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119話

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どのくらい経っただろうか、シルフェ様が出て行ってから俺は寝台の上で独りごちていた。
誰とも会話をせず静かに時を過ごす。
「……はぁ、シルフェ様……いつお戻りになられるのだろう」
シルフェ様は此処で待つようにと言っていたが、あまり此処に居ても良くないかもしれないと、俺はチリンとベルを鳴らした。
それに、王宮はあまり良い思い出がないため、それならばシルフェ様の屋敷に戻りたいと思ってしまう。
だが、勝手にそれを決めることも出来ないためシルフェ様に判断を仰ごうとした。
やってきた侍従は年配であり、ダーウェルよりも年上に見えた。
「お待たせ致しました、何かございましたでしょうか」
皺ひとつないお仕着せ。
片目にモノクルを掛けた彼は深く腰を追って挨拶をしてくれた。
「すみません、着替えをお手伝いいただけますか?それと騎士団宿舎かシルフェ団長様のお宅に戻りたいと思いますので、シルフェ様にご連絡と出来ましたら馬車をお願いしたく」
「勿論ですとも、何をお召になられますか?各種取り揃えておりますが」
「動きやすいものを」
「かしこまりました、先ずは団長様への連絡と馬車のご用意をしてまいります。その後にお着替えを致しましょう」
そうして一度部屋を出ていった侍従が戻ってきた時に揃えられていたものは、チャイナカットソーに似た襟の詰まった服にキュロットというか、スカンツと言うか、スカートに見えるが足がわかれている不思議な服だった。
王宮でこれはどうなのだろうかと思いながらも出されたものだからとそれを身につける。
倒れる前に着ていた服は綺麗にたたまれて箱に入っていた。
喉にあるチョーカーは外されないままカットソーの襟で上手く隠れる。
「少し、御髪を整えましょう」
そう言われ、椅子に座らされると手早く髪を整えてくれた。
「シルフェ団長様から、もう少しだけお待ち頂きたいとの伝言をいただきましたので、宜しければ気晴らしにお庭の散策などいかがでしょうか?」
「ありがとうございます、でも……」
「大丈夫ですよ、王宮と言っても離れておりますので滅多なことでは王族の方にお会いすることはありませんので」
俺の言い淀んだ部分を的確に判断してくれ笑みを浮かべた侍従にでは少しだけと頷くと、お待ちくださいとまた何処かに向かうと、運んできたのは車椅子に似た物だった。
「倒れたばかりですので、歩くのは良くありませんし、わたくしめが抱き上げて差し上げるのは絶対に駄目だと坊っちゃま……こほん、シルフェ団長様より申しつかっておりますので」
くすりと茶目っ気たっぷりに片眉を上げて見せた侍従に、俺は目を見開いたのだった。
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