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99話
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「え、あの……」
振り向いた先に居たのは、見知らぬ人。
髪は綺麗に撫で付けてあったが、目付きは鋭く表現は悪いかもしれないが、下卑た笑いを浮かべていた。
「お前は見た事ねぇなぁ……随分と別嬪じゃねぇか、あの楼主出し惜しみをしやがって……よし、今夜のドラマ相手はお前にしよう」
かの男は何を言っているんだと、俺は相手を見る。
「あの、俺……違います」
「この店にいるなら買えるんだろう?」
「いえ、俺は売り物じゃなくて……っ」
掴まれた手は離されない、そのまま凄い力で引き摺られそうになる。
「ったく、じゃあ必ず今宵の宴は出ろよ俺の愛妾にしてやるからな。まぁ、全員が出るはめになるんだろうがな。戦が一段落ついたからあの方が来ると言っているしな……まぁ、金はいくらでもあるからな逃げようと思うなよ?」
豪快に笑いながらのしのしと去っていく男の後ろ姿に何だったのだろうかと見送ってしまったが、男の言葉に引っ掛かりを覚える。
あの方が来る……とは。
誰を指しているのだろうか。
羽振りがよさ気である男が接待をしようとしているのか?
「……楼主様に伝えないと……」
廊下を楼主の部屋へと足を向ける。
廊下の突き当たり、扉へとノックをする。
入れと返事があって俺は扉を開いたのだった。
「楼主……様」
「ルーカス、部屋を出るなと……何があった?」
お小言を言おうとしたのだろう楼主様は、俺の尋常ではない姿を見て、座っていた椅子から立ち上がり俺の元へと来てくれた。
「とりあえず入れ、お茶くらいは飲めるか?」
「あり、がとうございま……す」
知らず知らずのうちに喉がカラカラになっていたらしく、俺はこくりと唾液を飲み込んだ。
「ほら、ぬるいだろうが飲め。飲んだらゆっくりと話してくれ」
俺を椅子に座らせると、新しいカップにポットからお茶をいれてくれた。
「飲んで喉を潤してから喋れ。飲んでいるうちに落ち着くだろう」
そう言いながら楼主様はにこりと優しい笑顔を浮かべた。
「楼主様……」
俺は、廊下であったことを話す、できるだけ簡単に主観を挟まず淡々と。
それを話終えると楼主は目を伏せて天井を見上げた。
「今の話を総合すると、名のある武将か、貴族が来るんだろうよ。話はまだ来てないが直ぐに来るだろうよ……さて、ルーカスおまえはどうしたい?」
そう問われて俺は楼主様を見た。
どうしたいと言うのはどういう事か。俺は息を吸うとこれから起こるであろうことを楼主様にごまかしながら伝えようとした。
振り向いた先に居たのは、見知らぬ人。
髪は綺麗に撫で付けてあったが、目付きは鋭く表現は悪いかもしれないが、下卑た笑いを浮かべていた。
「お前は見た事ねぇなぁ……随分と別嬪じゃねぇか、あの楼主出し惜しみをしやがって……よし、今夜のドラマ相手はお前にしよう」
かの男は何を言っているんだと、俺は相手を見る。
「あの、俺……違います」
「この店にいるなら買えるんだろう?」
「いえ、俺は売り物じゃなくて……っ」
掴まれた手は離されない、そのまま凄い力で引き摺られそうになる。
「ったく、じゃあ必ず今宵の宴は出ろよ俺の愛妾にしてやるからな。まぁ、全員が出るはめになるんだろうがな。戦が一段落ついたからあの方が来ると言っているしな……まぁ、金はいくらでもあるからな逃げようと思うなよ?」
豪快に笑いながらのしのしと去っていく男の後ろ姿に何だったのだろうかと見送ってしまったが、男の言葉に引っ掛かりを覚える。
あの方が来る……とは。
誰を指しているのだろうか。
羽振りがよさ気である男が接待をしようとしているのか?
「……楼主様に伝えないと……」
廊下を楼主の部屋へと足を向ける。
廊下の突き当たり、扉へとノックをする。
入れと返事があって俺は扉を開いたのだった。
「楼主……様」
「ルーカス、部屋を出るなと……何があった?」
お小言を言おうとしたのだろう楼主様は、俺の尋常ではない姿を見て、座っていた椅子から立ち上がり俺の元へと来てくれた。
「とりあえず入れ、お茶くらいは飲めるか?」
「あり、がとうございま……す」
知らず知らずのうちに喉がカラカラになっていたらしく、俺はこくりと唾液を飲み込んだ。
「ほら、ぬるいだろうが飲め。飲んだらゆっくりと話してくれ」
俺を椅子に座らせると、新しいカップにポットからお茶をいれてくれた。
「飲んで喉を潤してから喋れ。飲んでいるうちに落ち着くだろう」
そう言いながら楼主様はにこりと優しい笑顔を浮かべた。
「楼主様……」
俺は、廊下であったことを話す、できるだけ簡単に主観を挟まず淡々と。
それを話終えると楼主は目を伏せて天井を見上げた。
「今の話を総合すると、名のある武将か、貴族が来るんだろうよ。話はまだ来てないが直ぐに来るだろうよ……さて、ルーカスおまえはどうしたい?」
そう問われて俺は楼主様を見た。
どうしたいと言うのはどういう事か。俺は息を吸うとこれから起こるであろうことを楼主様にごまかしながら伝えようとした。
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