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109話
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「ルーカス様、どうかお座りになってください」
シルフェ様を出迎えるのに、俺はそっとホールの隅に立っていた。
フェイが用意してくれた椅子の背もたれを掴みながら。
座ってしまったら立ち上がれない気がしたから。
「大丈夫だよ、もうすぐシルフェ様が戻っていらっしゃるから、ちゃんとお出迎えしたいから」
俺は大丈夫だとフェイに笑みを向ける。
綺麗に結い上げて貰った髪。
レースのチョーカーはしっかりと痕を隠してくれている。
普段の俺とは余り変わらない筈だから大丈夫。
「無理をなさらないで下さい、座っていてもシルフェ様はそれを咎める方ではありません」
そう言いながらフェイは俺に椅子をすすめていたが、馬の嘶きが聞こえ俺はゆっくり玄関へと向かった。
大丈夫歩ける。
「お帰りなさいませ、シルフェ様」
俺は服の箸をちょこんと掴み頭を下げた次の瞬間身体が浮遊する。
「ルーカス、戻りました……ゆっくり座って待っていていただいて良かったのに。ダーウェル、ルーカスにソファとお茶を、いやこのまま連れて行く。すみません、戦場からそのまま帰って来たので身汚いため軽くシャワーを浴びさせていただいても?」
「は、はい……」
あぁ、懐かしいシルフェ様の姿だと思うと、感情が込み上げてきて泣きそうになる。
「フェイ、寒くないように肩掛けや膝掛けを!」
「ご用意してございます」
「ルーカス、何処の部屋に行こうか……私の部屋にするか?」
「あ、何処でも構いませんが、後ほど父が参ります」
俺はそうだとシルフェ様に伝える。
「ならば応接か……」
「シルフェ様、ご用意してありますのでどうぞ。ルーカス様が食べられるように軽い食事もご用意してありますので」
ダーウェルが頭を下げると、シルフェ様は俺を抱き上げたまま大股で応接室へと向かう。
応接室の入口を廊下側に開けて待つ侍従。
飛び込むようにして中に入ったシルフェ様と俺。
柔らかく大きなソファーに下ろされて俺はシルフェ様を見上げた。
「シルフェ様、シャワーの後にお話がありますので、此処でお待ちしております」
そう伝えると、シルフェ様はこくりと頷いてからダーウェルを連れて部屋を出ていった。
残ったのは俺とフェイ。
「フェイ、お父様がいらっしゃったら此方に」
そう言いながらも、シルフェ様からのただいまのキスが無かったなと気付いてしまった。
キス一つが無いのが寂しくて悲しくて俺はそっと服の裾を握りしめるのだった。
シルフェ様を出迎えるのに、俺はそっとホールの隅に立っていた。
フェイが用意してくれた椅子の背もたれを掴みながら。
座ってしまったら立ち上がれない気がしたから。
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俺は大丈夫だとフェイに笑みを向ける。
綺麗に結い上げて貰った髪。
レースのチョーカーはしっかりと痕を隠してくれている。
普段の俺とは余り変わらない筈だから大丈夫。
「無理をなさらないで下さい、座っていてもシルフェ様はそれを咎める方ではありません」
そう言いながらフェイは俺に椅子をすすめていたが、馬の嘶きが聞こえ俺はゆっくり玄関へと向かった。
大丈夫歩ける。
「お帰りなさいませ、シルフェ様」
俺は服の箸をちょこんと掴み頭を下げた次の瞬間身体が浮遊する。
「ルーカス、戻りました……ゆっくり座って待っていていただいて良かったのに。ダーウェル、ルーカスにソファとお茶を、いやこのまま連れて行く。すみません、戦場からそのまま帰って来たので身汚いため軽くシャワーを浴びさせていただいても?」
「は、はい……」
あぁ、懐かしいシルフェ様の姿だと思うと、感情が込み上げてきて泣きそうになる。
「フェイ、寒くないように肩掛けや膝掛けを!」
「ご用意してございます」
「ルーカス、何処の部屋に行こうか……私の部屋にするか?」
「あ、何処でも構いませんが、後ほど父が参ります」
俺はそうだとシルフェ様に伝える。
「ならば応接か……」
「シルフェ様、ご用意してありますのでどうぞ。ルーカス様が食べられるように軽い食事もご用意してありますので」
ダーウェルが頭を下げると、シルフェ様は俺を抱き上げたまま大股で応接室へと向かう。
応接室の入口を廊下側に開けて待つ侍従。
飛び込むようにして中に入ったシルフェ様と俺。
柔らかく大きなソファーに下ろされて俺はシルフェ様を見上げた。
「シルフェ様、シャワーの後にお話がありますので、此処でお待ちしております」
そう伝えると、シルフェ様はこくりと頷いてからダーウェルを連れて部屋を出ていった。
残ったのは俺とフェイ。
「フェイ、お父様がいらっしゃったら此方に」
そう言いながらも、シルフェ様からのただいまのキスが無かったなと気付いてしまった。
キス一つが無いのが寂しくて悲しくて俺はそっと服の裾を握りしめるのだった。
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