【R18】不貞腐れていたら筋肉質の歳下男子を捕まえました

山田 ぽち太郎

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二夜目、take2

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仁王立ちする魔王に冷や汗が止まらない。

え~、いや、えぇ~?なんで居るの?
バイトじゃないの?
なんでここに居るってバレたの?え?え?
魔王の見えざる力?魔力?魔力なの??

「俺が教えたんだよ」

飄々と答えるマスターに驚愕の顔を向ける。

「なんか、面白い事になりそうだなと思って」
「ナイス、ナイス三富くん~」

パチパチと拍手を送る理保さんと、魔王に何を飲むか尋ねる三富くん。

「希帆さん、さっきぶり♡」
「ソウデスネ。1時間ブリデスネ」
「そちらのお姉さんの事、紹介して欲しいな♡」

魔王ぶりを完全封印して、昨夜と同じ愛想の良い笑顔を振りまく彼。
みなさん、騙されてはいけません。彼は魔王です。
と言うか、紹介ってなんて紹介させる気だ。
こちら、昨夜のワンナイトのお相手の22歳男子です♡って?

「…希帆さん、次ワンナイトって言ったら一晩中抱き潰すよ♡」

ふぁ!?
怖い怖い怖い。
笑顔が黒い!纏ってる空気が黒い!!
何で?口から出てた?抱き潰すってなに?
物騒!とても物騒!!

「出てたよ~希帆ちゃん。今の声も聞こえてるよ~」

左側にはアハハと優雅に笑う理保さん。
右側にはフフフと暗黒な笑みを浮かべる魔王。
そして目前にはニヤニヤと成り行きを眺める三富くん。

え~っと、私、どうしたら良いんでしょうか。

「取り合えず、彼のお名前は~?」
「あ~…大輔、くん、です」

理保さんと三富くんが視線を合わせる。
でも一瞬だったので彼には気づかれなかった。

「大輔です。希帆さんの彼氏です♡」
「彼氏じゃないっ!!」
「アハハ!私は理保です。今日は希帆ちゃん借りちゃってごめんね」
「お待たせしました。ジンジャーエールです」
「いえいえ~。折角なんで乾杯しませんか?」
「は~い。お二人の幸せを願って~」
「カンパーイ☆」
「だから、付き合ってなーーーーい!!」
「希帆ちゃん、五月蠅いよ」
「三富くん、少しは優しくしてよぉぉぉ」
「彼氏に優しくしてもらいなよ」
「ちょとぉぉぉ!!!!!」
「うんうん。希帆さん、存分に甘えなね?」
「頭を撫でるなぁぁぁぁ」

三人の流れるようなパス回しに簡単に翻弄される私は残念な脳みそです。
会話の流れについていくのに必死です。
と言うか、なに三人で和やかに話してるんですか。
私だけ蚊帳の外感が半端ない。かなしい。ぐすん。

「大輔くんはお酒飲めないの?」
「飲みますよ!この後車運転するから、今日はソフトドリンクです」
「おん?アナタ大学生って言ってたよね?」
「うん♡知ってる希帆さん?車の免許って18歳から持てるんだよ?」
「いや、それはそうだけども。知ってるけども」

自分が大学時代に免許を持っていなかったからか、
大学生が車の運転をすると聞くとソワソワしてしまう。
なんか、何と言うか、生意気と言うか。
社会人でもないのに車の運転とか。

「大学生なんだ~。どこ大?この辺に住んでるならK大?」
「そうです。医学部です」
「へぇ!賢いんだね~。希帆ちゃん賢い子好きだもんね」

そうなんだけども。否定はしないけれども。
今、学部言う必要あった?

「車は何に乗ってるの?」
「GH-Rです。兄のおさがりですけど」

生意気じゃない?
よりにもよって私が乗りたい車上位のGH-Rに大学生の分際で乗っちゃうわけ?

「すごーい!なかなか良い車に乗ってるね~」
「理保さんの彼氏さんの車の方が良い車です!!」
「アハハハ。まぁ、プラドゥは希帆ちゃんが好きな車№1だもんね~」
「良いなぁ、プラドゥ乗りこなす素敵彼氏…」

ほぅっとため息をつくと、右側から圧を感じた。
心なしか空気もひんやりしている気がする。

「…そろそろ送ろうか?希帆さん。明日、仕事なんでしょ?」
「え…。いや、でもまだ21時にもなってないし、電車もあるから帰れるし…」
「帰ろうね?」
「…ぅあ…はい…」

縋るように理保さんに視線を向けるけど、頑張れ~と送り出されてしまう。
三富くんはいつもの読めない笑顔だ。
私の頭の中では、子牛を乗せて荷馬車が揺れる例の歌が流れている。
昨夜と同じく、私の脱ぎ散らかしたコートを流れるような所作で着付けてくれる彼。
22歳にしては完璧に出来上がり過ぎじゃないか?
しかも今から送ってくれるって、人気SUVに乗せて。
この子は人生何周目なんだろう、とボンヤリ考えていたら、いつの間にか精算も終わっていた。
スマート過ぎて腹が立つなぁ。
今は彼の面子を潰してしまうから、この場ではお礼を伝えて車でお金を渡そう。
むんっ、と鼻息荒く無意味に重い鞄を持ち上げると、彼にそれを簡単に奪われてしまった。
…何だかなぁ。
ちょっと、いや、かなり照れくさいですし。おすし。

昨夜と同じように三富くんにお見送りされて店を後にする。
きっと私は、昨夜と同じで熱に浮かされたみたいな顔をしていたはずだ。
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