完結【BL】紅き月の宴～Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

65話【家族】

「ルーカス！」
シルフェ様にお借りした馬車でアーデルハイド家に戻る。
馬車から降りた瞬間父に抱き締められた。
「お父様、ありがとうございます」
懐かしい顔につい涙が零れそうになるが、それを堪えて父親の広い背中をそっと叩いた。
「シルフェ様から連絡を貰って婚約を認めたが、ルーカスは良かったのか？」
「はい。俺は大切にしていただいて幸せです。そのシルフェ様が昨日から王城に招かれていて……その件でお父様にお願い事があって、中でお話を」
「父上、狡いですよ私にもルーカスをハグさせてください」
横から出てきたのはカミル兄様。
どうやら弟達は部屋で待っているようだった。
お父様が離してくれると、今度はカミル兄様に抱きしめられる。
「大変だったな。テリオス達はルーカスが修道院に行ったと思っているから、話を合わせてくれ」
「大丈夫です、お兄様も俺の事で大変だったでしょう？」
「気にするな、さぁ入ろうか……フェイも久し振りだ」
俺を話しながら俺の背中側に視線を移した兄様は、そこに立つフェイに声を掛けた。
「お茶を用意してある」
「ありがとう。皆にはロールケーキを買ってきたから食べよう？」
俺はフェイが持つ黒い馬車亭の箱を見る。
「おぉ、ありがとうルーカス楽しみだ」
お父様の声が少し楽しそうに弾んだ気がした。
促されるまま久し振りの自宅へと足を踏み入れた瞬間、待っていたのだろう弟達が抱きついて来た。
三人の弟はまだ幼い。
第二の性別判定はまだ終わっていないが、その顔立ちを見ると三人ともαのような気がした。
「ルーにいさま」
「おかえりなしゃいませ」
「おかえりなしゃ」
それぞれが喋るのが可愛くて仕方ない。
「ただいま、三人とも良い子にしてた？」
俺は視線を下げて順番にその頭を撫でてやる。
テリオス・ルイス・ラーシャの順で若くなる弟達。
「ほら、ルーカスがケーキを買ってきてくれたみたいだからな、すぐにお茶を用意させるから」
「わぁ、ケーキ」
弟達は大喜びだ。素直に喜んでくれる姿を見ながら俺は弟達を応接室にと移動させる。
皆で座れる場所はそこだけだからだ。
「大人しくできないと、ケーキは無しだぞ？」
カミル兄様がそう笑いながら弟達に言うと、一瞬静かになる。
それが面白かったのか、兄様は楽しそうに笑った。
そして、応接室のソファーにそれぞれ腰掛けると、アーデルハイド家の使用人がワゴンを押して入ってくる。
大人には紅茶、子供にはミルクを用意してくれていた。