118 / 131
117話
しおりを挟む
「おや、あのシルフェ様の前に座っている美人は誰だろうね」
「聞くと、今回の戦の功労者でありシルフェ様の伴侶だと聞くが……?」
「あぁ、アーデルハイド家の二番目のお子だった子かぁ」
「随分と大きくなってなぁ?」
「だけど、あの子は王子様と婚約してたんじゃなかったかい?」
「破談になったんだってよ」
「へぇ、戦の功労者なんだってけど、そんな有能な子を何で王子様は手放したんだろうねぇ」
「王子に好きな人ができたんだってよ」
「おやまぁ、王族も恋愛結婚するのかねぇ?」
「どうだろうな、王様はそれを許すのかね」
「さぁなぁ、そう言えば今回の戦で王子様は何したんだかね」
「話は聞かないな」
「もしかして、その新しい恋人とイチャイチャして寝台から出て来れなかったんじゃねぇか?」
「はは、そりゃおもしれぇや」
ざわざわした喧騒の中、その言葉を耳が拾う。
「ルーカス、前を向いて顎を引きなさい、そして手を振ってやるといい」
シルフェ様の低音が耳を擽る。
「は、はい」
右手を上げると、軽く振ってみると若い青年たちからは声が漏れた。
「シルフェ様、シルフェ様は本当に皆様から人気がありますね……あちらこちらから、シルフェ様のお名前が聞こえます」
シルフェ様を見上げると、シルフェ様はそっと俺に頬を寄せながら囁く。
「皆がルーカスを見ています」
柔らかく甘い声に、背中がぞくぞくとする。
「そんな事はありませんから、だからシルフェ様騎士団長を辞めるなどとは言わないでください……俺はどんなシルフェ様でも好きですが、騎士団長のシルフェ様が一番好きなんです」
俺は、シルフェ様にお願いをする。
「……その件は後でお話しましょう、よそ見は危ないですよ」
そう言われ、俺は姿勢を正して周りを見た瞬間、身体が強ばった。
違うと思いたい……けれど。
似ている。
あの時の男に。
「ルーカス、どうしました!」
シルフェ様の声に返せるのは身体の痙攣。
シルフェ様が右手を上げると周囲の騎士達の動きが止まり、俺達を囲むように騎士たちが動く。
そして、無言でシルフェ様が右手を上げると騎士達が一斉に馬上から降りると抜剣した。
それに、観客達からは悲鳴が漏れる。
次の瞬間、一人の男が片手を後ろ手に群衆から押し出された。
間違いない、あの男だ。
「ルーカス大丈夫ですよ、少し待っていてください。陛下に残党は好きにしていいと聞きました」
シルフェ様の手が俺の髪を撫でる。
それにしてもどうしてわかったのだろうか。
「聞くと、今回の戦の功労者でありシルフェ様の伴侶だと聞くが……?」
「あぁ、アーデルハイド家の二番目のお子だった子かぁ」
「随分と大きくなってなぁ?」
「だけど、あの子は王子様と婚約してたんじゃなかったかい?」
「破談になったんだってよ」
「へぇ、戦の功労者なんだってけど、そんな有能な子を何で王子様は手放したんだろうねぇ」
「王子に好きな人ができたんだってよ」
「おやまぁ、王族も恋愛結婚するのかねぇ?」
「どうだろうな、王様はそれを許すのかね」
「さぁなぁ、そう言えば今回の戦で王子様は何したんだかね」
「話は聞かないな」
「もしかして、その新しい恋人とイチャイチャして寝台から出て来れなかったんじゃねぇか?」
「はは、そりゃおもしれぇや」
ざわざわした喧騒の中、その言葉を耳が拾う。
「ルーカス、前を向いて顎を引きなさい、そして手を振ってやるといい」
シルフェ様の低音が耳を擽る。
「は、はい」
右手を上げると、軽く振ってみると若い青年たちからは声が漏れた。
「シルフェ様、シルフェ様は本当に皆様から人気がありますね……あちらこちらから、シルフェ様のお名前が聞こえます」
シルフェ様を見上げると、シルフェ様はそっと俺に頬を寄せながら囁く。
「皆がルーカスを見ています」
柔らかく甘い声に、背中がぞくぞくとする。
「そんな事はありませんから、だからシルフェ様騎士団長を辞めるなどとは言わないでください……俺はどんなシルフェ様でも好きですが、騎士団長のシルフェ様が一番好きなんです」
俺は、シルフェ様にお願いをする。
「……その件は後でお話しましょう、よそ見は危ないですよ」
そう言われ、俺は姿勢を正して周りを見た瞬間、身体が強ばった。
違うと思いたい……けれど。
似ている。
あの時の男に。
「ルーカス、どうしました!」
シルフェ様の声に返せるのは身体の痙攣。
シルフェ様が右手を上げると周囲の騎士達の動きが止まり、俺達を囲むように騎士たちが動く。
そして、無言でシルフェ様が右手を上げると騎士達が一斉に馬上から降りると抜剣した。
それに、観客達からは悲鳴が漏れる。
次の瞬間、一人の男が片手を後ろ手に群衆から押し出された。
間違いない、あの男だ。
「ルーカス大丈夫ですよ、少し待っていてください。陛下に残党は好きにしていいと聞きました」
シルフェ様の手が俺の髪を撫でる。
それにしてもどうしてわかったのだろうか。
190
お気に入りに追加
909
あなたにおすすめの小説
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています
倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。
今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。
そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。
ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。
エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
まさか「好き」とは思うまい
和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。
ヒロインの兄は悪役令嬢推し
西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる