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95話
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それから直ぐに開戦の報が流れた。
シルフェ様は戻ってくる事は無い。
ただ一言、手紙は読んだ。と、綺麗な文字のメモが届けられた。
開戦は、国境を挟んだ草原から山間部にかけて。
俺が知っているゲームと同じ布陣だ。
だから、何処に敵兵が現れ防戦すれば被害が少ないか、わかっているのだが……半年が経っても攻防は決しない。
どうして?
シルフェ様が戦っているのに……。
ダーウェルに地図を用意してもらい、現在の状況を書き込んでもらい理由がわかった。
……あの馬鹿王子が前線に出ていないのだ。
「……信じられない!」
攻略対象が危険に晒されなければ、イベントもおこらないのだ。
しかも、その戦場の近くにはあの花街もある。
「姉様方は逃げられたのかな……」
俺の呟きにダーウェルは首を振った。
楼主様も攻略対象であり、この戦には絶対に巻き込まれる。
シルフェ様の大切な幼馴染である楼主様。俺は少しでもその情報が入ってこないかと街の中の噂話を集めてもらっていたある日、花街にならず者たちが集まり占拠を始めたという情報を入手した。
食料はどうしているのだろうか。
「フェイ、シルフェ様達への物資は充分?余裕があれば少しでいいから姉様達へ送れないかな……ならず者に占拠されているなら、食材とかも少ないかも……でも、シルフェ様に迷惑をかけるわけにはいかないんだけれど」
「なら、手配をいたしましょう。行商人に扮して行くのであれば。私が行きます」
「俺も行くよ」
「いけません!」
「だって、花街で顔がわかるのは俺だけだろ?大丈夫、バレないように行くからさ?ついでにならず者達がいればその情報とかも知りたいし」
ゲームでも、楼主ルートに入れば楼閣を使って敵国の兵を攻撃するシーンがあった。
それは、ヒロインが敵国の兵達に酒を振舞い酔わせてから楼主と協力をして縛り上げるというスチルがあった。
王子とヒロインが前線に出ていない今、少しでもシルフェ様を助けられるならやるべきなのだと俺は思う。
「フェイ、見た目が優しくΩっぽく見える侍従を何人かいたら連れて行きたい。花街で働く為に来たと見せ掛けたい」
「ルーカス様が言い出したら聞かないのは……仕方ありません」
フェイは盛大な溜息を吐いてから俺にお茶でも飲んでいてくださいと言い置いて部屋を出て行った。
ヒロインがやらないなら、内容を知る俺がやるしかない。
拳を握り締めて俺は目を伏せた。
シルフェ様は戻ってくる事は無い。
ただ一言、手紙は読んだ。と、綺麗な文字のメモが届けられた。
開戦は、国境を挟んだ草原から山間部にかけて。
俺が知っているゲームと同じ布陣だ。
だから、何処に敵兵が現れ防戦すれば被害が少ないか、わかっているのだが……半年が経っても攻防は決しない。
どうして?
シルフェ様が戦っているのに……。
ダーウェルに地図を用意してもらい、現在の状況を書き込んでもらい理由がわかった。
……あの馬鹿王子が前線に出ていないのだ。
「……信じられない!」
攻略対象が危険に晒されなければ、イベントもおこらないのだ。
しかも、その戦場の近くにはあの花街もある。
「姉様方は逃げられたのかな……」
俺の呟きにダーウェルは首を振った。
楼主様も攻略対象であり、この戦には絶対に巻き込まれる。
シルフェ様の大切な幼馴染である楼主様。俺は少しでもその情報が入ってこないかと街の中の噂話を集めてもらっていたある日、花街にならず者たちが集まり占拠を始めたという情報を入手した。
食料はどうしているのだろうか。
「フェイ、シルフェ様達への物資は充分?余裕があれば少しでいいから姉様達へ送れないかな……ならず者に占拠されているなら、食材とかも少ないかも……でも、シルフェ様に迷惑をかけるわけにはいかないんだけれど」
「なら、手配をいたしましょう。行商人に扮して行くのであれば。私が行きます」
「俺も行くよ」
「いけません!」
「だって、花街で顔がわかるのは俺だけだろ?大丈夫、バレないように行くからさ?ついでにならず者達がいればその情報とかも知りたいし」
ゲームでも、楼主ルートに入れば楼閣を使って敵国の兵を攻撃するシーンがあった。
それは、ヒロインが敵国の兵達に酒を振舞い酔わせてから楼主と協力をして縛り上げるというスチルがあった。
王子とヒロインが前線に出ていない今、少しでもシルフェ様を助けられるならやるべきなのだと俺は思う。
「フェイ、見た目が優しくΩっぽく見える侍従を何人かいたら連れて行きたい。花街で働く為に来たと見せ掛けたい」
「ルーカス様が言い出したら聞かないのは……仕方ありません」
フェイは盛大な溜息を吐いてから俺にお茶でも飲んでいてくださいと言い置いて部屋を出て行った。
ヒロインがやらないなら、内容を知る俺がやるしかない。
拳を握り締めて俺は目を伏せた。
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