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「では、行って参ります」
フェイが、姉様の誰かから借りたのだろう、白いシャツに黒のズボンという華やかさも何も無い出で立ちに、少し色のあるチーフを添えてからいつもとは違う柔らかに見える髪型をしてから部屋を出ていった。
「大丈夫かな、宴の席にβが居るなんて……」
ポツリと呟いた俺にユーリ、赤髪の子が言う。
「大丈夫ですよ、私も行って参りますね?」
こちらはふわりと広がるスカートだ、履きなれているのだろうか、ぺこりと頭をさげるその耳の上には白い花の髪飾り。
「ごめんね……何かあったら俺も出るから……」
「そんなことは絶対にいけません。ルーカス様、チェリと一緒に終わるまでこの部屋でお待ちください、食事などチェリが運びますから」
「うん……」
「では、チェリ、ルーカス様を頼みましたよ」
「はい!」
チェリはにっこりと笑うと、頑張りますと握り拳を作って見せた。
「では、ルーカス様どうしましょうか、二人はきっと夜半までは戻らないとは思いますし……読み物でも借りて参りましょうか」
「いや、それは……いいよ」
読み物と言われても、チェリは知らないだろうが楼閣の読み物はほぼ春画なのだ。
部屋に数冊置いてあったが、流石に読むに耐えない淫らなものだ。
それをわかっているのだろうか……俺は頭を振ってから、刺繍でもしようかと顔を上げた。
大きなものを作ることはできないが、チーフくらいなら何枚かはできるだろう。
「チェリは刺繍はできる?裁縫道具と何枚かチーフがあれぱ貰ってきて欲しいな」
「畏まりました、お傍を離れますね?離れたら必ず鍵を掛けてください」
チェリは立ち上がると行ってきますと部屋を出た。
俺は言われるがまま扉に鍵を掛けてチェリの戻りを待つが暫くしてもチェリは戻ってこなかった。
不安になりながら待っていると、漸く扉にノックがあり俺は疑いもせず開けた扉の前に居たのはチェリではなかった。
厳密に言えば、チェリを後ろ手に拘束しで一緒に立つ男ともう一人少し前に俺とぶつかった男。
全部で三人が立っていた。
「なっ!チェリ」
「悪い子だなぁ、宴には出ろと言ってあっただろうが……」
拘束されたチェリが顔を上げるとその顔は左頬が腫れ上がっている。
殴られた?
俺はチェリに駆け寄ろうとして男に腕を掴まれたのだった。
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