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31話

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「あっ……!」
俺が声を上げ、ゆっくりと侵入してきていたシルフェ様が動きを止めたのはほぼ同時で、一番奥まで到達したため、俺は浅い呼吸を繰り返していた。
「全部飲み込みましたね。痛くはありませんか?」
シルフェ様の優しい声にこくりと頷くと、綺麗な指先が俺の目尻に触れた。
「本当に?」
「……はい、苦しいですが、痛くないです」
ギチギチに広がっている感触と、臍の辺りの圧迫が強いような気がした。
馴染んだら動きますよと、シルフェ様が俺の頬に軽いキスをしながら囁いた。
「シルフェ様のお好きな時に……お願いします」
下から見上げたシルフェ様の笑顔に心臓がトクンと跳ねた。
本当にイケメンなんだよなぁ。
そりゃ、攻略対象なんだからわかるんだけど。
某王子達が婚約したのだから、このシルフェ様には恋人がいないのかもしれない。
でなければ、こんな花街へ来て俺をわざわざ買う理由がない。
「でも、ルーカス嬢の中もずいぶんと濡れているね……嫌そうじゃなくて良かったよ」
ゆっくりと、シルフェ様が腰を揺らしたのだろう艶かしい水音がした。
「言わないで……恥ずかし……」
反応することは自然な事なのに、何故かとても恥ずかしいのだ。
それでも、αには抵抗できない。
「可愛いのに?」
「それでも……」
「気を付けるけれど、たぶん無理だと思いますよ」
シルフェ様はそう言いながら腰を揺らし始めた。
体内のなにかが一緒に引き出されるような感覚に、シルフェ様の背中に爪を立てそうになり慌てて敷布を握り締めた。
「んん……」
ゆっくりだった動きが次第に大きくなっていく。
「あッ、ん」
突き入れられる早さや角度が変わり、気持ちいいと感じた部分で声をあげてしまう。
その声を上げた部分をシルフェさまは執拗に刺激をしてきた。
無意識で身体に力がはいっていたらしく、ポンポンとシルフェ様の手が頭を叩いて首筋を撫でられると、身体が強張っていた事に気づく。
「ルーカス嬢、息を詰めたら辛くなりますから」
「でも、シルフェ様がしてくださるのが、気持ちよくて……」
それが怖いのだと目を伏せた。
「ルーカス嬢、大丈夫ですよ……私も気持ちがいいですから。初めてを辛さや痛みで記憶しないならそれが一番です」
もう少し動きますねと、シルフェ様は腰を揺らした。
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