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64話
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「これでいいかな。フェイお願い。ダーウェルさんに中身を確認して貰ってからお父様へ」
「畏まりました」
この手紙の内容は自分から父へと個人的に出す物だが、シルフェ様の屋敷から出す手紙の為、中に何か極秘事項などが書いてないかを必ず中を確認してもらう為だ。
中を検閲されないものは、シルフェ様が特殊な蝋で封をしたもの。それ以外は全て中身を見られると言ってもおかしくない。
それはこの屋敷に仕える者が書いた手紙全てだ。
だからあえて俺は封緘をしていない。
シルフェ様たちにも見られて困るものは無いと知ってもらうため。
中身が大丈夫だとわかればきっとダーウェルが封をしてくれるだろう。
ただ、この手紙で伝えたい事は中身では無い。
アーデルハイド家で通信に赤いインクを使うのは緊急であると言うことを伝えるためだ。
その意味に気付かれないよう花のレターセットを使ったのは、インクとレターセットの色合いが可笑しく見えないようにする為だった。
フェイはそれを知っているしダーウェルももしかしたら気付くかもしれない。
ただ、それ以外の誰かに読まれても子が親と面会をしたいだけの手紙にしか見えなくしてある。
「俺は此処でお茶を飲んでるから大丈夫」
「では、ダーウェル様にお渡しして参りますのでこちらにいらしてください」
フェイは俺の手紙を掌より少し大きな銀色の丸い盆に乗せて四阿を後にした。
「とりあえず、もう一通は書いておかなければいけないよな……」
まだ、残っているレターセットの便箋を一枚手に取った。
それから、数時経って手紙の返事が来た。
同じエンジのインクを使った父からの手紙だった。
あまりにも早い返事に笑ってしまう。
フェイが直接持っていき、その場で返事を書いたのだろう。
少し丸みを帯びた癖のある文字は兄のもの。
いつでも遊びに来るように、弟達も待っていると言う内容だった。
「フェイ、明日お父様達にお会いしに行くのでダーウェルさんに伝えておいてくれる」
「畏まりました、一緒にお持ちになるのは黒い馬車亭のロールケーキでよろしいですか?」
「そうだね、お父様はあそこのロールケーキがお好きだから。お願い」
黒い馬車亭は、お父様がお抱えの影達の拠点なのだ。
「それと、フェイ……もし、俺に何かあったらこれをシルフェ様に渡して。何も無ければ破り捨てていいから」
俺はフェイに三枚の便箋を手渡した。
これは、もし戦争が始まってしまったらきっとシルフェ様の役に立つだろう。
その情報を書いている。
「何も無ければ一番なんだけどなぁ」
俺はそっと溜息を吐いた。
「畏まりました」
この手紙の内容は自分から父へと個人的に出す物だが、シルフェ様の屋敷から出す手紙の為、中に何か極秘事項などが書いてないかを必ず中を確認してもらう為だ。
中を検閲されないものは、シルフェ様が特殊な蝋で封をしたもの。それ以外は全て中身を見られると言ってもおかしくない。
それはこの屋敷に仕える者が書いた手紙全てだ。
だからあえて俺は封緘をしていない。
シルフェ様たちにも見られて困るものは無いと知ってもらうため。
中身が大丈夫だとわかればきっとダーウェルが封をしてくれるだろう。
ただ、この手紙で伝えたい事は中身では無い。
アーデルハイド家で通信に赤いインクを使うのは緊急であると言うことを伝えるためだ。
その意味に気付かれないよう花のレターセットを使ったのは、インクとレターセットの色合いが可笑しく見えないようにする為だった。
フェイはそれを知っているしダーウェルももしかしたら気付くかもしれない。
ただ、それ以外の誰かに読まれても子が親と面会をしたいだけの手紙にしか見えなくしてある。
「俺は此処でお茶を飲んでるから大丈夫」
「では、ダーウェル様にお渡しして参りますのでこちらにいらしてください」
フェイは俺の手紙を掌より少し大きな銀色の丸い盆に乗せて四阿を後にした。
「とりあえず、もう一通は書いておかなければいけないよな……」
まだ、残っているレターセットの便箋を一枚手に取った。
それから、数時経って手紙の返事が来た。
同じエンジのインクを使った父からの手紙だった。
あまりにも早い返事に笑ってしまう。
フェイが直接持っていき、その場で返事を書いたのだろう。
少し丸みを帯びた癖のある文字は兄のもの。
いつでも遊びに来るように、弟達も待っていると言う内容だった。
「フェイ、明日お父様達にお会いしに行くのでダーウェルさんに伝えておいてくれる」
「畏まりました、一緒にお持ちになるのは黒い馬車亭のロールケーキでよろしいですか?」
「そうだね、お父様はあそこのロールケーキがお好きだから。お願い」
黒い馬車亭は、お父様がお抱えの影達の拠点なのだ。
「それと、フェイ……もし、俺に何かあったらこれをシルフェ様に渡して。何も無ければ破り捨てていいから」
俺はフェイに三枚の便箋を手渡した。
これは、もし戦争が始まってしまったらきっとシルフェ様の役に立つだろう。
その情報を書いている。
「何も無ければ一番なんだけどなぁ」
俺はそっと溜息を吐いた。
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