41 / 131
40話
しおりを挟む
「で、どうする……」
楼主のいつもとは違う声音。
少しだけいつもより低い。
「……本当にあの方か?」
「間違いない……」
ふたりはそう言うと、同時に溜め息を吐いた。
俺は理由がわからなくて首を傾げるしかない。
「ルーカス嬢、先日会った青年と言うのが、間違いでなければ……王弟殿下……だ」
王弟殿下。
それは元婚約者であったアーサー様の叔父となる。
でも、若く見えた。
目の前にいるシルフェ様や楼主様と同じくらいの年齢ではないのか。
「王弟殿下……ですか」
「あぁ、陛下と年が離れて産まれているからな……間に嫁いで行った元王弟殿下達もいる」
話だけは聞いたことがあるけれど、物心つく前には現王様が王様であったし、ほかの王族の事は知識でしか知らなく王弟殿下がいらっしゃることは知っていたが式典なども出ない奔放な方だと聞いていた。
現王様にも男子が3人いて、王位継承権はその次だと聞く。
王太子に子が出来れば更に継承権は下がっていくため気ままに外界に出ているのだと.
でもまさか、花街にいるとは夢にも思わない。
まぁ、生理現象ではあるからいてはいけないわけではないけれど。
「で、だ。ルーカス……とりあえずはシルフェが花代を払ってくれてはいるが1月後客として来たときにはどう相手をする?」
楼主様が額に手を当ててこちらに聞いてくる。
聞かれてもわかるわけがない。
「お客をとる……でしょうか」
「それでいいのか?シルフェ」
本当はとりたくないが、自分は誰のものでもない。
シルフェ様に抱かれてはいるが、それはシルフェ様があくまでも客だからで……。
恋人同士が育むような愛はない。
きっと。
「ルーカス嬢が嫌でなければ貴方を身請けしたい」
シルフェ様の口からとんでもない単語が飛び出した。
まさか?
シルフェ様は攻略対象なのだ。
俺と接点ができても、恐らくシリルに惹かれていくだろう。
「シルフェ様、私は貴方の何番目ですか?」
口から出た言葉。
思ってもいなかった言葉に自分でも吃驚した。
シルフェ様は騎士でもあり、シャープな見た目は万人受けする顔だ。
それは攻略対象だからであり、自分の記憶を辿ると人気があって非公認だが親衛隊がいる。
全てを知っている訳ではないが、そんな方には婚約者や既に伴侶がいるかもしれない。
花街で買った者が正妻になれると思わない方がいいだろう。
ただ、シルフェ様はα。
Ωである自分は優秀なΩに嫁ぐことが幸せだ。
子を産めるのはΩ属性。
αの種もβの種も受け入れられるが、βと比べるとαとの間の出生率は高く子沢山になる傾向がある。
αβやβ同士で子は為せないが子供が欲しい場合は養子縁組をするのだ。
「いえ、シルフェ様が宜しければお願い致します」
自分には選択する権利など無いのだから。
そう思いながら俺は頭を下げた。
楼主のいつもとは違う声音。
少しだけいつもより低い。
「……本当にあの方か?」
「間違いない……」
ふたりはそう言うと、同時に溜め息を吐いた。
俺は理由がわからなくて首を傾げるしかない。
「ルーカス嬢、先日会った青年と言うのが、間違いでなければ……王弟殿下……だ」
王弟殿下。
それは元婚約者であったアーサー様の叔父となる。
でも、若く見えた。
目の前にいるシルフェ様や楼主様と同じくらいの年齢ではないのか。
「王弟殿下……ですか」
「あぁ、陛下と年が離れて産まれているからな……間に嫁いで行った元王弟殿下達もいる」
話だけは聞いたことがあるけれど、物心つく前には現王様が王様であったし、ほかの王族の事は知識でしか知らなく王弟殿下がいらっしゃることは知っていたが式典なども出ない奔放な方だと聞いていた。
現王様にも男子が3人いて、王位継承権はその次だと聞く。
王太子に子が出来れば更に継承権は下がっていくため気ままに外界に出ているのだと.
でもまさか、花街にいるとは夢にも思わない。
まぁ、生理現象ではあるからいてはいけないわけではないけれど。
「で、だ。ルーカス……とりあえずはシルフェが花代を払ってくれてはいるが1月後客として来たときにはどう相手をする?」
楼主様が額に手を当ててこちらに聞いてくる。
聞かれてもわかるわけがない。
「お客をとる……でしょうか」
「それでいいのか?シルフェ」
本当はとりたくないが、自分は誰のものでもない。
シルフェ様に抱かれてはいるが、それはシルフェ様があくまでも客だからで……。
恋人同士が育むような愛はない。
きっと。
「ルーカス嬢が嫌でなければ貴方を身請けしたい」
シルフェ様の口からとんでもない単語が飛び出した。
まさか?
シルフェ様は攻略対象なのだ。
俺と接点ができても、恐らくシリルに惹かれていくだろう。
「シルフェ様、私は貴方の何番目ですか?」
口から出た言葉。
思ってもいなかった言葉に自分でも吃驚した。
シルフェ様は騎士でもあり、シャープな見た目は万人受けする顔だ。
それは攻略対象だからであり、自分の記憶を辿ると人気があって非公認だが親衛隊がいる。
全てを知っている訳ではないが、そんな方には婚約者や既に伴侶がいるかもしれない。
花街で買った者が正妻になれると思わない方がいいだろう。
ただ、シルフェ様はα。
Ωである自分は優秀なΩに嫁ぐことが幸せだ。
子を産めるのはΩ属性。
αの種もβの種も受け入れられるが、βと比べるとαとの間の出生率は高く子沢山になる傾向がある。
αβやβ同士で子は為せないが子供が欲しい場合は養子縁組をするのだ。
「いえ、シルフェ様が宜しければお願い致します」
自分には選択する権利など無いのだから。
そう思いながら俺は頭を下げた。
305
お気に入りに追加
943
あなたにおすすめの小説
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。

猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない
muku
BL
猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。
竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。
猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。
どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。
勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました。
おまけの恋愛ルートはじめました!
絵つきの登場人物ご紹介は、お話の最後のほうに移動しました。
もしよかったらどうぞです!
流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる