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60話

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俺がフェイに連れて行かれたのは、寝室から扉を隔てた隣の部屋、クローゼットだった。
本来なら主に見せるとこはしてはいけないのですがと言うフェイが、開いた扉の向こうに並ぶのは色事に分けられた服がずらりと掛かっていた。
「え、フェイ……」
「今の時期にお召になることの出来る物が色事に揃えられております。ただ、簡単な分け方しか出来ておりませんのでこれから増える分と、ルーカス様の好みをもう一度確認させていただかなければならないですが、まだそこまでは出来ておらず申し訳ございません」
「シルフェ様、どうしてこんなに……でも、ウチにあったのを持ってきたわけでもないし」
端から何枚か見てみても、以前自宅で着ていたようなデザインの物はないのだ。
「はい、シルフェ様が全て選ばれました」
フェイは、掛かっている中から何枚かを選び出す。
「え、選ばれたってシルフェ様が全部デザインに目を通したと言うこと?」
「はい。半分ほどは出来合いを選んでおりますが、それはルーカス様をお迎えするのに急いだからと聞いておりますが近いうちには全てルーカス様のサイズの物にすると」
フェイが選んだのは、ロイヤルブルーのアオザイに白のパンツ。
「もうこれで十分だよ……こんなに着る場所が無いしそのうち新しいお部屋を頂くだろうから引っ越すのにも荷物は少ない方がいいだろうし。寒いお部屋だといけないから上着の外套が一枚は欲しいかな」
「何を仰っているのですか?」
フェイがきょとんとした表情を浮かべながら俺を見下ろしていた。
「だって俺、シルフェ様の妾だろ?愛人かもしれないけど……まだ婚約段階だし、シルフェ様に愛する方が現れるかもしれないからこのままの関係でいいんだけどさ、だからフェイはいつでも専属を外れていいからね?」
「はい」
フェイは何故か苦笑を浮かべながらも頷きながら、俺を衣装部屋からフィッティングルームに移動させるとガウンを脱がせて服を着させる。
「ルーカス様がこのタイプの服が好きなようだとシルフェ様から伺っておりますし、こな屋敷内ならどんな格好をしていても構わないとの事ですかルーカス様は今後どうされますか?」
「この服は好きなんだよ……涼しいし動きやすいから」
「ではそのように」
フェイの手を借りて着替えると、最後にアオザイには無い後ろを軽く紐で留めると出来上がりだった。
「では、朝食との事ですので、ご案内いたします」
そう言って部屋を出たフェイの後を俺は追うのだった。
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