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24話

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「楼主様……それは、どういう……」
「シルフェ様が凄く良かったようでな、お前を次回まで予約したいのだと」

その、楼主の言葉に周囲がざわざわした。
誰だったか、シルフェ様は馴染みを作らないと言っていなかっただろうか。
何度も花街に来るが、相手をつとめるのはくじ引きだと。

「こちらとしても、花代貰えればそれでじゅうぶんだしだから、そう言うことだ。お前も手管を学んでおけ……いや、その素の姿が良いのかもしれないが……とりあえず、いつシルフェ様が来ても良いように準備だけはしておけよ?それと、首のチョーカーは絶対に外すな」

ポンポンと頭を軽く叩かれて、一瞬泣きそうになっていた涙が引っ込んだ。
次回がある。
シルフェ様に今度、ちゃんと抱いていただける機会があるかもしれないのだ。

「はい……」
「次も、来られる際は先触れを貰えるようだしな……何処を気に入って下さったのか……まぁ、揉めるよりかはいいか」

最後は苦笑しながら楼主は出ていった。
残された俺の回りにじりじりと姉様たちが近寄ってきたかと思うと質問攻めにあってしまった。
シルフェ様と何があったのか。
根掘り葉掘り聞かれたが、俺が答えられたのはいくつもない。
記憶があやふやなのだ。
いや、もう何をされたのかも覚えていないくらい強烈な出来事で、思い出すと顔が火照る。
それをまた姉様たちにからかわれると恥ずかしくて仕方なくなる。

「……もう、何もありませんでしたよぅ」

俺は情けないがそう返すしかなかった。
それから数日、俺は静かにシルフェを待った。
姉様たちに頼まれた刺繍をしながら。
何日かに1度、シルフェから贈り物が届いた。
ドレスだったり、髪留めだったり。
1つ、2つと増えていったが、俺はそれが少しだけ悲しかった。
それだけシルフェが此処に来ていないということなのだ。
初夜から三月経ったある日の昼間、漸くシルフェからの先触れが届いた。
届けたのはあのアサド様だった。

「よぅ、元気そうだが少し痩せたか?」

寡黙な表情だったが、こちらを心配するように見ている。

「はい、季節が変わるからか食べる量が少し減ったかもしれません」
「そうか、食べたいものがあれば次には届けるが」
「お気遣いありがとうございます、きっと慣れてきたら大丈夫だと思いますので」

余計な心配をさせてしまうと、俺は何も言えなくなる。

「アサド様……」
「あぁ、シルフェが今宵遅くなるかもしれないが来れるだろう。俺が先触れに来た」
「ありがとうございます、今宵はお泊まりに?」
「いや、片付けなければならないことがあるから今日はこれで失礼する」

そう言って立ち上がったアサド様。
王都からここまでどのくらいの距離があるかは良くわからないが、ただそれだけを伝えに来るのはどうなのか。
手間ではないのだろうかと心配になった。
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