113 / 220
本編
ピンク頭と平凡な人生
しおりを挟む
「わたくしは世界そのものですから。人間の魔術では決して作れない『魂の入っていない生きた肉体』だって錬成することなど造作もないのです」
首吊りゾンビ女神の言葉とともに光の粒と化した僕の肉体は、空気に溶け込むように全て消えてしまった。
そして一呼吸おいて、その場にすさまじい光の爆発が起きる。生きた肉体を持つ人々は、とてもじゃないが目をあけていられないだろう。
どのくらい時間が経っただろう。
光がおさまった後、僕は生前と寸分変わりない肉体でそこにいた。
自分でもすぐには信じられなくて、ゆっくりと手を握ったり開いたりしてみるけれど、何の違和感もなく問題なく動くようだ。髪や服も元通り。
「うわ、ほんとに生きてる」
思わず呟くと、後ろからコニーにそっと抱き寄せられた。
「良かった……温かい……」
おずおずと抱きしめてくる腕にも囁くような声にも安堵がこもっていて、どれだけ心配をかけてしまっていたか痛感する。
「ごめんね、ちょっと無茶しすぎた」
「まったく……肝が冷えたぞ。一人で突っ走るな」
そこにパラクセノス先生が飛んできた。
僕からコニーを引っ剥がすと、そのままぺたぺたと全身触りまくって、首や手首の脈をとって……挙句に力任せにぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「せ……先生ぐるじい……息また停まる……」
「生きてる……生きてるぞコイツ!!ちゃんと心臓動いてやがる!!さんざん心配かけやがって!!この野郎!!」
……この人が泣くことってあるんだ。
いっつも仏頂面で、何を見ても聞いても冷静だから、この人がこんな風に泣くことがあるなんて思ってもみなかった。
なんだよ、師団長まで泣いているじゃないか。いい年齢したオッサンが泣いてもかわいくないぞ。
二人がかりでぎゅうぎゅう抱きしめられて、正直むさくるしいし息も苦しかったけど、きっとそれだけ二人には悲しい思いをさせていたんだろう。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいで、しばらくおとなしくされるがままになっていた。
また息停まると思ったけどね!!
あと、抱きしめられるならアミィ嬢かピオーネ嬢の方が絶対良かった!!
「ちゃんと普通の生きた人間と同じものにしましたからね。ご飯を食べて成長もするし、〇〇〇だってできちゃいますよ。
なんと老化だってしちゃうんです!五十年もすれば綺麗にハゲますよ!!ぴっかぴかですよ!!」
素晴らしい笑顔でなんかさっぱり訳のわからないところで得意満面になってる首吊りゾンビ女神。
やっぱり感覚が人間の理解の斜め上。
というか、いい加減にこの臭い何とかしてほしい。あと、首を傾げるたびに片目がこぼれ落ちそう(物理)になるのも勘弁してくれ。
何回見ても怖いものは怖い。僕、このヒト(?)の眷属としてちゃんとやっていけるんだろうか……??
だいたい、こだわるポイントがよくわからない。
歳取るとハゲるって、そこ自慢するとこなの??
いっそハゲ始めたら綺麗に剃っていいツヤが出るように磨くべきだろうか?
卵の白身でパックとかするとお月様みたいにツヤツヤになると聞いたことがある。本音を言うとふさふさの白髪が希望なんだけど。
いや生き返っただけでもものすごい奇跡なんだから、贅沢言ったら罰があたるのはよくわかってるんだけどね。
あと成長するのは地味に嬉しい。あとちょっとくらい背が伸びないかな?
「耐用年数が来たら壊れちゃいますから、そしたら赤ちゃんから作り直す羽目になりますけど、ちゃんと記憶をリセットして普通に転生したただの人間のように見せかけられますから」
……よくわからないけど、基本的にはごくごく普通の人間と変わらないらしい。
死んだら記憶もリセットされて赤ちゃんからやり直し。
ただ、神様がらみの騒動に巻き込まれた時だけ、僕を起点にイシュタムの力の一部がこの世界に顕現する。それだけが「ただの人間」とは違うところ。
そのほかは、ごく普通の人間として生きて、死んで、また赤ちゃんとして生まれて……を繰り返す。
平凡な人生の繰り返し。
特別に与えられた知識も力もなく、ただの凡人として精一杯生きていくだけの人生。
それは、一度は人生を諦めて死を覚悟した僕にとって、もったいないくらいの奇跡の贈り物だった。
首吊りゾンビ女神の言葉とともに光の粒と化した僕の肉体は、空気に溶け込むように全て消えてしまった。
そして一呼吸おいて、その場にすさまじい光の爆発が起きる。生きた肉体を持つ人々は、とてもじゃないが目をあけていられないだろう。
どのくらい時間が経っただろう。
光がおさまった後、僕は生前と寸分変わりない肉体でそこにいた。
自分でもすぐには信じられなくて、ゆっくりと手を握ったり開いたりしてみるけれど、何の違和感もなく問題なく動くようだ。髪や服も元通り。
「うわ、ほんとに生きてる」
思わず呟くと、後ろからコニーにそっと抱き寄せられた。
「良かった……温かい……」
おずおずと抱きしめてくる腕にも囁くような声にも安堵がこもっていて、どれだけ心配をかけてしまっていたか痛感する。
「ごめんね、ちょっと無茶しすぎた」
「まったく……肝が冷えたぞ。一人で突っ走るな」
そこにパラクセノス先生が飛んできた。
僕からコニーを引っ剥がすと、そのままぺたぺたと全身触りまくって、首や手首の脈をとって……挙句に力任せにぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「せ……先生ぐるじい……息また停まる……」
「生きてる……生きてるぞコイツ!!ちゃんと心臓動いてやがる!!さんざん心配かけやがって!!この野郎!!」
……この人が泣くことってあるんだ。
いっつも仏頂面で、何を見ても聞いても冷静だから、この人がこんな風に泣くことがあるなんて思ってもみなかった。
なんだよ、師団長まで泣いているじゃないか。いい年齢したオッサンが泣いてもかわいくないぞ。
二人がかりでぎゅうぎゅう抱きしめられて、正直むさくるしいし息も苦しかったけど、きっとそれだけ二人には悲しい思いをさせていたんだろう。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいで、しばらくおとなしくされるがままになっていた。
また息停まると思ったけどね!!
あと、抱きしめられるならアミィ嬢かピオーネ嬢の方が絶対良かった!!
「ちゃんと普通の生きた人間と同じものにしましたからね。ご飯を食べて成長もするし、〇〇〇だってできちゃいますよ。
なんと老化だってしちゃうんです!五十年もすれば綺麗にハゲますよ!!ぴっかぴかですよ!!」
素晴らしい笑顔でなんかさっぱり訳のわからないところで得意満面になってる首吊りゾンビ女神。
やっぱり感覚が人間の理解の斜め上。
というか、いい加減にこの臭い何とかしてほしい。あと、首を傾げるたびに片目がこぼれ落ちそう(物理)になるのも勘弁してくれ。
何回見ても怖いものは怖い。僕、このヒト(?)の眷属としてちゃんとやっていけるんだろうか……??
だいたい、こだわるポイントがよくわからない。
歳取るとハゲるって、そこ自慢するとこなの??
いっそハゲ始めたら綺麗に剃っていいツヤが出るように磨くべきだろうか?
卵の白身でパックとかするとお月様みたいにツヤツヤになると聞いたことがある。本音を言うとふさふさの白髪が希望なんだけど。
いや生き返っただけでもものすごい奇跡なんだから、贅沢言ったら罰があたるのはよくわかってるんだけどね。
あと成長するのは地味に嬉しい。あとちょっとくらい背が伸びないかな?
「耐用年数が来たら壊れちゃいますから、そしたら赤ちゃんから作り直す羽目になりますけど、ちゃんと記憶をリセットして普通に転生したただの人間のように見せかけられますから」
……よくわからないけど、基本的にはごくごく普通の人間と変わらないらしい。
死んだら記憶もリセットされて赤ちゃんからやり直し。
ただ、神様がらみの騒動に巻き込まれた時だけ、僕を起点にイシュタムの力の一部がこの世界に顕現する。それだけが「ただの人間」とは違うところ。
そのほかは、ごく普通の人間として生きて、死んで、また赤ちゃんとして生まれて……を繰り返す。
平凡な人生の繰り返し。
特別に与えられた知識も力もなく、ただの凡人として精一杯生きていくだけの人生。
それは、一度は人生を諦めて死を覚悟した僕にとって、もったいないくらいの奇跡の贈り物だった。
10
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説
死神姉妹は斬首刀と踊る~処刑待ちの囚われ元王妃は救国の聖女か亡国の毒婦か~
歌川ピロシキ
ファンタジー
「なんでこのあたしがこんな目に……?」
イアクール王国の元王妃、ミラ・イリス・ローランドは、国家擾乱やその他もろもろの罪で死刑判決を受けた。
かつては利権をほしいままにする専横な高位貴族たちを排除し、病や怪我に苦しむ人々を稀有な治癒魔法で癒して庶民から絶大な人気を得ていたミラ。彼女の行動はこの国の社会を根底から突き動かし、大きな変化をもたらした。
その彼女がなぜ「希代の悪女」とののしられ、罪人として裁かれねばならなかったのか。
ミラは訴える。「自分は女神に選ばれてこの世界を救うために転生したヒロインだ。女神の望み通りに世界を救ってやっただけだ」と。聞くものにとって意味不明ではあっても、無実を訴える彼女の瞳に嘘はない。
判決後、ミラの身柄を預かることとなった美しき処刑人長マリーローズ・エテレクシィはミラと共に彼女の言動の数々を振り返る。
治安と国家秩序の根幹を支える処刑人長であり、また優れた医師でもあるマリーローズの目には、ミラとはまた違った真実が映るようだ。
「救国の聖女」か「亡国の毒婦」か。
吹き荒れる革命の嵐の中、隠された真実は如何に?
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
黄昏時奇譚
歌川ピロシキ
キャラ文芸
物心ついた時には不思議なものが見えていた。他の人には見えないものと大真面目に会話して、大人にも子供にも気味悪がられた。そのうち、それらが他の人には見えないこと、そして自分にわからないものを人は排除したがることを理解した。だから人を遠ざけた。
人当たりの良い笑みを浮かべ、穏やかに振舞っていれば、無闇に敵視されることはない。誰とも敵対せず、誰とも親しくならずに一線を引いて付き合えば良い。
そんな静かで穏やかだが、人の気配のなかった俺の世界に、けたたましい騒音が訪れたのは、ある秋の日のことだった。
-------------------
あやかしをみる力を持って生まれてしまったがために人間と距離を置き、あやかしと共に生きてきた青年が、ふとしたきっかけで親しくなった少年を通じて人と心を通わせていく物語です。
設定は超ゆるゆるです。
たぶん首都圏のどこか山がちなあたり。
秩父か多摩じゃないかな?知らんけど。
感想大歓迎です。ネタバレOK。
励みになります。
辛口批評も勉強になるのでぜひお寄せ下さい。
---------
四宮迅様(https://twitter.com/4nomiyajin)に律を描いていただきました。
ちょっと浮世離れした感じがぴったり(`・ω・´)b
途中で更新が止まってしまっていて申し訳ありませんが、また秋になったらぽつぽつ書き進めていきます。
異世界ネクロマンサー
珈琲党
ファンタジー
トオヤマ・イチロウはふと気づくと異世界にいた。わけも分からず途方に暮れていたイチロウを救ったのは、死霊のクロゼルだった。あてどなく街を散策していたイチロウは、手打ちにされそうになっていた娘、リサを気まぐれで救う。リサを故郷へ送り届ける途中、ちょっとした好奇心にかられて大魔導師パウムの住処へ立ち寄る。大魔導師パウムの働きかけによって、リサは生活魔法の使い手に、イチロウはネクロマンサーとして覚醒する。イチロウとリサとクロゼル、後に仲間に加わった吸血鬼のベロニカ。四者はそれぞれ協力しながら、平和で快適な生活を築くべく奮闘するのだった。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら
フオツグ
恋愛
「私、異世界で推し活します!」
大好きな女性向けスマホゲーム【夜空を彩るミルキーウェイ】の世界に、聖女として召喚された日本の女子高生・イオリ。
イオリの推しは敵のゾンビ男子・ノヴァ。不良そうな見た目でありながら、真面目な努力家で優しい彼にイオリは惚れ込んでいた。
しかし、ノヴァはチュートリアルで主人公達に倒され、以後ストーリーに一切出て来ないのであった……。
「どうして」
推しキャラ・ノヴァを幸せにすべく、限界オタク・イオリは異世界で奮闘する!
限界オタク聖女×拗らせゾンビ男子のピュアラブコメディ!
明治ハイカラ恋愛事情 ~伯爵令嬢の恋~
泉南佳那
恋愛
伯爵令嬢の桜子と伯爵家の使用人、天音(あまね)
身分という垣根を超え、愛を貫ぬく二人の物語。
******************
時は明治の末。
その十年前、吉田伯爵は倫敦から10歳の少年を連れ帰ってきた。
彼の名は天音。
美しい容姿の英日混血の孤児であった。
伯爵を迎えに行った、次女の桜子は王子のような外見の天音に恋をした。
それから10年、月夜の晩、桜子は密に天音を呼びだす。
そして、お互いの思いを知った二人は、周囲の目を盗んで交際するようになる。
だが、その桜子に縁談が持ち上がり、窮地に立たされたふたりは……
******************
身分違いの、切ない禁断の恋。
和風&ハッピーエンド版ロミジュリです!
ロマンティックな世界に浸っていただければ嬉しく思います(^▽^)
*著者初の明治を舞台にしたフィクション作品となります。
実在する店名などは使用していますが、人名は架空のものです。
間違いなど多々あると思います。
もし、お気づきのことがありましたら、ご指摘いただけると大変助かりますm(__)m
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる