4 / 28
地獄の始まり
しおりを挟む
『調子乗りすぎ』
『よくやるよ』
最初はただのよくあるアンチコメだと思った。
先生にバレずに可愛く見せるためのメイクテクとか大人の男受けするファッションとか、歌って踊った動画とか。ライブもたまにやる。
手軽に写真や動画を投稿して楽しめるエンスタは須藤空星にとってとても大切な居場所の一つだ。
匿名だから、遠慮なく好きな事が書ける。
学校の馬鹿で空気読めないガキどもや、うわべだけ取り繕ってて自分のことしか考えてない先生たちの顔色をうかがう必要もない。
そして何か投稿するたびにたくさんの「いいね」が集まって、たくさんたくさんほめてくれる人もいて、自分がいかにかわいくてイケてる特別な存在か実感させてくれるのだ。
他にも気が向いた時に好きな事を囁くウィスパーやリアルの知人とつながるFacenote、短い動画を手軽に投稿するTickTackなど、色々なSNSを使いこなしているが、やはりエンスタが一番自分には合っていると思う。
その日もいつものように週末に原宿で買って来たばかりのコーディネートを自撮り投稿すると、すぐにコメントがついた。
さっそくフォロワーがいいねとほめコメをつけたのかと思ってわくわくしながら見てみると、ただの気の抜けた悪口だ。
「だっせえブスが、キモいんだよ」
即刻削除するが、なんともむしゃくしゃする。
腹いせに裏アカに切り替えて、目立つアカウントに片端からアンチコメを書き込んで回った。
「ふん、ゴミクズのくせにイキってんじゃねーよ。たいしてカワイくも面白くもねーくせに」
ひとしきり罵詈雑言を書き込んでスッキリした空星は唖然とした。
「なにこれ……ひどすぎる……」
さっきとは比較にならないほどの数のアンチコメの数々がずらっと並んでいる。
それも最新記事だけではなく、今までの投稿にもすさまじい数が。
『処刑はよ』
『ビッチJSキモイ』
『ブスがサカっててウケる』
見るに堪えない悪口雑言がずらっと並ぶ。
それだけではない。
『××県〇〇市立△△小学校 五年三組 須藤空星』
「キモっ……どうしてあたしの名前がさらされてるの……??」
通っている小学校のクラスと自分のフルネームが晒されている。
『DQNネーム読めねー』
『すどうすてら』
『名前がイタタ』
『親の顔が見たい』
『親の会社これ(http://www.〇〇〇.×××.■□■)』
コメント欄に貼られたURLをクリックすると、確かに父親が勤務する会社のホームページが表示された。
『こいつ彼氏https://www.facenote.co.jp/profile.php?id=×××」
『トシ違いすぎだろwwパパ活じゃね?』
『まとめあるよwww』
『キモっ。キス画像みちゃったwww』
コメント欄には今まで関係を持った男性のFacenoteのURLも貼られている。それどころかデートの様子などの写真が多数集められた「まとめサイト」のURLまで。
「うそ……なんでこんな……」
あまりのことに頭の中が真っ白になった。
彼氏のことは仲の良い友達にしか話していない。グループLIMEにしか投稿したことのない写真の数々に、「友達」の誰かが裏切ったことを悟って絶望する。
「あたしなんにも悪いことしてないのに……誰がこんなこと……」
スマホ画面を見つめながら、ただただ震えるしかなかった。親には間違っても相談できない。
ただでさえSNS利用どころかスマホを持つことにすら猛反対されたのだ。こんなトラブルに巻き込まれたというだけでも、親に知られたら怒られるだけでは済まないだろう。
まして彼氏のことがある。
両親は、まさか娘が年齢の離れた男と付き合っているなんて夢にも思ってもいないはず。ましてキスやそれ以上のことをしている写真など、見られてしまったら烈火のごとく怒るのは目に見えている。
「どうしよう……あたし一人でなんとかしなくっちゃ……」
彼女は怯えながらも、これから自分の取るべき行動について一人で思いをめぐらしていた。
まずエンスタのコメント欄を閉じ、念のため他のSNSを確認してみる。
案の定、そちらも悪意あるコメントで溢れてかえっている。
仕方がないのでよく使うアカウントは非公開にしたうえで全てコメント欄を閉じた。簡単に事情を説明する投稿をして、しばらくは低浮上となるとアカウント名に注釈をつける。
利用頻度の低いSNSは面倒なので退会した。
「……こんなゴミクズどもに負けてたまるか……」
こんな嫌がらせに負ける訳にはいかない。
流出した写真にせよ個人情報にせよ、グループの誰かが裏切ったことは間違いない。犯人を突き止めて、しっかりと落とし前をつけさせなければ。
この自分に逆らったことを後悔させるだけでは気が済まない。徹底的に追い詰めて、一生そのツケを払いながら怯えて暮らすようにさせなければ。
彼女はとことん戦う決意を固めると、翌日の学校での対決に備えて早々にベッドに入ったのであった。
『よくやるよ』
最初はただのよくあるアンチコメだと思った。
先生にバレずに可愛く見せるためのメイクテクとか大人の男受けするファッションとか、歌って踊った動画とか。ライブもたまにやる。
手軽に写真や動画を投稿して楽しめるエンスタは須藤空星にとってとても大切な居場所の一つだ。
匿名だから、遠慮なく好きな事が書ける。
学校の馬鹿で空気読めないガキどもや、うわべだけ取り繕ってて自分のことしか考えてない先生たちの顔色をうかがう必要もない。
そして何か投稿するたびにたくさんの「いいね」が集まって、たくさんたくさんほめてくれる人もいて、自分がいかにかわいくてイケてる特別な存在か実感させてくれるのだ。
他にも気が向いた時に好きな事を囁くウィスパーやリアルの知人とつながるFacenote、短い動画を手軽に投稿するTickTackなど、色々なSNSを使いこなしているが、やはりエンスタが一番自分には合っていると思う。
その日もいつものように週末に原宿で買って来たばかりのコーディネートを自撮り投稿すると、すぐにコメントがついた。
さっそくフォロワーがいいねとほめコメをつけたのかと思ってわくわくしながら見てみると、ただの気の抜けた悪口だ。
「だっせえブスが、キモいんだよ」
即刻削除するが、なんともむしゃくしゃする。
腹いせに裏アカに切り替えて、目立つアカウントに片端からアンチコメを書き込んで回った。
「ふん、ゴミクズのくせにイキってんじゃねーよ。たいしてカワイくも面白くもねーくせに」
ひとしきり罵詈雑言を書き込んでスッキリした空星は唖然とした。
「なにこれ……ひどすぎる……」
さっきとは比較にならないほどの数のアンチコメの数々がずらっと並んでいる。
それも最新記事だけではなく、今までの投稿にもすさまじい数が。
『処刑はよ』
『ビッチJSキモイ』
『ブスがサカっててウケる』
見るに堪えない悪口雑言がずらっと並ぶ。
それだけではない。
『××県〇〇市立△△小学校 五年三組 須藤空星』
「キモっ……どうしてあたしの名前がさらされてるの……??」
通っている小学校のクラスと自分のフルネームが晒されている。
『DQNネーム読めねー』
『すどうすてら』
『名前がイタタ』
『親の顔が見たい』
『親の会社これ(http://www.〇〇〇.×××.■□■)』
コメント欄に貼られたURLをクリックすると、確かに父親が勤務する会社のホームページが表示された。
『こいつ彼氏https://www.facenote.co.jp/profile.php?id=×××」
『トシ違いすぎだろwwパパ活じゃね?』
『まとめあるよwww』
『キモっ。キス画像みちゃったwww』
コメント欄には今まで関係を持った男性のFacenoteのURLも貼られている。それどころかデートの様子などの写真が多数集められた「まとめサイト」のURLまで。
「うそ……なんでこんな……」
あまりのことに頭の中が真っ白になった。
彼氏のことは仲の良い友達にしか話していない。グループLIMEにしか投稿したことのない写真の数々に、「友達」の誰かが裏切ったことを悟って絶望する。
「あたしなんにも悪いことしてないのに……誰がこんなこと……」
スマホ画面を見つめながら、ただただ震えるしかなかった。親には間違っても相談できない。
ただでさえSNS利用どころかスマホを持つことにすら猛反対されたのだ。こんなトラブルに巻き込まれたというだけでも、親に知られたら怒られるだけでは済まないだろう。
まして彼氏のことがある。
両親は、まさか娘が年齢の離れた男と付き合っているなんて夢にも思ってもいないはず。ましてキスやそれ以上のことをしている写真など、見られてしまったら烈火のごとく怒るのは目に見えている。
「どうしよう……あたし一人でなんとかしなくっちゃ……」
彼女は怯えながらも、これから自分の取るべき行動について一人で思いをめぐらしていた。
まずエンスタのコメント欄を閉じ、念のため他のSNSを確認してみる。
案の定、そちらも悪意あるコメントで溢れてかえっている。
仕方がないのでよく使うアカウントは非公開にしたうえで全てコメント欄を閉じた。簡単に事情を説明する投稿をして、しばらくは低浮上となるとアカウント名に注釈をつける。
利用頻度の低いSNSは面倒なので退会した。
「……こんなゴミクズどもに負けてたまるか……」
こんな嫌がらせに負ける訳にはいかない。
流出した写真にせよ個人情報にせよ、グループの誰かが裏切ったことは間違いない。犯人を突き止めて、しっかりと落とし前をつけさせなければ。
この自分に逆らったことを後悔させるだけでは気が済まない。徹底的に追い詰めて、一生そのツケを払いながら怯えて暮らすようにさせなければ。
彼女はとことん戦う決意を固めると、翌日の学校での対決に備えて早々にベッドに入ったのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ゲーム世界の向こう側は。
すずなり。
ホラー
ある日、全世界に配信されたゲーム。
無料で遊べるということでたくさんの人がインストールをした。
ゲーム内容は極々単純。『対人物戦』であるサバイバルゲームで敵を倒していくというものだ。
持ってるライフは『1』。
HPはあるものの回復させることはできず、致命傷を受けてライフがゼロになった時点でゲーム本体からそのソフトが抹消されるという仕組みだった。
単純なルールは子供から年配まで理解することができ、インストールする人は増えていった。
だがそれと同時に現実世界で奇妙なことが起こり始めて・・・
※お話は全て想像の世界です、現実世界とは何の関係もございません。
※このお話がホラーで合ってるのか不安です。
※2023年2月28日に思いついたお話になりますので、貯文字がございません。辻褄が合うように書いていくつもりですがズレてしまったら・・・すみません。
※ただただすずなり。の世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー
イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」
時は平安。
養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。
散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。
働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。
人体自然発火焼死事件―
発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに
着衣は全く燃えていないというものだった。
この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。
この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか…
妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。
※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」
(https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141)
の第2弾となります。
※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです
※ノベルアップ+でも掲載しています
※表紙イラスト:雨神あきら様
エリス
伏織綾美
ホラー
9月 新学期。
ふとした噂から、酷いイジメが始まった。
主人公の親友が、万引きの噂が流れているクラスメートに対するイジメを始める。
イジメが続いていく中、ある日教室の真ん中でイジメに加担していた生徒が首吊り死体で発見され、物語は徐々に暗闇へと向かっていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる