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26話

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「ルーカス嬢、あれは焼き菓子ですから、早めにどうぞ」
飾り尾を仕舞うシルフェ様が言うのは、先程いただいた小箱らしく、せっかくなら一緒に食べようと俺は開けて良いかと聞く。
構いませんよと言われて俺はリボンの端を引いた。
綺麗に包まれているのに解くのは勿体無い気がしたが。
とても上質のリボンが使われているのだ。
「わぁ」
俺はリボンを丁寧に纏めてから箱を開けると、そこにはまるで玩具のような綺麗に飾付けられた焼き菓子が入っていた。
型抜きされたクッキーが、綺麗にデコレーションされている。
それはまるで貴族のお茶会に並べられるような美しさだった。
「最近できた焼き菓子店のものですが、味は良いと聞きます」
「シルフェ様は甘いものは?」
「嫌いではありませんが、沢山は食べられなくて……」
「お1ついかがですか?」
「いただきましょう」
お皿か何かに出そうとしたが、そんなに気を使わなくていいと言われて小箱をそっと机に置いた。
「ルーカス嬢もお茶をいれてゆっくりしてください」
シルフェ様の言葉に頷くと、自分の分のお茶もいれさせて貰う。
向かい合う形ではなく、シルフェ様の隣に椅子を置いて横並びで座ると、ちらりとシルフェ様を見上げる。
立つと自分より頭1つ大きい身長だが、こうして座れば近くに感じる。
自分も小さい訳ではないが、騎士の人は比較的大柄なのだ。
αやβだからだろうか。
父様や兄様と比べるとやはり俺は一回りは小さくて、幼いときは沢山食べて運動すれば兄様のような長身になれると信じていた。
結局、途中で身長は止まってしまったが。
これで弟に抜かされたら流石にちょっと悲しいものもあるのだけれど、それはそれで仕方ない。
まだ、年齢がそこまでいかないが近いうちに性別判定をすることになるのだろう。
「ルーカス嬢、どうぞ?」
考え事をしてしまっていて、掛けられた声にハッとすると、そこにはにこにこと微笑むシルフェ様がいる。
そして、1枚の焼き菓子を手にして俺に差し出していた。
え。これは俗に言うあーんだろうか。
焼き菓子とシルフェ様を交互に見ていると、どうぞと更に差し出してきたため、俺は目を伏せつつ息を吐いてから、覚悟を決めてパクリと焼き菓子を一口で口に入れる。
さほど大きくはない焼き菓子は簡単に口に入った。
けれど、味など緊張してわかるはずもない。
モグモグと咀嚼をして飲み込んでから、俺は少しの悪戯心からシルフェ様がしたように、1つの焼き菓子を指先で摘まみシルフェ様の口許に差し出した。
さぁ、どんな反応をするのだろうかとシルフェ様を見ると、少し驚いた表情をしたが躊躇する気配もなく俺が摘まんだ焼き菓子を口に入れたのだった。
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