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【第一話③】伏し目がちな君の瞳は今日も甘い side蒼
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「…ハハ、や、やだなぁ、蒼森くん!俺のことは部長と呼べと言っているじゃ無いか。それに邪魔なんて上司に…」
「桐谷、ちょっとこっち良いか?」
部長の言葉を遮り、項垂れる僕に手招きをする蒼森。
茹で蛸みたいに顔を真っ赤にした部長が、ワナワナと震えだす。そして口を開いた瞬間ーーー
「部長、あちらに統括部長がいらっしゃいますが、行かなくてよろしいのでしょうか?」
ヌッと部長の前に歩み出た営業事務の吉澤さんに、部長が小さく悲鳴を上げる。
「よ、吉澤…!お前、いつからここに?」
「ずっと桐谷さんの隣の席で仕事をしておりました。給料泥棒の営業事務なりに」
「…!い、いや、何、それはだな…」
「統括部長がお呼びのようですよ、原瀬部長。今すぐ行った方が良いんじゃないんですか?」
最後は鼻で笑いながら部長に言い捨てる吉澤さん。
視線はフロアの扉側で仁王立ちしている統括部長へ向けられている。
その視線を追って統括部長と目が合った原瀬部長は、顔面を蒼白にしつつ統括部長の元へ去って行った。
「アイツ、本当に邪魔だな」
誰に言うともなしに呟いた蒼森の一言に営業部全員が肯く。
機嫌が悪そうなその顔も、なんて綺麗なんだろう…と見惚れていた僕に蒼森がコイコイと手招きをする。
オフィスチェアに座ったまま、そろそろと彼の元に近寄ると、先ほどまで小突かれていた頭部を優しく撫でられる。
「痛かったろ?」
「あっ…へ、い…き!大丈夫!!あ、ありがとう!!!!」
「…」
サワサワと彼の長い指の腹で撫でれらて、ゾクんっと身体が一つ戦慄いた。
あまりにも唐突に訪れた自分の劣情に、恥ずかしいくらいに狼狽えてしまう。
純粋に僕を心配してくれている蒼森にも申し訳なかった。
(きっと、今、僕の顔真っ赤だ……!)
うわぁぁぁぁ、と胸中では頭を抱えながら、出来るだけ笑顔で蒼森にお礼を返す。
「そ…の、蒼森…、庇ってくれて、ありがとう」
「…別に」
やっぱり僕の顔が変だったのか、蒼森にそっぽを向かれてしまう。
そうだよな、僕は蒼森が好きだから勝手に意識しちゃうけど、蒼森には関係ないし…。
それでもピリリと胸が痛んだ。
「吉澤さんもありがとうございます。給料泥棒って言われた時、ちゃんと言い返せなくてすみません」
「桐谷くんが謝ることじゃないって!!あのヴォケが最悪なだけだもん!」
「ヴォケって…」
「そもそも部長の作成する下書きが小学生レベルの陳腐で無意味な言葉の羅列だから、毎回桐谷くんが訂正して作成し直してくれてるって言うのに…。給料泥棒なんて自己紹介の言葉なのかな…。やっぱり須藤さんと相談して早急に意見書取りまとめなくちゃ…あのヴォケがいたらこの2人の恋路がどうなるかわかったもんじゃないし…」
突然早口でブツブツと語り出した彼女に、なんと言葉を返せば良いかマゴついていると、僕をジッと見つめる蒼森と目が合った。
「…」
「っ…、蒼も…り?」
無言で頭を撫でて来る蒼森に、再び狼狽えていると、フッと彼が息を吐く。
「真っ赤」
「…っ!!!!!」
柔らかな笑みを浮かべた蒼森と目が合って、僕は呼吸も忘れるくらいの衝撃を受けた。
「桐谷、ちょっとこっち良いか?」
部長の言葉を遮り、項垂れる僕に手招きをする蒼森。
茹で蛸みたいに顔を真っ赤にした部長が、ワナワナと震えだす。そして口を開いた瞬間ーーー
「部長、あちらに統括部長がいらっしゃいますが、行かなくてよろしいのでしょうか?」
ヌッと部長の前に歩み出た営業事務の吉澤さんに、部長が小さく悲鳴を上げる。
「よ、吉澤…!お前、いつからここに?」
「ずっと桐谷さんの隣の席で仕事をしておりました。給料泥棒の営業事務なりに」
「…!い、いや、何、それはだな…」
「統括部長がお呼びのようですよ、原瀬部長。今すぐ行った方が良いんじゃないんですか?」
最後は鼻で笑いながら部長に言い捨てる吉澤さん。
視線はフロアの扉側で仁王立ちしている統括部長へ向けられている。
その視線を追って統括部長と目が合った原瀬部長は、顔面を蒼白にしつつ統括部長の元へ去って行った。
「アイツ、本当に邪魔だな」
誰に言うともなしに呟いた蒼森の一言に営業部全員が肯く。
機嫌が悪そうなその顔も、なんて綺麗なんだろう…と見惚れていた僕に蒼森がコイコイと手招きをする。
オフィスチェアに座ったまま、そろそろと彼の元に近寄ると、先ほどまで小突かれていた頭部を優しく撫でられる。
「痛かったろ?」
「あっ…へ、い…き!大丈夫!!あ、ありがとう!!!!」
「…」
サワサワと彼の長い指の腹で撫でれらて、ゾクんっと身体が一つ戦慄いた。
あまりにも唐突に訪れた自分の劣情に、恥ずかしいくらいに狼狽えてしまう。
純粋に僕を心配してくれている蒼森にも申し訳なかった。
(きっと、今、僕の顔真っ赤だ……!)
うわぁぁぁぁ、と胸中では頭を抱えながら、出来るだけ笑顔で蒼森にお礼を返す。
「そ…の、蒼森…、庇ってくれて、ありがとう」
「…別に」
やっぱり僕の顔が変だったのか、蒼森にそっぽを向かれてしまう。
そうだよな、僕は蒼森が好きだから勝手に意識しちゃうけど、蒼森には関係ないし…。
それでもピリリと胸が痛んだ。
「吉澤さんもありがとうございます。給料泥棒って言われた時、ちゃんと言い返せなくてすみません」
「桐谷くんが謝ることじゃないって!!あのヴォケが最悪なだけだもん!」
「ヴォケって…」
「そもそも部長の作成する下書きが小学生レベルの陳腐で無意味な言葉の羅列だから、毎回桐谷くんが訂正して作成し直してくれてるって言うのに…。給料泥棒なんて自己紹介の言葉なのかな…。やっぱり須藤さんと相談して早急に意見書取りまとめなくちゃ…あのヴォケがいたらこの2人の恋路がどうなるかわかったもんじゃないし…」
突然早口でブツブツと語り出した彼女に、なんと言葉を返せば良いかマゴついていると、僕をジッと見つめる蒼森と目が合った。
「…」
「っ…、蒼も…り?」
無言で頭を撫でて来る蒼森に、再び狼狽えていると、フッと彼が息を吐く。
「真っ赤」
「…っ!!!!!」
柔らかな笑みを浮かべた蒼森と目が合って、僕は呼吸も忘れるくらいの衝撃を受けた。
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