完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

文字の大きさ
上 下
96 / 131

95話

しおりを挟む
それから直ぐに開戦の報が流れた。
シルフェ様は戻ってくる事は無い。
ただ一言、手紙は読んだ。と、綺麗な文字のメモが届けられた。
開戦は、国境を挟んだ草原から山間部にかけて。
俺が知っているゲームと同じ布陣だ。
だから、何処に敵兵が現れ防戦すれば被害が少ないか、わかっているのだが……半年が経っても攻防は決しない。
どうして?
シルフェ様が戦っているのに……。
ダーウェルに地図を用意してもらい、現在の状況を書き込んでもらい理由がわかった。
……あの馬鹿王子が前線に出ていないのだ。
「……信じられない!」
攻略対象が危険に晒されなければ、イベントもおこらないのだ。
しかも、その戦場の近くにはあの花街もある。
「姉様方は逃げられたのかな……」
俺の呟きにダーウェルは首を振った。
楼主様も攻略対象であり、この戦には絶対に巻き込まれる。
シルフェ様の大切な幼馴染である楼主様。俺は少しでもその情報が入ってこないかと街の中の噂話を集めてもらっていたある日、花街にならず者たちが集まり占拠を始めたという情報を入手した。
食料はどうしているのだろうか。
「フェイ、シルフェ様達への物資は充分?余裕があれば少しでいいから姉様達へ送れないかな……ならず者に占拠されているなら、食材とかも少ないかも……でも、シルフェ様に迷惑をかけるわけにはいかないんだけれど」
「なら、手配をいたしましょう。行商人に扮して行くのであれば。私が行きます」
「俺も行くよ」
「いけません!」
「だって、花街で顔がわかるのは俺だけだろ?大丈夫、バレないように行くからさ?ついでにならず者達がいればその情報とかも知りたいし」
ゲームでも、楼主ルートに入れば楼閣を使って敵国の兵を攻撃するシーンがあった。
それは、ヒロインが敵国の兵達に酒を振舞い酔わせてから楼主と協力をして縛り上げるというスチルがあった。
王子とヒロインが前線に出ていない今、少しでもシルフェ様を助けられるならやるべきなのだと俺は思う。
「フェイ、見た目が優しくΩっぽく見える侍従を何人かいたら連れて行きたい。花街で働く為に来たと見せ掛けたい」
「ルーカス様が言い出したら聞かないのは……仕方ありません」
フェイは盛大な溜息を吐いてから俺にお茶でも飲んでいてくださいと言い置いて部屋を出て行った。
ヒロインがやらないなら、内容を知る俺がやるしかない。
拳を握り締めて俺は目を伏せた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています

倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。 今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。 そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。 ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。 エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

処理中です...