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51話

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二回の休憩を挟み、漸く王都へと辿り着いた。
途中から懐かしい風景に変わり、城門をくぐる時には少し緊張したが、特に何事も無く馬車は進んでいく。
窓から見えるのは、美しい街並み。
そして、遠くには白く輝く王城。
先塔には黄金の鷲が鎮座していた。
「ルーカス、もうすぐ私の屋敷ですがこのまま向かってしまっても?アーデルハイド侯爵家に行きたいのならそうしますが」
「大丈夫です」
「なら、落ち着いたら後日ご家族に逢いに行くのも良いでしょう、ルーカスの自由にしてください」
優しく言ってくれるシルフェ様に申し訳なく思いながら、俺は頷いた。
家から遠ざかっていたため、父や兄弟がどうなったか知らないのだ。
「私も騎士団の仕事があり、騎士団泊まらなければならない事もでてきます。できるだけ帰るようにしますが、それが出来ないこともあると思いますのでそれは我慢してください。私もルーカスと逢えないことを我慢しなければなりませんから」
そっと腰に回された手に引き寄せられる。
シルフェ様との距離が近い。
「シルフェ様、俺は何をしたらいいですか?掃除や洗濯なら教えてもらわなければいけないですが、身体は丈夫ですよ!発情がきてしまったら何処か鍵の掛かる部屋に入れておいていただけれぱ大丈夫ですし」
「待って、ルーカス……貴方は私の伴侶になるのでしょう?何故に掃除や洗濯をさせなければならないのでしょうか」
少し焦るように言葉を紡いだシルフェ様。
「楼閣でもやり方だけは教わったのですが、上手くできるかはわからないのでご迷惑をお掛けしてしまうかも……」
「いや、ですから……ルーカス……」
「はい?働かざる者食うべからず……そう、教えられておりますから」
人の上に立つものは、立っているのではなく立たせて貰っているのだと。
地位に見合った事をしなければならないのだと教えられてきた。
領地の経営や、家人の総括。
した事はまだ無かったが方法は学んだが、それはシルフェ様の奥方になる方の仕事なのだ。
だからと言って俺には騎士になれるほどの剣技は無い。
どうしたら、シルフェ様のお役に立てるか……それはΩである身体を使うこと……だろうか。
求められれば差し出さなければならない。
それは絶対だ。
「では、ルーカス。あなたの仕事は良く食べて良く動き、良く笑うことがお仕事にしよう。貴方は細過ぎます」
シルフェ様の言葉に俺は目を見開く。
「え、シルフェ……様」
「もう少し食べて太りなさい……ルーカスの好きな物は何?甘味や果物は?」
「シルフェ様、食べたら体型が崩れます」
俺がそう告げると、シルフェ様は目を伏せ溜息を吐いてから馬車の天井を見上げたのだった。
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