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71話
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「さて、兄さん買いたいものがあるんだ」
俺はフェイを見上げながら言う。
長い髪を帽子に詰めて、どう見ても俺はちょっといい所の商家のお坊ちゃまくらいに見えるはず。
兄さんと呼ぶのは、隣を歩くフェイの事だ。
時折今までもこうして姿を変えて市街で買い物を楽しむ事があり、それにフェイは着いてくる。
侍従の役柄だと素になりすぎるからと買い物の時だけはフェイに兄役をお願いした。
俺の兄はカミル兄様だけだけれど、カミル兄様はどう見てもαの見た目でΩの俺と並ぶと綺麗すぎるのだ。
フェイも美形ではあるけれども、クールなタイプのフェイだから兄弟と言ってもそこまで可笑しくはないと思う。
「何を見たいんだ?」
「文房具と、少し贈り物を……シルフェ様が喜んでくれそうなものがいいと思うんだけど」
「文房具か……持ち運べる筆記具とかか?」
「そう、実用的なのがいいかなって」
俺は目星を付けていた文房具屋を指差してフェイを見上げた。
フェイはこくりと頷くと扉を開く。
「こんにちは、ペンを見せていただきたくて」
俺は扉から中に入るとそう声を掛けた。
「おや、いらっしゃい初めてのお客さんだね」
ひょこりと顔を出したのは丸眼鏡を掛けたキツネ顔の老人だった。
「はい。友達にプレゼントをしたくて。ところで雨が降りそうですね、今夜は月がでますかね」
俺は窓から空を見上げると、青空は見えずどんよりとした雲行きになってきているが、雨雲では無さそうだ。
「どうかなぁ、山の端に掛かるかもしれんが見えるだろうよ」
「なら、夜まで待てばいいですかね」
「まぁ……雨は夜半には上がるじゃろ」
ほっぽっと笑いながら老人はいくつかの箱入りのペンを出してくる。
「どんなのをお探しかね、これは珍しくインクが中に入っていてインク壺を持ち歩かなくても書けるという最新式のペンじゃな」
「面白いね。高い?でもプレゼントにならいいかなぁ」
「一本で7シルバーだが、二本買ってくれれば1ゴールドでいいぞ?」
そう言われて俺は迷いなく二本を購入した。
それぞれを箱に入れてペンの色に合わせたリボンを掛けてもらうと、支払いを済ませる。
「ありがとうございました、大切に使いますね?」
紙袋に入れてもらうとそれを手に店を出た。
「……ルーカス様」
「うん、1ヶ月を切ってる……か」
俺は目を伏せた。
手に入れた情報の内容に深層の令息なら倒れていても仕方ないが、人格に難がある俺はそのまま息を吐くことで何とか正気を保った。
「フェイ、折角だから他のお店も見て回ろうかと想っているけど」
「お供します」
そうフェイが言うと、俺は小さく頷いた。
俺はフェイを見上げながら言う。
長い髪を帽子に詰めて、どう見ても俺はちょっといい所の商家のお坊ちゃまくらいに見えるはず。
兄さんと呼ぶのは、隣を歩くフェイの事だ。
時折今までもこうして姿を変えて市街で買い物を楽しむ事があり、それにフェイは着いてくる。
侍従の役柄だと素になりすぎるからと買い物の時だけはフェイに兄役をお願いした。
俺の兄はカミル兄様だけだけれど、カミル兄様はどう見てもαの見た目でΩの俺と並ぶと綺麗すぎるのだ。
フェイも美形ではあるけれども、クールなタイプのフェイだから兄弟と言ってもそこまで可笑しくはないと思う。
「何を見たいんだ?」
「文房具と、少し贈り物を……シルフェ様が喜んでくれそうなものがいいと思うんだけど」
「文房具か……持ち運べる筆記具とかか?」
「そう、実用的なのがいいかなって」
俺は目星を付けていた文房具屋を指差してフェイを見上げた。
フェイはこくりと頷くと扉を開く。
「こんにちは、ペンを見せていただきたくて」
俺は扉から中に入るとそう声を掛けた。
「おや、いらっしゃい初めてのお客さんだね」
ひょこりと顔を出したのは丸眼鏡を掛けたキツネ顔の老人だった。
「はい。友達にプレゼントをしたくて。ところで雨が降りそうですね、今夜は月がでますかね」
俺は窓から空を見上げると、青空は見えずどんよりとした雲行きになってきているが、雨雲では無さそうだ。
「どうかなぁ、山の端に掛かるかもしれんが見えるだろうよ」
「なら、夜まで待てばいいですかね」
「まぁ……雨は夜半には上がるじゃろ」
ほっぽっと笑いながら老人はいくつかの箱入りのペンを出してくる。
「どんなのをお探しかね、これは珍しくインクが中に入っていてインク壺を持ち歩かなくても書けるという最新式のペンじゃな」
「面白いね。高い?でもプレゼントにならいいかなぁ」
「一本で7シルバーだが、二本買ってくれれば1ゴールドでいいぞ?」
そう言われて俺は迷いなく二本を購入した。
それぞれを箱に入れてペンの色に合わせたリボンを掛けてもらうと、支払いを済ませる。
「ありがとうございました、大切に使いますね?」
紙袋に入れてもらうとそれを手に店を出た。
「……ルーカス様」
「うん、1ヶ月を切ってる……か」
俺は目を伏せた。
手に入れた情報の内容に深層の令息なら倒れていても仕方ないが、人格に難がある俺はそのまま息を吐くことで何とか正気を保った。
「フェイ、折角だから他のお店も見て回ろうかと想っているけど」
「お供します」
そうフェイが言うと、俺は小さく頷いた。
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