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67話

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「ルーカス、何があってもお前は私の可愛い息子なんだ。大切にするというシルフェ様の言葉を信じたからルーカスが幸せになれることを祈って婚約をさせた。ルーカスが辛い思いをして戻って来たくなったらいつでも戻って来ていいからな」
「もう、父様……シルフェ様はそんな方では無いですよ。俺はシルフェ様の傍にいられるなら側室でも、妾でもいいと思っています。俺の容姿はαの兄様みたく美人じゃないのはわかっているから多くは望まないですが、でもシルフェ様の遺伝子を継ぐ子供は沢山欲しいと思っています」
俺の言葉に二人は苦笑する。
「ルーカス、自分を卑下するのはやめなさい。確かにルーカスはΩだけれど美人だと思う。優しく儚げな。αの美人は気の強そうな美人が多い気がするから雰囲気が違う美人だ」
目の前の兄様はそう言ってから紅茶を飲み干した。
「そうだぞ、父親の私から見てもルーカスの美貌がカミルに劣っているとは思わない」
「父上、確かにルーカスは可愛らしいですが父上は子供は全員可愛いでしょう」
「それはそうだな」
ははっと声を上げて笑った父様に、父様の子で良かったと俺は安堵した。
「では、そろそろお暇を。シルフェ様のお屋敷に戻ろうと思います」
ソファーから腰を上げた俺に、二人は残念そうな表情を浮かべた。
「また、いつでも来なさい」
「ありがとうございます、父様俺の部屋はまだ残っていますか?」
「勿論だ」
「あの、抑制剤が残っていれば持って行っても構いませんか?最近、飲んでいないのですがシルフェ様がいらっしゃらな……いときに……」
発情が来てしまうと困ると言おうとして、俺は真っ赤になった。
発情しかけた時は、シルフェ様がいたからいつでも抱いて貰えた。それはシルフェ様と何度も致していると言うことを暴露したも同然だからだ。
「うん、持って行きなさい。追加で同じ薬が必要ならカルテも用意させるが」
「お願いします」
「では、後日カルテの写しを届けるように手配をしておくよ」
俺のカルテを作ったのは、王宮の抱える最高の医師たちだ。
それは、俺が王子の婚約者だったからでそれでなければカルテなどしっかりと作ることは無いからだ。
そんな会話をしてから自分の部屋から抑制剤を俺が家を後にすると、静かにフェイが馬車の前で待っていてくれた。
「戻ろうか」
「はい」
馬車の扉を開けてもらい乗り込むと、ゆっくりと動き始める。
久し振りに見た自宅が懐かしく感じたが、俺がいる場所はここでは無いと感じていた。

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