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33話

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動くのが辛かった俺をシルフェ様が甲斐甲斐しくお世話してくださる。
何で?シルフェ様はお客様なのに。
楼主様がちらりと顔を出してくれたのだけれど、何故かシルフェ様の顔を見ると逃げるように出ていってしまったのだ。
「ルーカス嬢、何か欲しいものはありますか?」
「いえ、もうじゅうぶんです」
ありがとうございますと、お礼を言い何かしようとするシルフェ様を止めた。
これ以上されるのは、困ってしまう。
「シルフェ様こそ、私が出来ることは何かありませんか?」
本当なら、察して動かなければならないのだが経験がなくて分からない。
「なら、お願いをしても?」
「はい」
何を言われるだろうか。俺にできることならと立ち上がったシルフェ様を見やる。
「膝枕をしていただきたいです」
「は?」
一瞬構えた俺は、シルフェ様からのお願い事に固まった。
膝枕?膝枕って、あれだよね。
確かに座ったままで楽と言えば楽だし……。
「構いませんが……」
恥ずかしいけれど、出来ない訳ではないと俺は寝台から起き上がり座る。
どこで膝枕をすればいいのだろうか。
床だろうかと立ち上がろうとしたのを制された。
「そのままで」
上掛けを捲り、伸ばしていた足を折り正座をしようとして痛みが走った。
うっと動きを止めた俺にシルフェ様は慌てたようで、俺に動かないで良いと言った。
そして、シルフェ様は俺の伸ばしたままの太股に頭を乗せる。
身長が高いためいくら広い寝台でもシルフェ様の膝から下はだらんと寝台から落ちていて、辛そうだと思ったがこれ以上動けない。
「ルーカス嬢、辛くはありませんか?」
太股に感じる頭の重さは、特に辛いものではなく、足も伸ばしたままのため痺れることは無さそうなのだが、どうして見上げてくるシルフェ様の視線に恥ずかしさを感じるのだ。
「大丈夫ですが、あまり見ないで下さい」
そっと俺はシルフェ様の瞼に掌で覆いをする。
覆った掌の下で瞬きをしたのだろう、シルフェ様の長い睫毛がくすぐったい。
「ルーカス嬢……?」
「駄目です」
絶対に下からのアングルっていつもと見え方が違うから見ないで欲しいと思っていると、押さえていた手首を掴まれてずらされると、チュッと掌にキスをされた。
「こんな角度からルーカス嬢を見ることができるなんて幸福だろう?私の幸せを取り上げないで欲しいな」
シルフェ様はそう言って目を細めた。
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