【R18】不貞腐れていたら筋肉質の歳下男子を捕まえました

山田 ぽち太郎

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ドキドキ同棲編

追憶【由香里視点】

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「ぎゃー!また危なそうな男捕まえとる!アタシのおねぇがヤバい!!」

電話を終えて彼ぴのジュンに飛び付くと、小首を傾げながらアタシを抱き留めた。

「なんでー?家族に会いに来るって、良い奴じゃん?」
「…たしかに!ジュン、てんさーい!!」
「だろ~?ゆっか、いつも言ってるじゃん『アタシに紹介出来ない男なんて認めない』って。お姉さんに直接言えば良いのに、お姉さんに言えないことをオレに言うじゃん」
「アタシはおねぇの味方だからな!」
「別に味方だってアドバイスくらいして良いべ?」
「アドバイスしたら、おねぇは自由に選べんもん」
「ヨシヨシ。それならオレが代わりに聞きましょ~」

ジュンはアタシと一緒で頭は悪いけど、人として一本通ったやつだ。
おねぇも男を見る目を養って欲しい。
ダメ男に惹かれる産みの親に似てしまったんだろうか。

「いっくんと結婚すれば話は早いのになぁ」
「逸弥さん?オレも2人は付き合ってるんだと思った~」
「おねぇは絶対いっくん好きだったと思うんだよなぁ。なんでか途中からヨソヨソしくなったけど」
「まぁまぁ、今から来る男に期待しましょ~」

アタシとジュンはおねぇたちの到着を待つ間、アパートの片付けを簡単に済ませる。
この部屋は、おねぇが就職してからアタシと2人暮らしするために借りてくれた。
ママはいつまでもウチに居て欲しいって言ってたけど、熟年再婚したママに遠慮して、アタシたちは家を出たんだ。
ママやにぃにぃと暮らしたボロアパートよりもずっとオンボロで、雨漏りすきま風なんでも来いな部屋だったけど、アタシとおねぇは気に入っていた。
アタシと違って、おねぇの荷物は少ない。
いつでも一人で旅立てそうなほど、少ない。
アタシはそれが怖かった。

ピンポ~ン…

音痴なベルがおねぇの到着を知らせる。
玄関のドアを勢い良く開くと、おねぇよりもひと回りは歳下のイケメンが立っていた。
その背後から、ヒョッコリ頭を出したおねぇは、何だかグッタリした顔をしている。

「…おねぇ、どうかした?」
「おん?別に…」
「顔が赤いよ?グッタリしてるし!お腹空いとるなら、ジュンが作った和菓子あるよ!!」
「何で和菓子…」
「ジュンは和菓子屋の跡取り息子なんよ~♡ほらほら、ジュン!おねぇに挨拶してよ~」
「初めまして~。ゆっかからお姉さんのことは沢山聞いてます。そちらは彼氏さんですか?」
「彼氏じゃな…」
「こんばんは、初めまして。希帆さんの彼氏の大輔って言います。宜しくお願いします」
「ちょ…」
「さぁ希帆さん明日もお仕事なんだから、素早く済ませて帰るよー」

反論しかけたおねぇを丸め込んで、イケメンが家に入って来る。
狭い室内に大人4人では息が詰まりそうだった。

「俺が荷物まとめるから、希帆さんは座ってお茶でも飲んでなよ」

何故かイケメンが仕切って、おねぇは素直にその場に座って与えられたジャスミンティーに口を付ける。
ジュンがいそいそと和菓子の包みを開けた。

「それじゃ大輔くん?こっちで荷物まとめるの手伝って~」
「はい。えーっと、希帆さんの妹さんですか?宜しくお願いします」
「はい、よろしく~!アタシは由香里ね。おねぇの荷物は少ないんだけど、とりあえずスーツと普段着数着で良いかいな?」
「足りないものがあれば買い揃えますよ」
「…おねぇと付き合って長いの?」
「……いえ?最近です」
「なーんか、大輔って聞き覚えがあるんだよねー」
「…あぁ。たぶん、元カレですね、希帆さんの」
「うわ…それってどうなん?元カレと同名って微妙じゃないん?」
「俺は希帆さんの記憶を上書きするのが楽しみですよ」
「……ふむ」

サクサクと手際良く洋服をまとめる大輔くんの言葉に、アタシは思わず手を止める。

「おねぇのこと泣かせたら承知しないよ」

おねぇを託せそうな男が来たら言いたいことがいっぱいあったのに、アタシの口から出たのはありきたりなものだった。

「幸せで満たして泣かせたいと思ってます」

ニィッコリと笑うイケメンは驚くほどに美しくて、おねぇの手に負えない男なんじゃないかと別の意味で心配になる。
まぁ、でも…
このくらいの男の方が、欲しがれないおねぇには丁度良いのかも知れない。
ジュンの作った和菓子を美味しそうに頬張るおねぇを見ながら、なんとなくそう思った。


***************


「…と、言うわけでだ、大輔くん」

三富くんが用意してくれたピザを頬張りながら、おねぇの恋人に向き直る。

「おねぇは小さい頃から苦労してきたんだよ、アタシのワガママも笑って受け止めたりさ。そっから色々あって、あんな残念な姉になっちゃったけど、アタシにとっては唯一の姉なんよ」
「はい」
「アタシはきっと、生みの親の腹に捨てられて、おねぇに拾われた子だからさ、おねぇはアタシの姉であり母親なんよね」
「…はい」
「だから、どうか…アタシのおねぇを宜しくお願いします」

カウンター席から立ち上がって、大輔くんに深々と頭を下げる。
アタシのトサカは安くはないけど、おねぇの為なら高くない。

「…俺の方こそ、よろしくお願いします」

流石はおねぇの彼氏かもしれない。
直ぐに席を立った彼は、アタシよりも綺麗な角度でお辞儀を返す。
その所作はテレビで見たどっかの国の王子よりも気品に溢れていた。

「……ところで、大輔くんっていくつ?」

何だか少し恥ずかしくなって、照れ隠しに無理やりにでも質問してみる。
大輔くんも椅子に座り直しながら、ハンカチで額を拭っていた。

「22歳です」
「ぎゃ~~!!おねぇよりもアタシとの方が年齢近いやんっ!!!」
「そうなんですか?」
「アタシは今年26歳!おねぇとは8歳離れてるから…。……って、おねぇの歳知ってた?アタシ余計な事喋ってない?」
「あぁ、大丈夫ですよ。三富さんの歳知ってたし、マスターは希帆さんと同い年って聞いてたから」
「あぶな~。これでおねぇが歳を誤魔化してたら、アタシのせいで別れるところやん!」
「ハハハ!年齢くらいで希帆さんのことを諦めませんよ。やっと捕まえたので、そんなことで離しません」
「…アンタ、時々肉食獣みたいな目ぇするね」

ゾゾゾ、と背中に這うものを感じて気が遠くなる。
アタシの第六感が、コイツからおねぇを取り上げたら危険だと告げた。

チリンチリ~ン

お店の玄関扉が楽し気なベルの音を奏でる。
おねぇが息を弾ませながら玄関ドアを開いていた。

「…由香里……なんで黙ってたの…?」

アタシの目を見つめながら、おねぇが静かに歩み寄って来る。

「あっはっはー!ジュンから聞いた?」
「聞いたよ!!何で私に一番に教えてくれないのさ!!!」
「いやいや、やっぱりパパになる人に教えないとさ」
「私は由香里の唯一の家族なのにーーーーっ!!!!!」
「あっはっはー!うんうん。もちろん、そうだけど…。これからアタシたちはアタシたちでも家族を作らんと!」

アタシは自分のお腹を撫でながら、涙目のおねぇにピースを掲げる。
おねぇは小さく「おめでとう」と答えた。

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