完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

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87話

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「あぁ、必ずデートをしよう。先の話になってしまうかもしれないが」
「ありがとうございます。一度くらいはデートと言うものを経験してみたくて」
ポロりと本音が零れてしまう。
「したことが無い?」
「はい」
「そうですか。なら、ルーカスが行ってみたい場所があれば教えてくださいね。私も考えますが……行ったことが無い場所や店が多いので。私もルーカスと同じくデートなどした事がなく時間があれば部下の行ったことがあるような場所を聞いてみようかと」
「とても楽しみです……シルフェ様、そろそろシルフェ様も公務の時間になりますよね?そろそろお暇させていただきます。その前に……あの、少しだけギュッと抱き締めていただけませんか?」
無理ならいいのですがと、言い訳をしながら俺はそう告げてみた。
「少しだけ?」
「はい。あまりいっぱいだと……辛くなってしまうので」
そうお願いをすると、シルフェ様はそっと真綿に触れるような優しさで抱き締めてくれた。
「ありがとうございます、シルフェ様に抱きしめて貰えるのが凄く嬉しいです……」
無意識のうちにシルフェ様の胸に頬を寄せてしまう。
布越しに伝わる体温や鼓動。
「ルーカス、こちらを向いてくれるか?」
目を閉じてシルフェ様の鼓動を聞いていると、そう声がかかり俺はシルフェ様を見上げると、唇に優しいキスをされた。
触れるか触れないかの掠めるほどのキス。
「シルフェ、様」
「本当はもっとしたいが、これ以上はルーカスを離せなくなってしまうからな、すまない」
髪を撫でられ、もっと触れて欲しい要求が湧き上がるが俺は目を伏せる。
「シルフェ様、お着替えをいただいても?持ち、帰りますので。また新しい物をお持ちしますね?」
そつと、シルフェ様から離れて立ち上がるとご馳走様でしたと頭を下げた。
「待っていてくれ、纏めてはあるが寝室なんだ」
「え、見てみたいです……シルフェ様の寝室ですか?」
「あぁ、簡易宿泊ができるように小さな寝室とシャワールームが付いている。あまり綺麗にしていないから恥ずかしいが、隠すものでもないか。こっちだ」
立ち上がったシルフェ様がおいでと手を差し出し、その手を繋ぐと執務室の奥、入口からは隠れた場所に扉があり、それを開くと小部屋があった。
小部屋と言っても、寝台やサイドボードなど様々なものが置いてはあるが、本当に眠るだけの部屋だった。
「ふふ、シルフェ様にはちょっとベッドが小さくはありませんか?」
シルフェ様の屋敷のベッドの半分ほどだろうか。
昔の俺が6畳一間のアパートで使っていたようなシングルサイズのベッドだった。
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