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82話
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それから六日過ぎ、アルフレッドが香水瓶を持ってきた。
二本の対になる色違いの瓶に入った香水。
ひとつは綺麗に包装をしてくれていた。
「ありがとう楽しみだったから早く手に出来て嬉しいです」
ふたつを受け取って、打診されていた金額を支払うとそれ以外の注文した物もダーウェルに渡していたらしい。
「ではまたご贔屓に」
そう言って頭を下げたアルフレッドに、ふと過去のゲームを思い出して声を掛けた。
「何か、ペンダントのような物の中に香水を染み込ませた布を入れて持ち歩くようなものがある?そんな物が有れば香水瓶を持ち歩かなくても良くなるかも……」
思いつきと言うより、確かゲームの仲にそんなアイテムがあったような気がしたのだ。
「え、そのような物はありませんが、面白そうですね知り合いの錬金術師に頼んでみても?」
「ええ、ドーム型の中に布で作った花を入れて見せるのも可愛いかと。その花に香りを纏わせておけばふわりと香るなんてお洒落じゃないかな?」
パチパチとアルフレッドは瞬きをしてから慌てて小さなスケッチブックを取り出すと、さらさらと何やら書き付けている。
「このようなイメージでしょうか?」
そうして差し出されたものを見て俺は首を傾げる。
「ええ、これでもいいけどイメージ的には懐中時計みたいな物でもいいかなと。でも、色々なデザインがあって良いので、作りやすい方がいいかな……裏側には家紋を彫っても名前を彫っても言葉を彫っても素敵ですよね?中に入れる花は花言葉や数を工夫できるかな……金属はゴールド、シルバー、プラチナもいいしピンクゴールドとかなら可愛らしくできるだろうし、色々と考えられますよね?」
「はい!もし作成出来たら一番にお持ちいたします」
少し興奮したようにアルフレッドが立ち上がると、手を差し出してくる。
それに握手をすると、アルフレッドは帰りますとそそくさと屋敷を出て行った。
「楽しみだな」
どんなものができてくるだろうかと思いながら、俺はシルフェ様にこの香水を渡したいと思い、ダーウェルに手紙を書く旨を伝えた。
シルフェ様に逢いたい。
毎日のように手紙は来るけれど、それだけでは物足りない。
俺は部屋に戻るとペンを手に取った。
明日、お時間があれば少しお会いしたいです。少しばかりですがお茶請けにクッキーをお持ちします。
そう書いてからダーウェルに託した。
何度もダーウェルからは封をしていただいて構いませんのにと言われてしまうが、俺はいつも中を見られても良いようにしてある。
「クッキーを焼きにオーブンを貸してもらわなきゃ」
料理長にも伝言を頼むと、いつでも大丈夫なようになっておりますとダーウェルに言われた。
最初に作ったパウンドケーキがとても料理長に気に入られたらしく、何度か時間ができると作らせて貰った。
今日はクッキーを作ろうと思って髪を縛り着替えて厨房に向かうと、既に材料は用意されていた。
二本の対になる色違いの瓶に入った香水。
ひとつは綺麗に包装をしてくれていた。
「ありがとう楽しみだったから早く手に出来て嬉しいです」
ふたつを受け取って、打診されていた金額を支払うとそれ以外の注文した物もダーウェルに渡していたらしい。
「ではまたご贔屓に」
そう言って頭を下げたアルフレッドに、ふと過去のゲームを思い出して声を掛けた。
「何か、ペンダントのような物の中に香水を染み込ませた布を入れて持ち歩くようなものがある?そんな物が有れば香水瓶を持ち歩かなくても良くなるかも……」
思いつきと言うより、確かゲームの仲にそんなアイテムがあったような気がしたのだ。
「え、そのような物はありませんが、面白そうですね知り合いの錬金術師に頼んでみても?」
「ええ、ドーム型の中に布で作った花を入れて見せるのも可愛いかと。その花に香りを纏わせておけばふわりと香るなんてお洒落じゃないかな?」
パチパチとアルフレッドは瞬きをしてから慌てて小さなスケッチブックを取り出すと、さらさらと何やら書き付けている。
「このようなイメージでしょうか?」
そうして差し出されたものを見て俺は首を傾げる。
「ええ、これでもいいけどイメージ的には懐中時計みたいな物でもいいかなと。でも、色々なデザインがあって良いので、作りやすい方がいいかな……裏側には家紋を彫っても名前を彫っても言葉を彫っても素敵ですよね?中に入れる花は花言葉や数を工夫できるかな……金属はゴールド、シルバー、プラチナもいいしピンクゴールドとかなら可愛らしくできるだろうし、色々と考えられますよね?」
「はい!もし作成出来たら一番にお持ちいたします」
少し興奮したようにアルフレッドが立ち上がると、手を差し出してくる。
それに握手をすると、アルフレッドは帰りますとそそくさと屋敷を出て行った。
「楽しみだな」
どんなものができてくるだろうかと思いながら、俺はシルフェ様にこの香水を渡したいと思い、ダーウェルに手紙を書く旨を伝えた。
シルフェ様に逢いたい。
毎日のように手紙は来るけれど、それだけでは物足りない。
俺は部屋に戻るとペンを手に取った。
明日、お時間があれば少しお会いしたいです。少しばかりですがお茶請けにクッキーをお持ちします。
そう書いてからダーウェルに託した。
何度もダーウェルからは封をしていただいて構いませんのにと言われてしまうが、俺はいつも中を見られても良いようにしてある。
「クッキーを焼きにオーブンを貸してもらわなきゃ」
料理長にも伝言を頼むと、いつでも大丈夫なようになっておりますとダーウェルに言われた。
最初に作ったパウンドケーキがとても料理長に気に入られたらしく、何度か時間ができると作らせて貰った。
今日はクッキーを作ろうと思って髪を縛り着替えて厨房に向かうと、既に材料は用意されていた。
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