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66話
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「美味しいね」
「ねー」
可愛らしい弟達がロールケーキを頬張るのを見ていると、こちらも笑みが零れる。
「俺のもわけて食べていいよ」
口の周りを軽く拭いてやりながら俺は自分のロールケーキを三つにフォークで切った。
大きいのがいいと、駄々をこねる弟達に苦笑しながらもそれぞれの皿にのせてやる。
「同じ大きさだよ?駄々っこにはあげないからね」
そう言うと、弟達は静かに食べ始めた。
ミルクとケーキでお腹がいっぱいになったのだろう、船を漕ぎ始めるのを見ると父様がチリンとベルを鳴らした。
入ってきた侍従が弟達を抱き上げると寝かし付けに行くのだろう。
「で、だ。ルーカス相談か?」
扉が閉まると父様がそう口火を切った。
俺は小さく頷いてから紅茶を一口飲むと話始める。
隣国が戦をおこす可能性が高いこと。
穀物や塩が輸出されていて、国内でも少しづつ値段が上がっているだろうと言うこと。
それを言うと、父様も兄様も渋い表情をしながらも静かに頷いた。
「シルフェ様が呼び出されましたから、極秘ではあると思いますが……お父様」
「とりあえず情報と、それなりに蓄えはあるから心配をしなくていい。私兵もそれなりにいるから」
心配をするなと父様の大きな手がぽんと頭に乗せられた。
「本当に良く気付いたね」
兄様にも褒められる。
「誰かに言った?」
「いえ、確信が持てなかったので誰にも……シルフェ様がいらっしゃれば相談をしたと思うけれど」
そう言うと、いい判断だと父様は頷いた。
「下手に不安を煽ると反逆罪ともとられかねない」
「それに、ルーカスがあのアホから婚約破棄をされたから嫌がらせにそんな噂を流したと言われるかも知れないからね」
兄様にもそう言われて、自分の判断が間違っていなかったと安心した。
「カミル兄様」
「うん、とりあえず王宮の同僚達から話を聞いてみるけれど、とりあえずルーカスは深呼吸だね。父上と私で動くからルーカスはゆっくりするといいよ、暫くはうちにいるんだろ?」
「いえ、俺はシルフェ様のお屋敷に……いつ、シルフェ様が戻ってくるかわからないですし……」
「少しでも顔を合わせたいってことか……わかるけど、まだ婚約者なんだよ?」
そう言われて俺は目を伏せる。
「はい、まだ婚約者ですか……俺は、シルフェ様以外にはもう嫁ぐつもりはありません。シルフェ様が要らないと仰るなら今度こそ修道院に行くつもりです。シルフェ様もお屋敷に居ていいと……今のところは邪魔だと言われていませんから」
そう俺が口にすると兄様は声を上げて笑った。
「ルーカスの口からそんな言葉が出てくるとはね。いつも一歩下がって大人しく反論なんかしたことが無かったのに、人が変わったみたい。良い方に変わったと思うけれど」
兄様の人が変わったと言われ、俺は一瞬ドキッとした。
記憶が戻ってからもしかしたら雰囲気が変わってしまったのかもしれない。
でも、そんな事をいくら父様や兄様でも言う事はできない。
「我慢するだけじゃなくて、我儘をたまには言いなさい。お前は優しすぎる」
父様にもそう言われた。
ありがとう……俺は不覚にも泣きそうになってしまった。
「ねー」
可愛らしい弟達がロールケーキを頬張るのを見ていると、こちらも笑みが零れる。
「俺のもわけて食べていいよ」
口の周りを軽く拭いてやりながら俺は自分のロールケーキを三つにフォークで切った。
大きいのがいいと、駄々をこねる弟達に苦笑しながらもそれぞれの皿にのせてやる。
「同じ大きさだよ?駄々っこにはあげないからね」
そう言うと、弟達は静かに食べ始めた。
ミルクとケーキでお腹がいっぱいになったのだろう、船を漕ぎ始めるのを見ると父様がチリンとベルを鳴らした。
入ってきた侍従が弟達を抱き上げると寝かし付けに行くのだろう。
「で、だ。ルーカス相談か?」
扉が閉まると父様がそう口火を切った。
俺は小さく頷いてから紅茶を一口飲むと話始める。
隣国が戦をおこす可能性が高いこと。
穀物や塩が輸出されていて、国内でも少しづつ値段が上がっているだろうと言うこと。
それを言うと、父様も兄様も渋い表情をしながらも静かに頷いた。
「シルフェ様が呼び出されましたから、極秘ではあると思いますが……お父様」
「とりあえず情報と、それなりに蓄えはあるから心配をしなくていい。私兵もそれなりにいるから」
心配をするなと父様の大きな手がぽんと頭に乗せられた。
「本当に良く気付いたね」
兄様にも褒められる。
「誰かに言った?」
「いえ、確信が持てなかったので誰にも……シルフェ様がいらっしゃれば相談をしたと思うけれど」
そう言うと、いい判断だと父様は頷いた。
「下手に不安を煽ると反逆罪ともとられかねない」
「それに、ルーカスがあのアホから婚約破棄をされたから嫌がらせにそんな噂を流したと言われるかも知れないからね」
兄様にもそう言われて、自分の判断が間違っていなかったと安心した。
「カミル兄様」
「うん、とりあえず王宮の同僚達から話を聞いてみるけれど、とりあえずルーカスは深呼吸だね。父上と私で動くからルーカスはゆっくりするといいよ、暫くはうちにいるんだろ?」
「いえ、俺はシルフェ様のお屋敷に……いつ、シルフェ様が戻ってくるかわからないですし……」
「少しでも顔を合わせたいってことか……わかるけど、まだ婚約者なんだよ?」
そう言われて俺は目を伏せる。
「はい、まだ婚約者ですか……俺は、シルフェ様以外にはもう嫁ぐつもりはありません。シルフェ様が要らないと仰るなら今度こそ修道院に行くつもりです。シルフェ様もお屋敷に居ていいと……今のところは邪魔だと言われていませんから」
そう俺が口にすると兄様は声を上げて笑った。
「ルーカスの口からそんな言葉が出てくるとはね。いつも一歩下がって大人しく反論なんかしたことが無かったのに、人が変わったみたい。良い方に変わったと思うけれど」
兄様の人が変わったと言われ、俺は一瞬ドキッとした。
記憶が戻ってからもしかしたら雰囲気が変わってしまったのかもしれない。
でも、そんな事をいくら父様や兄様でも言う事はできない。
「我慢するだけじゃなくて、我儘をたまには言いなさい。お前は優しすぎる」
父様にもそう言われた。
ありがとう……俺は不覚にも泣きそうになってしまった。
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