言の葉のかけら

凍てついた朝

ねぇ、どうして？こんなことになったの？
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いつも通りの朝のはずだった。
空襲警報が鳴り響き、人々は慣れた様子で足早に防空壕へと急ぐ、いつも通りの朝。
僕の前を走っていた小さな子が転んだ。⁡
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「大丈夫？」⁡
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僕が手を差し伸べると、浮かびかけた涙を手でぐしぐしと拭い、見せてくれた笑顔が可愛い。二人で手を繋いで防空壕に入った。⁡
爆撃機がいなくなったらすぐ学校に行きたいから、地下深くに入らず、出口の近くに陣取る。⁡
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「もっと奥に入らないと危ないわよ」⁡
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近所のおばさんに言われて二人で腰を浮かせたその時だ。⁡
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からん⁡
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軽い音を立てて防空壕の出入口近くに一抱えほどの樽が落ちた。
木製の樽は落下の衝撃であっけなく砕け、中の液体がびちゃりと飛び散る。途端にその液体からしゅうしゅうと音がして、異様な臭いが漂ってきた。⁡
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「く…苦しい…目が痛い…」⁡
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隣の子が喉を押さえて倒れたけれど、僕は何もしてあげられなかった。僕の喉も焼けるように痛んで、息もできなくなったから。⁡
⁡彼は全身を真っ白に染め、泡をふきながら痙攣して……やがて動かなくなった。
その後どうなったかはわからない。僕の意識も消えたから。⁡
⁡
ねぇ、どうして。僕たちはこんな目に遭わなきゃならなかったの？⁡⁡