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【第一話④】伏し目がちな君の瞳は今日も甘い side佳香
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「仕事の邪魔」
馬鹿みたいに大口を開けた原瀬に、馬鹿にも判るようにハッキリと同じ言葉を繰り返す。
吉澤さんが『やれやれ、恋の暴走列車め☆』と言う表情を向けて来る。
この人、意外と面白いな。
「…ハハ、や、やだなぁ、蒼森くん!俺のことは部長と呼べと言っているじゃ無いか。それに邪魔なんて上司に…」
「桐谷、ちょっとこっち良いか?」
もっと部長らしい人間になってから言えよ。
それより桐谷の身体が心配だ。触って確かめないと。
原瀬を統括部長の元へ向かわせた吉澤さんが、統括部長に一礼をする。
それに対し原瀬に見えないように片手を挙げる所を見ると、少なくとも統括部長まではアイツの悪名が届いているようだ。
先ほどまでの高圧的な態度が嘘のように、ヘコヘコ頭を下げる原瀬を見送るとも無しに見送る。
「アイツ、本当に邪魔だな」
そう独りごちると部内全員から肯定の意を送られる。
眉間のシワをそのままに、フゥと一息吐き出すと、未だ潤んだ瞳をした桐谷を招く。
ぎこちなくも素直に寄って来る仕草に、ついつい口元を緩めそうになり、慌ててその頭を撫でた。
「痛かったろ?」
「あっ…へ、い…き!大丈夫!!あ、ありがとう!!!!」
「…」
想像以上に軟らかな手触りに、思わず息を止めてしまう。
全身の神経を自分の指先に集めた気分だ。
我を忘れて、うっとりと撫で回しそうになるのを必死で抑える。
(桐谷も気持ち良さそうな顔してるし、これ絶対俺に気がある…よな?)
自分に都合よく解釈した考えに身震いをしてしまう。
(俺はまた同じ過ちを繰り返そうって言うのか…!)
「そ…の、蒼森…、庇ってくれて、ありがとう」
「…別に」
俺の汚い思念を気取られないように、不自然に顔を背けてしまう。
(しまった、今の対応は絶対に余所余所しかった。桐谷も微妙な表情をしているし……)
「…」
「っ…、蒼も…り?」
桐谷と目が合って、どうしてももう一度触れたくて、その猫毛に指を伸ばす。
途端に首元まで鮮やかに染め上げる桐谷に、感嘆の声が漏れてしまった。
「真っ赤」
「…っ!!!!!」
このやり取りを満面の笑みで見守る吉澤さんが、視界の端に入る。
この人とはゆっくり話す席を設ける必要がありそうだ。
熱に浮かされた様な顔の桐谷とその猫毛をひとしきり堪能してから、彼を解放した。
「早く俺のものになれば良いのに」
自席に戻る桐谷の背中へかけた言葉は、誰に届くでもなく空気に溶けた。
馬鹿みたいに大口を開けた原瀬に、馬鹿にも判るようにハッキリと同じ言葉を繰り返す。
吉澤さんが『やれやれ、恋の暴走列車め☆』と言う表情を向けて来る。
この人、意外と面白いな。
「…ハハ、や、やだなぁ、蒼森くん!俺のことは部長と呼べと言っているじゃ無いか。それに邪魔なんて上司に…」
「桐谷、ちょっとこっち良いか?」
もっと部長らしい人間になってから言えよ。
それより桐谷の身体が心配だ。触って確かめないと。
原瀬を統括部長の元へ向かわせた吉澤さんが、統括部長に一礼をする。
それに対し原瀬に見えないように片手を挙げる所を見ると、少なくとも統括部長まではアイツの悪名が届いているようだ。
先ほどまでの高圧的な態度が嘘のように、ヘコヘコ頭を下げる原瀬を見送るとも無しに見送る。
「アイツ、本当に邪魔だな」
そう独りごちると部内全員から肯定の意を送られる。
眉間のシワをそのままに、フゥと一息吐き出すと、未だ潤んだ瞳をした桐谷を招く。
ぎこちなくも素直に寄って来る仕草に、ついつい口元を緩めそうになり、慌ててその頭を撫でた。
「痛かったろ?」
「あっ…へ、い…き!大丈夫!!あ、ありがとう!!!!」
「…」
想像以上に軟らかな手触りに、思わず息を止めてしまう。
全身の神経を自分の指先に集めた気分だ。
我を忘れて、うっとりと撫で回しそうになるのを必死で抑える。
(桐谷も気持ち良さそうな顔してるし、これ絶対俺に気がある…よな?)
自分に都合よく解釈した考えに身震いをしてしまう。
(俺はまた同じ過ちを繰り返そうって言うのか…!)
「そ…の、蒼森…、庇ってくれて、ありがとう」
「…別に」
俺の汚い思念を気取られないように、不自然に顔を背けてしまう。
(しまった、今の対応は絶対に余所余所しかった。桐谷も微妙な表情をしているし……)
「…」
「っ…、蒼も…り?」
桐谷と目が合って、どうしてももう一度触れたくて、その猫毛に指を伸ばす。
途端に首元まで鮮やかに染め上げる桐谷に、感嘆の声が漏れてしまった。
「真っ赤」
「…っ!!!!!」
このやり取りを満面の笑みで見守る吉澤さんが、視界の端に入る。
この人とはゆっくり話す席を設ける必要がありそうだ。
熱に浮かされた様な顔の桐谷とその猫毛をひとしきり堪能してから、彼を解放した。
「早く俺のものになれば良いのに」
自席に戻る桐谷の背中へかけた言葉は、誰に届くでもなく空気に溶けた。
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