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98話

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「ルーカス様、状況はおわかりになりましたね?であればもうよろしいでしょう」
フェイが困ったように呟いた。
「とりあえず座ればいいのに……三人とも」
それ程広くない部屋に置かれたソファーに座っているのは俺だけで、三人は部屋の壁際に並んで立っている。
「フェイが座らなきゃ他の二人だって座れないだろ?楼主様にお茶のセットも借りたし」
俺が四人分のお茶をいれようとしたら、とんでもないと怒られてしまった。
「お茶、冷めちゃうし此処の焼き菓子美味しいんだよ?それに、食事もしないつもり?」
俺は盛大に溜息を吐いて見せた。
「ほら、誰も怒らないし……それとも俺に命令させる?」
主の命令は絶対であるから、フェイ達は従わなくてはならないしその命令を拒否する事は職務を放棄すること。
だから、お願いであるうちに座って欲しいと俺は思うし、出来れば命令なんてしたくない。
「仕方ありません、主を悲しませるのは本意ではありませんから」
フェイが座りましょうと二人を促すと、二人は顔を見合わせてからそれぞれソファーに座ってくれた。
「ごめんね、我儘を聞いてくれてありがとう」
「とんでもない!」
わたわたと顔の前で手を振ったのは俺と一緒に売られてくる役を担った淡い赤毛の青年。
「でも、此処に来ることも俺の我儘だったからさ……フェイがどうしてもダメだと言うから巻き込んじゃったけど」
「いえ私共が手を挙げさせて頂きましたので、ルーカス様が気にかけていただくようなことはございません」
そう言ったのはもう一人、こちらは菫色の髪だ。
「でも、こうして来て貰ったんだから、フェイもだけど何かの時に動けないと困るから休める時には休んで」
「かしこまりました」
「じゃあ、ちょっと俺、姉様方にご挨拶してくるから……見つからないように行ってくるよ」
俺は手前にあった紅茶を一気に煽ってから立ち上がる。
「ルーカス様!」
「大丈夫大丈夫。フェイ後はよろしくね?」
俺は無意識に喉のリボンに触れる。
何だかんだでシルフェ様に噛んで貰えていないのだ。
次にこれを外すのは、シルフェ様が戦場から戻ってからになるのだろうなと思いながら俺は見慣れた廊下を静かに進む。
時折聞こえる艶めかしい声に目を伏せて足速に通り過ぎたその先で俺の腕は掴まれた。
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