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34話

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「ルーカス嬢、王都に戻りたいと思いますか?」
唐突にシルフェ様が聞いてきた。
「え?」
最初、何を聞かれているかわからず、首を傾げる。
「ご自宅に……」
「あぁ、いえ……私が帰ると家族に迷惑を掛けますし、シルフェ様なら私がどうして此処に来たのかもご存知かと。さすがに花街には驚きましたが此処の皆様は優しいですし」
シルフェ様に優しく抱いていただけたから、これからは細やかな作法を学びながら他のお客も取れると思う。
そうしなければ楼主様にも迷惑がかかるのだろう。
「シルフェ様、もしまたいらしていただけるなら、その時はお父様達の事を教えていただけたら嬉しいです」
次があれば……。
「わかりました、お任せ下さい。ルーカス嬢……ご家族に此処に居ることは?」
「伝えてはおりませんが、手紙を出しましたしきっとわかっていると思いますよ」
父が雇っている影は優秀であり恐らく俺がこの花街から手紙を出した時には何処にいるかはわかっていたと思っている。
「そうですか……」
目を伏せて何か考えたようで、シルフェ様は次に目を開くとそっと俺の頬に触れる。
「少し待っていただけますか?次にお逢いできるまで……」
「は、はい?」
待てと言われて何をと思うのだけれど、それ以上にまた逢えるのが嬉しい。
「お待ちしています」
いつになるかの約束はきっとシルフェ様はできないだろうけれど、それを希望に待てると思う。
そう思った瞬間、頬を撫でていた手がするりと首の後ろに回り引き寄せられる。
あっと思う暇もなく唇が重なった。
「っ!」
唇を重ねると言うことは、近しい関係であるということ。
気を抜いていたのは認めるが、どうしてと俺は自分の唇を両手で押さえた。
柔らかい感触。
「ルーカス嬢、嫌でしたか?」
嫌かと聞かれると、全く嫌ではない。
寧ろ驚きはしたけれど、申し訳なく思ってしまう。
自分は花街の住人なのだ。
「嫌では……でも」
俺の髪をそっと撫でたシルフェ様が身体を起こし、こちらを向くとそっと優しい手付きで俺の顎を掬い上げる。
「嫌でなければもう一度」
意味がわからずにシルフェ様を見つめていると、再び唇が重なった。
少し長く触れ合うと1度唇が離れてから、今度はシルフェ様の舌が唇をなぞるように触れてきた。
「ぇ」
驚いて口を開くと、その舌がするりと入ってくる。
いつの間にか上向かされるように腰と首の後ろに手が添えられて逃げることもできなくなっていた。
どんどんと中に入ってくる舌と、塞がれた唇で上手く呼吸ができない。
「んっ、ふ……」
苦しさにシルフェ様のシャツを掴んで引っ張ると、シルフェ様の動きが止まったのだった。
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