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二日目の朝、再放送
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あー…、思い出してきた。
あれから人生2回目の挿入な彼に色々と講釈を垂れて、
でも2回目の最後の方では逆にズクズクにされて
最終的にはメロメロにされちゃったんだ。
近頃の若者の吸収力には驚かされる。
だって童貞だったのに、あんな腰使いするなんて詐欺だ。
「はーい、希帆さん、あーん♡」
と言うよりも、この甘ったるい男子は誰だ。
「…アナタ、最初とキャラが違いすぎない?」
「あー。外面とギャップが凄いって言われるね」
「いつの間にか敬語もなくなってたし。絶妙な距離の詰め方、絶対モテるでしょ」
「なになに?嫉妬してくれてるの?俺は希帆さんだけだよぉ♡」
ちゅっ、ちゅっ、と頬にキスを続ける彼は、帰国子女かなにかだろうか。
私の人生史上最高に甘ったるいことこの上ない。
あれから彼が運んできてくれたフレンチトーストを、お行儀悪くもベッドで頂くことにした。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれる彼は、丁度いい大きさのフレンチトーストを口元に運んでくれる。
「一昨日振られた彼女の事はもう良いの?それが原因でワンナイトしたんじゃないの?」
差し出されたフォークを素直に口で受け止める。
彼の手作りだと言うフレンチトーストは、
まるでどこかのホテルのシェフが作ったかのような仕上がりだ。
「…彼女とは随分前から終わってたし」
「ふぅん。若い子も大変ねぇ」
モグモグと口を動かしながら、少し拗ねた表情の彼を眺める。
それにしても顔が良い。さらにあの肉体美。
「落ち込まなくても、すぐに彼女ができるよアナタなら」
なんと言っても顔が良い。そしてあの肉体美。
大事なことだから2回言った。もう1回言っても良いと思っている。
それに暴走してしまうとしても、気遣いな面もあるようだし。
経験を重ねれば暴走することもないだろうし。
うんうん。君の未来は明るいよ、少年!
「このフレンチトーストも美味しいし。アナタを好きになる女子は少なくないんじゃない?」
話しながら部屋を見回すと、どこも綺麗に整頓されていて清潔感が溢れている。
一人暮らしの男子の部屋とは思えない。
私の知る限り、この歳の男子の部屋は8割が悲惨な状態のはずだ。
私よりも家事スキルが高いのでは?
そうなると引く手あまたじゃないか。素晴らしい。
やっぱり、君の将来は明るいよ、少年!!
心の中でグッと親指を立てて、隣に座る彼に目を戻す。
「っ…え?…ど、…どうしたん?」
彼の纏う空気が暗黒のそれになっている。
この一瞬の間に何が起きたというのだろう。
「希帆さん、まるで他人事みたいに言うね」
「んぇ?や、他人事と言うか…え?何か怒ってる?なんで?」
最近の若者の沸点は分からない。
私は君を励ます言葉を連ねていたはずだ。
何が悪かったのだろうか…。
は!食べ物をポロポロとこぼしてしまう事で有名な私は、今日も落としてしまったのだろうか。
それなら納得。ベッドに食べカスを落とされたら誰だって気を悪くするよね。
パタパタと手の平を布団に走らせて、自分の食べこぼしの跡を探る。
が、幸いなことにベッドは汚していない。
ベッドは汚していない、が、口元にはクリームをつけていた。
「昨日の事、なかったことにしようとしてる?俺、希帆さんの事逃がさないよ」
そのクリームをベロンと舐めてから、怖いくらいに真剣な表情で彼が宣う。
…待て。待て待て待て待て。
待ってくれ。頼む。
やっぱり昨日、ちゃんと確認すれば良かった。
三富くんの所を出る前に。ちゃんと。
この若者に「ワンナイト」が通じているかどうか、確認しなきゃいけなかったんだ。
「………い、いや~…、あの、さ。ワンナイトの意味、分かってる?」
獰猛な獣みたいな彼の目から視線を逸らしつつ尋ねてみる。
身体を離そうとしたが、左手でがっちりと肩をホールドされてしまって逃げられない。
「…知ってるよ。一夜を共にすることでしょ?」
「そう!『一夜』を共にするのであって、彼氏・彼女になる前夜ってわけじゃ…」
「なんで?」
グッと左手に力を込められて、身体が強張ってしまう。
先程までの甘々な声とは真逆の、酷く冷たい声に驚いて思わず彼と視線を合わせた。
綺麗な顔の人間が怒ると怖い、と言われているけれど
あぁ、こんなにも怖いものなんだなぁと変に冷静な思考で思う。
そうでもして思考を違う場所に逃さないと、目前のオスの脅威に竦み上がってしまいそうだった。
「恋人になっちゃいけない理由もないでしょ?」
「…いや、でもさ…」
「なに?俺の事、嫌なの?」
「そう言う事じゃなくて…」
「昨日は俺の事好きになっちゃうって言ったじゃん」
「いやいやいや、それはそれ、これはこれで…」
「なんで?」
だってーーーーーー!
酔ってたじゃん!私、酔ってたじゃんか!
酔ってたでしょ、もう、ヘベレケに。
幼がえりするくらいに出来上がってたでしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!
怖い怖い怖い怖い。いや、怖い。
なに、なにさ、この状況。
怖過ぎるでしょ…。
美人が怒ると怖い、って状況を死ぬ前に堪能出来て良かったけれども。
けれども、この後私の心臓が止まりそうなんだけど。
ダメダメダメ。生命保険入ってないし。
明日、大口のお客様の所に営業に行く予定だし。
死ねない、死ねない。まだ死ねない。
ひぃぃぃ。もう、その氷のような目で見るのやめてよぉ。怖いよぉ。
「……アナタはさ、童貞を捧げた相手を大事にしたいのかもだけど、
私たちは歳も離れてるし、昨日会ったばかりだし、
私は元から一夜限りのつもりだったし、とにかく…っ
痛いっ!痛いっっ!!!肩っ!!!!」
彼の左手が容赦なく私の肩を掴んでいた。
油断していた私は、大袈裟に声を上げてしまう。
「…ごめん」
「ごめんじゃないよ!痛いよ!!アナタは男の子なんだから気をつけなさいっ!」
ギャアギャア喚くと、今度は右手で顎を鷲掴みにされてしまう。
私の豊かな頬肉も一緒にその手中に収められる。
「俺も痛いよ。希帆さんの言葉で傷ついた」
「ふぁに?(なに?)」
「俺の事、一夜限りで忘れられるんだ?」
「ふぁから、ほれふぁ…(だから、それは…)」
「俺は忘れられそうにないよ」
そのまま上唇に噛みつかれ、軽く歯を立てられる。
じゅいっ、と吸い上げられて眩暈がしそうだった。
「昨日会ったばっかりがダメなら、これからずっと一緒に居れば良いね?」
「ふぐっ!?」
「逃がさないからね、希帆さん♡」
背筋が凍る様な笑顔を初体験した私は、生命保険への加入を強く決意したのだった。
あれから人生2回目の挿入な彼に色々と講釈を垂れて、
でも2回目の最後の方では逆にズクズクにされて
最終的にはメロメロにされちゃったんだ。
近頃の若者の吸収力には驚かされる。
だって童貞だったのに、あんな腰使いするなんて詐欺だ。
「はーい、希帆さん、あーん♡」
と言うよりも、この甘ったるい男子は誰だ。
「…アナタ、最初とキャラが違いすぎない?」
「あー。外面とギャップが凄いって言われるね」
「いつの間にか敬語もなくなってたし。絶妙な距離の詰め方、絶対モテるでしょ」
「なになに?嫉妬してくれてるの?俺は希帆さんだけだよぉ♡」
ちゅっ、ちゅっ、と頬にキスを続ける彼は、帰国子女かなにかだろうか。
私の人生史上最高に甘ったるいことこの上ない。
あれから彼が運んできてくれたフレンチトーストを、お行儀悪くもベッドで頂くことにした。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれる彼は、丁度いい大きさのフレンチトーストを口元に運んでくれる。
「一昨日振られた彼女の事はもう良いの?それが原因でワンナイトしたんじゃないの?」
差し出されたフォークを素直に口で受け止める。
彼の手作りだと言うフレンチトーストは、
まるでどこかのホテルのシェフが作ったかのような仕上がりだ。
「…彼女とは随分前から終わってたし」
「ふぅん。若い子も大変ねぇ」
モグモグと口を動かしながら、少し拗ねた表情の彼を眺める。
それにしても顔が良い。さらにあの肉体美。
「落ち込まなくても、すぐに彼女ができるよアナタなら」
なんと言っても顔が良い。そしてあの肉体美。
大事なことだから2回言った。もう1回言っても良いと思っている。
それに暴走してしまうとしても、気遣いな面もあるようだし。
経験を重ねれば暴走することもないだろうし。
うんうん。君の未来は明るいよ、少年!
「このフレンチトーストも美味しいし。アナタを好きになる女子は少なくないんじゃない?」
話しながら部屋を見回すと、どこも綺麗に整頓されていて清潔感が溢れている。
一人暮らしの男子の部屋とは思えない。
私の知る限り、この歳の男子の部屋は8割が悲惨な状態のはずだ。
私よりも家事スキルが高いのでは?
そうなると引く手あまたじゃないか。素晴らしい。
やっぱり、君の将来は明るいよ、少年!!
心の中でグッと親指を立てて、隣に座る彼に目を戻す。
「っ…え?…ど、…どうしたん?」
彼の纏う空気が暗黒のそれになっている。
この一瞬の間に何が起きたというのだろう。
「希帆さん、まるで他人事みたいに言うね」
「んぇ?や、他人事と言うか…え?何か怒ってる?なんで?」
最近の若者の沸点は分からない。
私は君を励ます言葉を連ねていたはずだ。
何が悪かったのだろうか…。
は!食べ物をポロポロとこぼしてしまう事で有名な私は、今日も落としてしまったのだろうか。
それなら納得。ベッドに食べカスを落とされたら誰だって気を悪くするよね。
パタパタと手の平を布団に走らせて、自分の食べこぼしの跡を探る。
が、幸いなことにベッドは汚していない。
ベッドは汚していない、が、口元にはクリームをつけていた。
「昨日の事、なかったことにしようとしてる?俺、希帆さんの事逃がさないよ」
そのクリームをベロンと舐めてから、怖いくらいに真剣な表情で彼が宣う。
…待て。待て待て待て待て。
待ってくれ。頼む。
やっぱり昨日、ちゃんと確認すれば良かった。
三富くんの所を出る前に。ちゃんと。
この若者に「ワンナイト」が通じているかどうか、確認しなきゃいけなかったんだ。
「………い、いや~…、あの、さ。ワンナイトの意味、分かってる?」
獰猛な獣みたいな彼の目から視線を逸らしつつ尋ねてみる。
身体を離そうとしたが、左手でがっちりと肩をホールドされてしまって逃げられない。
「…知ってるよ。一夜を共にすることでしょ?」
「そう!『一夜』を共にするのであって、彼氏・彼女になる前夜ってわけじゃ…」
「なんで?」
グッと左手に力を込められて、身体が強張ってしまう。
先程までの甘々な声とは真逆の、酷く冷たい声に驚いて思わず彼と視線を合わせた。
綺麗な顔の人間が怒ると怖い、と言われているけれど
あぁ、こんなにも怖いものなんだなぁと変に冷静な思考で思う。
そうでもして思考を違う場所に逃さないと、目前のオスの脅威に竦み上がってしまいそうだった。
「恋人になっちゃいけない理由もないでしょ?」
「…いや、でもさ…」
「なに?俺の事、嫌なの?」
「そう言う事じゃなくて…」
「昨日は俺の事好きになっちゃうって言ったじゃん」
「いやいやいや、それはそれ、これはこれで…」
「なんで?」
だってーーーーーー!
酔ってたじゃん!私、酔ってたじゃんか!
酔ってたでしょ、もう、ヘベレケに。
幼がえりするくらいに出来上がってたでしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!
怖い怖い怖い怖い。いや、怖い。
なに、なにさ、この状況。
怖過ぎるでしょ…。
美人が怒ると怖い、って状況を死ぬ前に堪能出来て良かったけれども。
けれども、この後私の心臓が止まりそうなんだけど。
ダメダメダメ。生命保険入ってないし。
明日、大口のお客様の所に営業に行く予定だし。
死ねない、死ねない。まだ死ねない。
ひぃぃぃ。もう、その氷のような目で見るのやめてよぉ。怖いよぉ。
「……アナタはさ、童貞を捧げた相手を大事にしたいのかもだけど、
私たちは歳も離れてるし、昨日会ったばかりだし、
私は元から一夜限りのつもりだったし、とにかく…っ
痛いっ!痛いっっ!!!肩っ!!!!」
彼の左手が容赦なく私の肩を掴んでいた。
油断していた私は、大袈裟に声を上げてしまう。
「…ごめん」
「ごめんじゃないよ!痛いよ!!アナタは男の子なんだから気をつけなさいっ!」
ギャアギャア喚くと、今度は右手で顎を鷲掴みにされてしまう。
私の豊かな頬肉も一緒にその手中に収められる。
「俺も痛いよ。希帆さんの言葉で傷ついた」
「ふぁに?(なに?)」
「俺の事、一夜限りで忘れられるんだ?」
「ふぁから、ほれふぁ…(だから、それは…)」
「俺は忘れられそうにないよ」
そのまま上唇に噛みつかれ、軽く歯を立てられる。
じゅいっ、と吸い上げられて眩暈がしそうだった。
「昨日会ったばっかりがダメなら、これからずっと一緒に居れば良いね?」
「ふぐっ!?」
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