完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

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38話

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「楼主様、どうかされましたか」
楼主の部屋へ食事を運んだ際に、盛大な溜め息を吐いた楼主に声を掛ける。
脚を組んで手を額にあて、ソファーに座った姿はやはり攻略対象だと思わせる美貌なのだ。
「あぁ、ルーカスか悪いなそこに置いておいてくれ」
指をさされたローテーブルへ、俺はトレイに乗せた食事ごと置かせて貰う。
まだ湯気が上がる熱々のスープが乗っている。
「お茶をいれましょうか?」
「ん、あぁ悪いな」
楼主は何やら紙を手にしている。
白い便箋の縁は見間違いでなければ細い金縁で縁取られている。
それは王族からの文を現している。
それに気付かなかった振りをして頭を下げると、簡易キッチンでお湯を沸かし始める。
取り出すのは隣国から非公式に輸入された茶葉。
普段自分たちが飲むものとは違う、香ばしさを感じる茶葉を沸騰したお湯で煮出し器に注ぐ。
その器は持ち手の無いグラスに似た形の陶器。
「楼主様、こちらに置かせていただきますので、冷めないうちに」
コトリコトリとポットと器を置いておく。
楼主は、まだ手紙を読んでいた。
「ルーカス、先日廊下でお客とぶつかったか?」
楼主の言葉に顔を上げると、視線が交わり俺はこくりと頷いた。
「そのお客は?どんな見た目だったか覚えているか?」
そう問われて、俺は思い出す。
「髪は濃灰でした、少し暗い廊下でしたからもしかしたら違うかもしれませんが、瞳は鮮やかなブルーだったかと。端正な顔立ちでとても良いお声だったと記憶していますが、その時に自分を買いたいと仰っていて当面先までは無理だとお伝えさせていただいたのですが……」
「そうか」
楼主は、また大きな溜め息を吐く。
「どうかされましたか」
「あぁ、近いうちにシルフェ様を呼ばなきゃならない……詳しいことはその時にお前にも話すつもりだが……この前の男が来ても決して2人で会おうとか思うなよ、絶対にだ」
強い楼主の語尾に、俺はわかりましたと頷いた。
じゃあ、行っていいぞと振られた手に俺は頭を下げてから部屋を出る。
シルフェ様が来てくださるのだという言葉に嬉しくもあったが、その後何かがあるのかもしれないと思うと少しだけ不安にもなるのだった。
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