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18話

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「ルーカス嬢?」
「シルフェ様こそ、何で俺の名前を?」
まだ名乗ってもいないのに。
「だって、貴方を買ったのが私ですから」
そう言ってシルフェはにっこりと笑った。そう言われるとそうなのだなと納得したのだが、今度は違う疑問が出てくる。
じゃあ先程までこの部屋にいたアサド様はどこに行ったのだろう?と、俺の頭の中は考えることを放棄している。
何処かぼんやりとしていて、上手く頭が回らないのだ。
「仕事がどうにも終わらなくて、それでも貴方を待たせたくないからとアサドに頼んだのですが……体調が悪いのなら無理を言わなければ良かったかな」
顎に手を当てて何か考え込んだ風なシルフェ。
その姿は1枚の絵画のようにも見えた。
「シルフェ様、が……今宵のご主人様ですか?」
「そう言うことになりますね」
「申し訳こざいませんでした……アサド様にも申し訳ないことをしてしまいました……今宵はよろしくお願いいたします」
上掛けをはずすと身体を起こしてから、その場で俺は頭を下げた。
それに少し驚いた表情を浮かべたシルフェは、何度か瞬きをしてから軽く首を傾げた。
「ルーカス嬢、体調が悪いと聞いたけど眠って少し良くなった?」
耳に優しい甘やかな声。
「はい、シルフェ様……何か飲まれますか?」
「無理はしなくていい。そこまで悪魔ではないよ……今夜はゆっくりしなさいと、言いたいところだけれど、ルーカス嬢、少しだけいいだろうか。無理だと思ったら止めてくれていいからね?」
「は、はい」
シルフェが、締めてある自分のタイに指を掛け、くいっと引き抜く。
その姿が粋に見えてドキリとした。
「あの、お手伝いを」
脱がせるのも仕事だと聞いていたため、俺は立ち上がろうとしたのを軽く手で止められ、ふわりと寝台に押し戻された。
「いい、ルーカス嬢は今夜は何もしなくていいので、私に全てを任せていただけますか?」
沈む寝台に見上げたシルフェの姿は何処か妖艶でこくりと喉が鳴った。
知識として知っている行為は、直前になって頭からすっぽりと抜け落ちてしまい、思い出そうとしても戻ってくる気配はない。
するりと引かれた胸元のリボン。
これから始まる行為に何故か恐怖は全く無く、むしろ少しだけ嬉しいという奇妙な感覚が体内を渦巻いていた。
再度テーブルの灯りを少し小さくしてくれたのはシルフェの配慮なのだろうか。
無意識に胸の前で組み合わせた手をやんわりとシルフェの手が開かせて、その中心にチュッと唇が触れた。
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