完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

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44話

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「あ……」
久し振りに感じた甘い匂いは、シルフェ様のフェロモンだろう。
ふわっと襟足辺りの毛が逆立つような感覚から、一気に発情してしまう。
「ルーカス……すまないッ」
慌てたように俺を抱き締めてくるシルフェ様に縋るように手を回した。
一度だけ経験した事があるが、αの発情フェロモンは、Ωの身体を作り変える。
「あっ……あぁ……」
全身が焼けるように熱くなる感覚。
「ごめん、なさい……シルフェさま……薬……っ」
発情してしまうと、抑制剤では完璧には元には戻らない。
抱いて貰うしかないのに。
こんな場所で発情してしまうなんて。
恥ずかしさに泣きたくなる。
「私が堪えられなかったんだ、ルーカスが謝ることではないんだ」
シルフェ様が?
「……何故?」
「それだけ、ルーカスの事を愛しているんだ。情けないな……王都までのこの距離すら耐えられないなんて」
細く息を吐いたシルフェ様は困ったように笑う。
「薬はあるけれど、飲む?それとも……」
するりとシルフェ様の大きな手が俺の服の裾から入ってくる。
「……っは、シルフェさま……」
するりと撫であげられる肌がカッと熱くなり、声が漏れる。
「嫌でなければ、してもいいだろうか?」
「はい、勿論です」
シルフェ様に教えていただいたこと。
「その前に、薬を飲もうか……ルーファスを抱き潰してしまわないように……」
「は、はい」
抱き潰すなど、シルフェ様の口から出るのは考えられない言葉に少し驚きながらもそっとシルフェ様に抱きついた。
「シルフェさまのお屋敷に……お部屋をいただけて、シルフェ様が望むのでしたら、抱き潰していただいても……んッ」
ギュウッと抱き締められて口吻けられると、するりと喉に何かが入ってくる。
「ん……っく」
こくりと飲み込んだそれはカッと熱を放ち喉の奥を落ちていく。
薬だ。
「ルーカス、あまり煽らないでくれ……まだ今夜は宿に泊まるのだろう?」
臓腑に感じるあたたかさ。
シルフェ様も何か小さな瓶を煽る。
「慣れないな……美味くない」
そう眉をひそめたシルフェ様に俺はそっと口吻けた。
口直しにもならないだろうけれど。
その意味を理解してくれたシルフェ様はくすりと笑うと一度唇を離してから俺の髪を撫でてゆっくり呼吸をすると、俺に再び優しく甘い口吻けをくれた。
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