完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

文字の大きさ
上 下
128 / 131

127話

しおりを挟む
腰が揺れる。腰が跳ねる。
自分の指が慣れないけれど、気持ちいいと感じる部分を刺激して声を漏らした。
シルフェ様の部屋だから、駄目だと思いながら手は止まらない。
どのくらいそうしていたか、それとも刹那の時間だったかわからないが、俺の身体は跳ねて最後を迎えたが、体内の熱は引く気配は無い。
ヒートだから仕方ない。
頭はわかっていても、身体が追い付かない。
「シルフェ様……シルフェ様……」
俺は無意識にシルフェ様の名前を呼んでいた。
苦しい……
「ルーカス、ヒート……か」
「シルフェ様、薬……を、くださ……」
「ルーカス、薬だが効くまでに時間がかかる……」
飲みなさいと口に入れられた錠剤。それと同時に口内に流し込まれた水。
ごくりと飲み込んだが、直ぐに効く筈もなく。
俺は敷布を握り締めながらその辛さに耐えていたが、途中意識を失った。

☆☆☆

目を覚ました時にはそこは見慣れた寝室だった。
「……此処……は」
シルフェ様の寝室だった。
声を出すと、喉がカラカラで掠れた声しか出ない。
そっと隣を見ると、そこにはシルフェ様がいた。
「ルーカス、目が覚めたか?少し喉を潤そう。冷たい蜂蜜レモン水だ」
そう言ってグラスを差し出してくれたシルフェ様は全裸だった。
グラスを受け取りながら慌てて俺は自分の身体を見ると、俺も全裸。
何があったかわかるようで、あらぬ場所に違和感があるのと、身体中に散った赤い痣。
「シルフェ様……申し訳ありません」
恐らく……いや、絶対シルフェ様は俺のヒートに付き合ってくださったのだ。
「謝る事はない……ルーカスを抱いたのは私の意思だ。無理をさせてしまったから数日間は寝台からは出てはいけないよ、もしかしたら子供ができてしまったかもしれないし。それはまた話し合わなければならないが、まずは飲みなさい」
俺は促されて蜂蜜レモン水を口にした。
さっぱりとした中に甘い風味もあり、グラスに注がれた全部を一気に飲み干してしまった。
「落ち着いた?」
「はい、ありがとうございます」
「もっと飲む?」
「大丈夫です」
ピッチャーを手にしていたシルフェ様は、俺の大丈夫。に、そっとサイドボードにピッチャーを置いた。
「無理をさせてしまったが、ルーカス一つ言っておく。拒否反応のような反応は起こらなかったように見える」
シルフェ様の言葉に俺は驚いた。
番の絆は切れていないと思っていたのだ。
確かにヒートでシルフェ様を呼んだけれど、あの辛さをどうにかしてくれるのはシルフェ様だけで、シルフェ様なら拒否反応が出ても何とかしてくれるだろうと思い込んでいた節もある。
「でも……」
「あの男の事を調べさせているから、報告待ちだ……だが、ルーカス……これで一縷の望みが持てるかもしれないな……」
シルフェ様が言葉を選ぶ。
俺はグラスを置くとシルフェ様に抱きついた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています

倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。 今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。 そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。 ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。 エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

処理中です...