と別れた寂しさで、あんなおばさんと付き合ってるんでしょぉ?可哀そうだしぃ、最近の大輔、なんか前より良い感じだしぃ、もう一回付き合ってあげるぅ♡」
いやだ、私。
胃がムカムカしてる。
まだいつもの半分以下しか食べてないのに、胃もたれかな。
そりゃあの『女の子』におばさん扱いされちゃうわ。
「ねぇってば、大輔ぇ♡今なら大輔の束縛もぉ、ちょっとは我慢できるかも♡だからぁ……ねっ?」
自分が可愛いと自覚している女子特有のソレで、大輔くんの腕に絡みつく。
ソレは彼女の全身に漲っていて、まるで世の中全ての男性が自分の好意を受け入れると信じて疑わない素振りだ。
私は彼女のソレ、つまり『愛される自信』を粉々にしてやりたいと思った。
大輔くんの囚われていない方の腕がピクンと動く。
私は大輔くんが何かアクションを起こす前に彼の背中に声を掛けた。
「大輔くんっ!」
精巧に作られた表情を崩して『女の子』がギギッと私を睨む。
彼女の瞳を見つめ返した私の目は、きっと緑色をしていたと思う。
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