8 / 9
【第二話④】小説の中の君は劣情を煽る side佳香
しおりを挟む
聞きたい気持ちと、誰にも聞かせたく無い気持ちが綯い交ぜになってしまう。
おかげで桐谷への下品な質問から、彼を守ることが出来なかった。
可哀想なくらいに身を縮こまらせて、もう少しで湯気が出てしまうんじゃ無いかと思う程に、
真っ赤な顔をして羞恥心をあらわす桐谷。
(よっぽど恥ずかしかったんだな…)
気遣う気持ちとは裏腹に、耳まで真っ赤にした桐谷への猥雑な感情が顔を出す。
背筋を伸ばした桐谷と視線がぶつかる。
ここ最近、意識をし過ぎて上手く視線を合わせられない自覚があり、今度は逸らせずに固まってしまった。
永遠にも思える10秒足らずの時間を過ごし、逃げるように視線を落としてしまった桐谷を、尚も見つめる。
結局、昼休憩までの1時間、俯く桐谷を見つめて過ごした。
(…今日は休憩室には行かないか……?)
そそくさとフロアを飛び出す桐谷の背中を見送りながら、彼の憩い場所候補を思い浮かべる。
屋上がお気に入りだと話していたが、さすがにこの気候では快適に過ごせないだろう。
けれど今日は営業部の人間を避けて休憩するだろうから、もしかしたら屋上を選ぶかもしれない。
そう考えた俺は屋上へ向かった。
(いねぇな。だとすると、どっちだ?)
あとは中庭のベンチか、非常階段下の猫の溜まり場だ。
今日は天気が良いから日向ぼっこがてらベンチで昼寝かもしれない。
(我ながらストーカーっぽくてやばいな)
そう考えながらも、足は勝手に中庭へ動いていた。
ようやく見つけた桐谷は、夢見る少女の顔で小説に没頭している。
頬を赤く染めて、心なしか瞳が揺れているように見えた。
時折「はぁ」と息を漏らす姿が妙に色っぽくて、ついつい見惚れてしまう。
(どんな内容の本なんだ?…まさか官能小説か?)
ごきゅっ、と生唾を飲むと、自分の中で野性にも似た欲がとぐろを巻くのが分かった。
妙に上気した顔で頭をプルプルと振る桐谷。
その仕草さえも扇情的で、青空の下にいる彼を、仄暗い自分の妄想の檻に囲う。
妄想の中の彼はとても従順で、俺の情欲全てを欲しているようだった。
どうしても抑えきれず、舌舐めずりをしてしまう。
「桐谷、こんな所に居たのか」
出来るだけ紳士的な声を出す。
そう、まるで姫を害悪から守る騎士のような。
本当に倒さなければならないのは、己の中の欲だけどーーーー
おかげで桐谷への下品な質問から、彼を守ることが出来なかった。
可哀想なくらいに身を縮こまらせて、もう少しで湯気が出てしまうんじゃ無いかと思う程に、
真っ赤な顔をして羞恥心をあらわす桐谷。
(よっぽど恥ずかしかったんだな…)
気遣う気持ちとは裏腹に、耳まで真っ赤にした桐谷への猥雑な感情が顔を出す。
背筋を伸ばした桐谷と視線がぶつかる。
ここ最近、意識をし過ぎて上手く視線を合わせられない自覚があり、今度は逸らせずに固まってしまった。
永遠にも思える10秒足らずの時間を過ごし、逃げるように視線を落としてしまった桐谷を、尚も見つめる。
結局、昼休憩までの1時間、俯く桐谷を見つめて過ごした。
(…今日は休憩室には行かないか……?)
そそくさとフロアを飛び出す桐谷の背中を見送りながら、彼の憩い場所候補を思い浮かべる。
屋上がお気に入りだと話していたが、さすがにこの気候では快適に過ごせないだろう。
けれど今日は営業部の人間を避けて休憩するだろうから、もしかしたら屋上を選ぶかもしれない。
そう考えた俺は屋上へ向かった。
(いねぇな。だとすると、どっちだ?)
あとは中庭のベンチか、非常階段下の猫の溜まり場だ。
今日は天気が良いから日向ぼっこがてらベンチで昼寝かもしれない。
(我ながらストーカーっぽくてやばいな)
そう考えながらも、足は勝手に中庭へ動いていた。
ようやく見つけた桐谷は、夢見る少女の顔で小説に没頭している。
頬を赤く染めて、心なしか瞳が揺れているように見えた。
時折「はぁ」と息を漏らす姿が妙に色っぽくて、ついつい見惚れてしまう。
(どんな内容の本なんだ?…まさか官能小説か?)
ごきゅっ、と生唾を飲むと、自分の中で野性にも似た欲がとぐろを巻くのが分かった。
妙に上気した顔で頭をプルプルと振る桐谷。
その仕草さえも扇情的で、青空の下にいる彼を、仄暗い自分の妄想の檻に囲う。
妄想の中の彼はとても従順で、俺の情欲全てを欲しているようだった。
どうしても抑えきれず、舌舐めずりをしてしまう。
「桐谷、こんな所に居たのか」
出来るだけ紳士的な声を出す。
そう、まるで姫を害悪から守る騎士のような。
本当に倒さなければならないのは、己の中の欲だけどーーーー
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説



美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる