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ハラハラ同居編
手強い相手☆
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息を弾ませながら迎えに来てくれた彼は汗だくで、プンプンとオスの匂いを漂わせていた。
ごくり
私の喉元が唸りを上げる。
滴る汗と、吐息にも似た息遣い、そして香水と混じって薫り立つ彼の匂い。
気まずい思いはあるのに、どうしても彼の姿を扇情的にとらえてしまう私は、どうしようもない恥知らずだ。
これだけ美しい人が相手なのだから、私の欲求は膨れ上がるばかり。
仕方がない。相手が悪すぎる。手強い相手なのだ。彼は。
私の欲求を擽ってやまない、手強い相手。
「ごめん!待たせちゃった?」
「んーん。館内が暑くて外で涼んでただけだよ。お迎え来てくれてありがとう」
「…」
「…」
見つめ合ってお互いに無言になってしまう。
ケンカをしたわけでもないのに、この気まずさは何だろう。
やっぱり、私の勝手な暴走が彼の負担になっているのだろうか。
「荷物、持つよ」
そう言うと彼はタオルや着替えの入ったバッグを、私の手から取ってくれた。
ぎこちなくお礼を言うと、伸びてきた彼の左手に思わずたじろぐ。
「…手、繋ご?…嫌?」
嫌なのはアナタでは?
昨夜アラサーに襲われたトラウマをもう忘れたの?
それとも、夜道でまた襲ってやろうかぁ~~ぐふふふふ
「…」
「……っぁ」
繋げないままの手を空中で彷徨わせていると、黙って手を握られる。
反射的に小さい声を上げてしまったが、抵抗せず彼にされるがままでいた。
私の歩幅に合わせて、彼が手を引いて歩きだす。
「…」
「…」
「…」
「…、…っ…三富くんと、よく連絡取り合うの?」
無言の時間に耐えられなくなって、ついつい突拍子のないことを聞いてしまう。
「え?」
「だ、だって、三富くん、あんまりLIMEしない人なんだけど、この前も私がお店に居ることをアナタに教えたりしてたし、今日だって私のこと相談してくれてたんでしょ?」
「…うん。時々、LIMEでやり取りさせて貰ってる」
「へぇー!すごい、珍しいなー!本当に中々返事しない人なんだよ?それとも男同士ならちゃんと返事するのかな?おかしいな、私一応幼馴染なのになぁ!」
どうでも良い話を無駄に元気よく喋ってしまう。
そうでもしないと、また沈黙がやって来そうだったからだ。
「…希帆さん、昨日のこと、…ごめんね」
「え…いや……うん…」
唐突な謝罪に狼狽えてしまう。
あぁ、ヤダな。
謝られると、私がとても大事をしでかした様に思える。
まぁ、実際20代を襲うって一大事だと思うけど…。
欲求不満モンスターで、どうもすみません。
「俺、希帆さんに、身体から陥落させるって言ったけど、やっぱりもう無理矢理なエッチはしたくないなって。希帆さんが俺とエッチしたくなるまで我慢しようって思って…」
な ん だ と ?
「でもキスだったり一緒にお風呂入ると、やっぱりエッチしたくなって、自分本位に手を出しそうになって…。だから、なるべく外に出る予定入れて生活時間ずらしてた…ごめんなさい」
計画的犯行か!
んだよぉ、このやろぉぉぉぉ!!!
焦っちゃたじゃんかよぉぉぉぉ!!!
「昨日は希帆さんが本当に、本当に可愛くて…。あのまま下まで触られてたら、組み敷いてめちゃくちゃに抱いてたと思う」
抱 い て く れ
YOUそのまま抱いちゃいなよ!
今までアクセル全開だったのに、突然エンスト起こさないでくれよ!走り続けてくれよ!!
「余裕なくて、突っぱねるみたいになって、ごめんね」
「…」
「…希帆さん?」
「……良かったぁぁぁぁ…」
「希帆さん!?」
手を繋いだまま、私はヘナヘナと地面へ倒れ込んでしまった。
全身の力が抜けてしまったのだ。
「良かった…。嫌われたのかと思った………良かったぁ」
空いている左手で口元を覆うと、ふぅぅぅぅ、と長い息を吐く。
涙が滲んでしまい、前方の道路の信号の輪郭が大きくボヤける。
「…っ、希帆さんを、嫌うなんて、あり得ないよ…!」
覆い被さる様に抱き締められて、彼を取り巻くオスの匂いが、直接鼻腔に飛び込んでくる。
その匂いが頭の先から足の爪先まで走って、心臓と下腹部の中心に、ズクン、と落ち着いた。
「…私から誘ったら……エッチするの?」
オスの匂いに噎せ返りそうになりながら、喘ぐように聞いてしまう。
頭が熱でグラグラして、全身が溶けてしまうように熱い。
「え…」
「私…エッチ…したい……んだけど…」
ごくり
今度は彼の喉元が上下に動く。
「…えー…っと……、希帆さんはエッチがしたいだけ?」
「?」
彼の質問の意味が分からなくて、彼の分厚い胸板から身体を離し、惚けた顔で彼の綺麗な横顔を見上げる。
「…………誰でも良いの?」
チロリと横目を寄越しながら彼が問いかけてくる。
その瞳は怖いくらいに真剣だ。
「エッチ出来れば、誰でも良いの?」
変わらず惚けている私に、今度は顔をこちらに向けて彼が尋ねてくる。
彼が言っている内容は理解出来るのに、頭の中で上手く分解出来ない。
これは高校時代に苦しんだ因数分解なのか?
公式!公式は何を使えば良いの?
苦手なんだよね、数学…
サイン・コサイン・タンジェント!!って呪文みたいよね。
魔女っ子ルンルン、サイン・コサイン・タンジェントになぁ~れ♡
「…」
質問をちゃんと咀嚼出来ずに小首を傾げていると、焦れた顔の彼が風で乱れた私の髪を撫でつけてくれる。
彼は何を言ってるんだろう。
「何を言ってるの?」
頭の中で出た解を、素直に口に出す。
分からなければ分からないと言いなさい、と高校時代の数学の先生に教えられた。
だから、その教えに従って、彼に答える。
「言ってる意味が分からない。アナタとだからエッチがしたいのに、何で他の人が出てくるの?」
数学の問題って、登場人物が多過ぎる。
取り分け意味が分からないのは動く点P。
何故に動くのか。永遠に画鋲で括り付けてやろうか。
あらん限りの力でピィピィ言わせたろか。
XとかYとか数学なのに英語も登場するの本当に解せん。
出来る限りシンプルが良い。
「アナタとエッチしたいの、私は」
彼の目を真っ直ぐに捕らえて、自分の心にある素直な答えを導き出す。
告白の返事とか、そんな事は取り敢えず置いておいて、どうしようもなく、この目の前のオスが欲しい。
彼の顔が真っ赤に染まったので、自分が非常に大胆なことを言ってしまったのだと遅れて気づいた。
二人揃って湯気を出しながら、どちらともなく帰路の歩を進める。
その速度は段々と速くなり、最後の方は駆け足に近かった。
「ふ…あっ……んっ」
玄関を閉めた直後、彼が獰猛なライオンのように、私の唇を奪う。
その口付けはすぐに深いものになって、彼の舌が私の口内を甘く満たした。
「ま…って……鍵…まだ……」
切れ切れにそう伝えると、唇を離さないまま彼は後ろ手で鍵をかけてくれる。
「ちょ…ここ……玄関…っ……」
そのまま押し倒されそうになってたじろいだ。
彼の手は構わず洋服を押し上げ、直接肌に触れて来る。
外気に晒された彼の手は冷たく、怒気を含んでいないと分かっていても、身体に緊張が走った。
「ごめん…ちょっとだけ、触らせて…」
私の身体を壁に押し付けるようにして、私の股の間に彼の右太ももが割り入ってくる。
両手はブラの上から胸を包み込み、私の暴れる心臓と一緒にやわやわと捏ね上げていた。
彼の息遣いが乱れていて、熱のこもった息が唇にあたると、どうしようもない衝動に襲われる。
どちらからともなくキスをして、お互いの舌の感触を確かめ合った。
「ベッド…連れて行って…」
もう立っていられなくなって、彼の首根にぶら下がる。
彼の頑丈な身体は難なく私を抱き上げた。
「希帆さんの身体、めっちゃ熱い…」
ベッドに私を横たえると、彼は素早く私の衣服をはぎ取った。
普段よりも荒々しいその手つきが、彼の中に余裕が残されていないことを表している。
そのことが更に私を煽り立てた。
「ん…いっぱいキスして……ぁっ」
自分の指を嚙みながら、覆い被さってくる彼に懇願の様な声を出す。
体温が上がり続けている。止まらない、熱が。欲が。
全てが迸る。閃光のように瞬いては消える。
消える。消えてしまう。意識が。
もう、お互いの熱しか分からない。
「あ~…、希帆さん、ここ、グッチャグチャ♡」
最後に残ったショーツを脱がせる前に、その布地の上から私の秘裂に薬指を押し当ててきた。
上へ下へ、ゆっくりと扱いて、存分に溢れ出した蜜をサテンの生地に吸わせていく。
「やだぁ…パンツ脱ぐぅ…っ」
「…っ……えっろ…」
「んんっ…ふぁっ…っ」
ショーツを中途半端にはぎ取られて、蜜壺に指を差し入れられる。
自分でも分かるほどに湿ったそこは、容易く彼の細くはない指を受け入れた。
「あ~ぁ…お尻まで垂れちゃってる…♡舐めていい?」
「ダメ…ぇ」
「なぁんで?舐められるの好きでしょ?」
「きたな……いぃぃっ」
「ハハ!ごめん、良いトコ擦っちゃったね♡希帆さん、気持ちぃね?舐められたいね?」
「…やだぁ……」
「なぁんでぇ…。ってか、希帆さん、まっじで、中があっつい♡指が溶けちゃうよ~♡」
「んぇぇ…」
意識が飛ぶ。朦朧として分からない。
熱い。熱い。身体が熱い。
「…希帆さん?」
「…ん」
寒い。寒い。熱くない。寒い。
いや、熱い。
「首元触るよ?…あつ!ヤバい、希帆さん、これ着て!!」
「んん…寒い…でも熱い……」
「風邪ひいたっぽいね。ごめんね気付けなくて…。替えの下着持ってくるから取り合えず布団被っててね」
「ん~…」
湯上りに寝入ってしまったせいだろうか。
自分でも嫌になるくらいのタイミングで風邪を引いてしまったようだ。
「…希帆さん、下着穿く前に提案なんだけど」
「…んぁ~」
「濡れタオルで拭くんじゃなくて、ここ舐め取っても良い?」
「……ばかなの?」
「だって勿体無いじゃ~ん!!!」
文句を言いながらも濡れタオルで清めてから下着を穿かせてくれた。
勿体ないってなにがだよ!
そんなところで日本人の勿体ない精神使うんじゃないよ!!ばーか、ばーーか!!!
「希帆さんが元気になったら沢山しようね♡」
顔中にキスの雨を降らす彼を一度止めて、眼鏡のないぼやけた視界で、彼の色素の薄い目を見つめてから、熱に浮かされた私はこう宣言した。
「私がエッチに誘うから!次は!!ちゃんと!!!」
ごめんね、と呟いた言葉はちゃんと彼に届いたか分からない。
彼の返事を待たずに、意識を手放してしまったから。
ごくり
私の喉元が唸りを上げる。
滴る汗と、吐息にも似た息遣い、そして香水と混じって薫り立つ彼の匂い。
気まずい思いはあるのに、どうしても彼の姿を扇情的にとらえてしまう私は、どうしようもない恥知らずだ。
これだけ美しい人が相手なのだから、私の欲求は膨れ上がるばかり。
仕方がない。相手が悪すぎる。手強い相手なのだ。彼は。
私の欲求を擽ってやまない、手強い相手。
「ごめん!待たせちゃった?」
「んーん。館内が暑くて外で涼んでただけだよ。お迎え来てくれてありがとう」
「…」
「…」
見つめ合ってお互いに無言になってしまう。
ケンカをしたわけでもないのに、この気まずさは何だろう。
やっぱり、私の勝手な暴走が彼の負担になっているのだろうか。
「荷物、持つよ」
そう言うと彼はタオルや着替えの入ったバッグを、私の手から取ってくれた。
ぎこちなくお礼を言うと、伸びてきた彼の左手に思わずたじろぐ。
「…手、繋ご?…嫌?」
嫌なのはアナタでは?
昨夜アラサーに襲われたトラウマをもう忘れたの?
それとも、夜道でまた襲ってやろうかぁ~~ぐふふふふ
「…」
「……っぁ」
繋げないままの手を空中で彷徨わせていると、黙って手を握られる。
反射的に小さい声を上げてしまったが、抵抗せず彼にされるがままでいた。
私の歩幅に合わせて、彼が手を引いて歩きだす。
「…」
「…」
「…」
「…、…っ…三富くんと、よく連絡取り合うの?」
無言の時間に耐えられなくなって、ついつい突拍子のないことを聞いてしまう。
「え?」
「だ、だって、三富くん、あんまりLIMEしない人なんだけど、この前も私がお店に居ることをアナタに教えたりしてたし、今日だって私のこと相談してくれてたんでしょ?」
「…うん。時々、LIMEでやり取りさせて貰ってる」
「へぇー!すごい、珍しいなー!本当に中々返事しない人なんだよ?それとも男同士ならちゃんと返事するのかな?おかしいな、私一応幼馴染なのになぁ!」
どうでも良い話を無駄に元気よく喋ってしまう。
そうでもしないと、また沈黙がやって来そうだったからだ。
「…希帆さん、昨日のこと、…ごめんね」
「え…いや……うん…」
唐突な謝罪に狼狽えてしまう。
あぁ、ヤダな。
謝られると、私がとても大事をしでかした様に思える。
まぁ、実際20代を襲うって一大事だと思うけど…。
欲求不満モンスターで、どうもすみません。
「俺、希帆さんに、身体から陥落させるって言ったけど、やっぱりもう無理矢理なエッチはしたくないなって。希帆さんが俺とエッチしたくなるまで我慢しようって思って…」
な ん だ と ?
「でもキスだったり一緒にお風呂入ると、やっぱりエッチしたくなって、自分本位に手を出しそうになって…。だから、なるべく外に出る予定入れて生活時間ずらしてた…ごめんなさい」
計画的犯行か!
んだよぉ、このやろぉぉぉぉ!!!
焦っちゃたじゃんかよぉぉぉぉ!!!
「昨日は希帆さんが本当に、本当に可愛くて…。あのまま下まで触られてたら、組み敷いてめちゃくちゃに抱いてたと思う」
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今までアクセル全開だったのに、突然エンスト起こさないでくれよ!走り続けてくれよ!!
「余裕なくて、突っぱねるみたいになって、ごめんね」
「…」
「…希帆さん?」
「……良かったぁぁぁぁ…」
「希帆さん!?」
手を繋いだまま、私はヘナヘナと地面へ倒れ込んでしまった。
全身の力が抜けてしまったのだ。
「良かった…。嫌われたのかと思った………良かったぁ」
空いている左手で口元を覆うと、ふぅぅぅぅ、と長い息を吐く。
涙が滲んでしまい、前方の道路の信号の輪郭が大きくボヤける。
「…っ、希帆さんを、嫌うなんて、あり得ないよ…!」
覆い被さる様に抱き締められて、彼を取り巻くオスの匂いが、直接鼻腔に飛び込んでくる。
その匂いが頭の先から足の爪先まで走って、心臓と下腹部の中心に、ズクン、と落ち着いた。
「…私から誘ったら……エッチするの?」
オスの匂いに噎せ返りそうになりながら、喘ぐように聞いてしまう。
頭が熱でグラグラして、全身が溶けてしまうように熱い。
「え…」
「私…エッチ…したい……んだけど…」
ごくり
今度は彼の喉元が上下に動く。
「…えー…っと……、希帆さんはエッチがしたいだけ?」
「?」
彼の質問の意味が分からなくて、彼の分厚い胸板から身体を離し、惚けた顔で彼の綺麗な横顔を見上げる。
「…………誰でも良いの?」
チロリと横目を寄越しながら彼が問いかけてくる。
その瞳は怖いくらいに真剣だ。
「エッチ出来れば、誰でも良いの?」
変わらず惚けている私に、今度は顔をこちらに向けて彼が尋ねてくる。
彼が言っている内容は理解出来るのに、頭の中で上手く分解出来ない。
これは高校時代に苦しんだ因数分解なのか?
公式!公式は何を使えば良いの?
苦手なんだよね、数学…
サイン・コサイン・タンジェント!!って呪文みたいよね。
魔女っ子ルンルン、サイン・コサイン・タンジェントになぁ~れ♡
「…」
質問をちゃんと咀嚼出来ずに小首を傾げていると、焦れた顔の彼が風で乱れた私の髪を撫でつけてくれる。
彼は何を言ってるんだろう。
「何を言ってるの?」
頭の中で出た解を、素直に口に出す。
分からなければ分からないと言いなさい、と高校時代の数学の先生に教えられた。
だから、その教えに従って、彼に答える。
「言ってる意味が分からない。アナタとだからエッチがしたいのに、何で他の人が出てくるの?」
数学の問題って、登場人物が多過ぎる。
取り分け意味が分からないのは動く点P。
何故に動くのか。永遠に画鋲で括り付けてやろうか。
あらん限りの力でピィピィ言わせたろか。
XとかYとか数学なのに英語も登場するの本当に解せん。
出来る限りシンプルが良い。
「アナタとエッチしたいの、私は」
彼の目を真っ直ぐに捕らえて、自分の心にある素直な答えを導き出す。
告白の返事とか、そんな事は取り敢えず置いておいて、どうしようもなく、この目の前のオスが欲しい。
彼の顔が真っ赤に染まったので、自分が非常に大胆なことを言ってしまったのだと遅れて気づいた。
二人揃って湯気を出しながら、どちらともなく帰路の歩を進める。
その速度は段々と速くなり、最後の方は駆け足に近かった。
「ふ…あっ……んっ」
玄関を閉めた直後、彼が獰猛なライオンのように、私の唇を奪う。
その口付けはすぐに深いものになって、彼の舌が私の口内を甘く満たした。
「ま…って……鍵…まだ……」
切れ切れにそう伝えると、唇を離さないまま彼は後ろ手で鍵をかけてくれる。
「ちょ…ここ……玄関…っ……」
そのまま押し倒されそうになってたじろいだ。
彼の手は構わず洋服を押し上げ、直接肌に触れて来る。
外気に晒された彼の手は冷たく、怒気を含んでいないと分かっていても、身体に緊張が走った。
「ごめん…ちょっとだけ、触らせて…」
私の身体を壁に押し付けるようにして、私の股の間に彼の右太ももが割り入ってくる。
両手はブラの上から胸を包み込み、私の暴れる心臓と一緒にやわやわと捏ね上げていた。
彼の息遣いが乱れていて、熱のこもった息が唇にあたると、どうしようもない衝動に襲われる。
どちらからともなくキスをして、お互いの舌の感触を確かめ合った。
「ベッド…連れて行って…」
もう立っていられなくなって、彼の首根にぶら下がる。
彼の頑丈な身体は難なく私を抱き上げた。
「希帆さんの身体、めっちゃ熱い…」
ベッドに私を横たえると、彼は素早く私の衣服をはぎ取った。
普段よりも荒々しいその手つきが、彼の中に余裕が残されていないことを表している。
そのことが更に私を煽り立てた。
「ん…いっぱいキスして……ぁっ」
自分の指を嚙みながら、覆い被さってくる彼に懇願の様な声を出す。
体温が上がり続けている。止まらない、熱が。欲が。
全てが迸る。閃光のように瞬いては消える。
消える。消えてしまう。意識が。
もう、お互いの熱しか分からない。
「あ~…、希帆さん、ここ、グッチャグチャ♡」
最後に残ったショーツを脱がせる前に、その布地の上から私の秘裂に薬指を押し当ててきた。
上へ下へ、ゆっくりと扱いて、存分に溢れ出した蜜をサテンの生地に吸わせていく。
「やだぁ…パンツ脱ぐぅ…っ」
「…っ……えっろ…」
「んんっ…ふぁっ…っ」
ショーツを中途半端にはぎ取られて、蜜壺に指を差し入れられる。
自分でも分かるほどに湿ったそこは、容易く彼の細くはない指を受け入れた。
「あ~ぁ…お尻まで垂れちゃってる…♡舐めていい?」
「ダメ…ぇ」
「なぁんで?舐められるの好きでしょ?」
「きたな……いぃぃっ」
「ハハ!ごめん、良いトコ擦っちゃったね♡希帆さん、気持ちぃね?舐められたいね?」
「…やだぁ……」
「なぁんでぇ…。ってか、希帆さん、まっじで、中があっつい♡指が溶けちゃうよ~♡」
「んぇぇ…」
意識が飛ぶ。朦朧として分からない。
熱い。熱い。身体が熱い。
「…希帆さん?」
「…ん」
寒い。寒い。熱くない。寒い。
いや、熱い。
「首元触るよ?…あつ!ヤバい、希帆さん、これ着て!!」
「んん…寒い…でも熱い……」
「風邪ひいたっぽいね。ごめんね気付けなくて…。替えの下着持ってくるから取り合えず布団被っててね」
「ん~…」
湯上りに寝入ってしまったせいだろうか。
自分でも嫌になるくらいのタイミングで風邪を引いてしまったようだ。
「…希帆さん、下着穿く前に提案なんだけど」
「…んぁ~」
「濡れタオルで拭くんじゃなくて、ここ舐め取っても良い?」
「……ばかなの?」
「だって勿体無いじゃ~ん!!!」
文句を言いながらも濡れタオルで清めてから下着を穿かせてくれた。
勿体ないってなにがだよ!
そんなところで日本人の勿体ない精神使うんじゃないよ!!ばーか、ばーーか!!!
「希帆さんが元気になったら沢山しようね♡」
顔中にキスの雨を降らす彼を一度止めて、眼鏡のないぼやけた視界で、彼の色素の薄い目を見つめてから、熱に浮かされた私はこう宣言した。
「私がエッチに誘うから!次は!!ちゃんと!!!」
ごめんね、と呟いた言葉はちゃんと彼に届いたか分からない。
彼の返事を待たずに、意識を手放してしまったから。
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