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58話

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「もう、お腹いっぱいになりました」
スコーンを一つ食べてしまうと、もうお腹いっぱい。
それはシルフェ様が手づから塗ってくれたたっぷりのクリームのせいでもある。
程良い甘さだったが、やはりクリームはずっしりと重く、俺はたくさんは食べることが出来なかった。
ふと、壁に掛かる時計を見ると、まだ日付を跨ぐまでは行っていない。
帰ってきたのは宵闇が訪れる前だったから、どれだけシルフェ様と抱き合っていたのかを考えると恥ずかしくなってしまう。
「そうか?なら眠くなるまで少しゆっくりするか」
「シルフェ様はどうされますか? 戻られたばかりですからゆっくりと身体をお休めください」
「なんだ、ルーカスは私といるのは嫌か? 確かに私がいるとゆっくり休めないだろうし、初めての場所だからな……私の部屋は隣だから、眠れなかったら来るといい」
俺の頭を撫でてから立ち上がったシルフェ様は、おやすみと囁き軽いキスを頬にした。
「や、あの……シルフェ様、一緒に居るのが嫌な訳ではなく……シルフェ様にゆっくりして頂きたくて」
俺はそう言いながらシルフェ様を見上げた。
シルフェ様が好きで一緒に居たい。でもそれを伝えてしまうとシルフェ様の邪魔になってしまうのではないか。
また、俺と一緒にいてしまうと、シルフェ様を待っている方の所にシルフェ様が行けなくなってしまうかもしれないから。
「なら、今夜は一緒に寝るか?少し気怠いからな、横になったら眠ってしまうかもしれないが」
「俺と一緒で眠れますか?」
抱き枕位にしかならないだろうけれど、俺はシルフェ様と一緒に眠りたい……。
今夜だけでいい……このシルフェ様の部屋と近い距離の部屋にいるときだけでいいから。
我儘を言っているのはわかっている。
「あぁ、ルーカスが大丈夫なら、私の部屋で眠らないか?ルーカスの部屋の寝台よりも大きいぞ?」
そうシルフェ様に言われてからちらりと見てしまった俺の寝台は先程の情事でぐちゃぐちやになっていたのが、いつの間にか綺麗に整えられている。
いつ!?フェイが直していったのだろうか。
「それとも少し散歩でもするか?」
散歩と言われ、窓から見える綺麗に整えられた庭園。今はほんのりと灯りが点いて草木をぼんやりと照らしている。
俺はぼんやりと光る庭の向こう、小さな四阿まで行きたいと思うがそれはシルフェ様が居なくても行ける。
「いえ、シルフェ様と一緒にいられればそれだけで」
俺の言葉を聞いたシルフェ様は座り直しは俺を抱き寄せる。
「ルーカス、私は大丈夫だから行こう?行きたいのだろう」
ひょいとシルフェ様は俺を抱き上げたまま立ち上がる。うわっと思いながら抱きつくとシルフェ様は嬉しそうに笑った。
「このまま散歩をしよう、そうすればルーカスの足も疲れないだろう?」
「でも、この格好では流石に……」
2人揃ってバスローブと言う軽装だったことを思い出して俺は達はくすりと笑う。
それなら寝台でゆっくりしようか。結局そういうことになりシルフェ様は俺を抱いたまま隣の寝室に移動するのだった。
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