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14話
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「ほら、椅子がないから座ればいい。やわい足じゃないから大丈夫だ」
「でも、あの……」
気にするなと言いながらアサド様は紅茶を飲み始めた。
その横顔が余裕でこちらをからかっているようで、恥ずかしくなると俺はカップを手にする。
「やはり、結構です!」
寝台に腰掛けると、俺もカップに口を付ける。
ちらりと見たアサド様は何だか嬉しそうに口許が上がっていた。
「アサド様、先程朝食ができているとお湯を貰うときに仰っていた方がいましたので、食べるならいただいて参りますが?」
「あぁ、だがあちらで食べる」
「そうですかあたたかいうちが美味しいと思いますので」
起きたばかりでもしっかりと食事をとれるのだなと感心しながら紅茶を飲み干すと、お腹は減っていない。
「あぁ、ゆっくりと眠らせて貰ったし、悪かったな……残りの時間はゆっくりするといい」
テーブルにカップを置いたアサド様は椅子から立ち上がると編み上げの長靴を手早く慣れた風で履くとジャケットを掴んでからごちそうさんと部屋を出ていった。
それを静かに見送ってから、もう少しだけ眠りたいとカップは窓辺に置いてから、寝台に座ったままうとうとしてしまう。
ぽすんと後ろに倒れると柔らかな感触に身体が包まれて俺はそのまま眠ってしまった。
「ルーカス、ルーカス!お見送りの時間だよ」
トントンと扉が叩かれたと思うと、ガチャリと開かれて声を掛けられる。
眠ってしまっていた俺はガバッと身体を起こすと心臓が早鐘を打っていた。
何故だろう。
「は、はい……行きます」
室内着で眠ってしまったため、慌ててシャツに着替えて髪を軽く結わえると部屋を出る。
階段を降りると玄関口には騎士様達が並んでいた。
楼主がお気を付けてと声を掛けると、騎士たちは順番に外へと向かう。
その中にひときわ大きく見えるアサド様がいて、こちらに気付いたのか軽く手を上げて見せた。
俺はペコリと頭を下げると、アサド様も外へと出ていく。
お気を付けてと祈りながら、最後の一人が出ていくまで静かに見送る。
騎士たちは馬の手綱を引いて行き、街の外に出ると騎乗する。
太陽が降り注ぎ、真っ青な空に白と赤の騎士団の外套がはためく。
今回の出会いが俺の人生を変えるものだとまだ俺は知らずにいた。
「でも、あの……」
気にするなと言いながらアサド様は紅茶を飲み始めた。
その横顔が余裕でこちらをからかっているようで、恥ずかしくなると俺はカップを手にする。
「やはり、結構です!」
寝台に腰掛けると、俺もカップに口を付ける。
ちらりと見たアサド様は何だか嬉しそうに口許が上がっていた。
「アサド様、先程朝食ができているとお湯を貰うときに仰っていた方がいましたので、食べるならいただいて参りますが?」
「あぁ、だがあちらで食べる」
「そうですかあたたかいうちが美味しいと思いますので」
起きたばかりでもしっかりと食事をとれるのだなと感心しながら紅茶を飲み干すと、お腹は減っていない。
「あぁ、ゆっくりと眠らせて貰ったし、悪かったな……残りの時間はゆっくりするといい」
テーブルにカップを置いたアサド様は椅子から立ち上がると編み上げの長靴を手早く慣れた風で履くとジャケットを掴んでからごちそうさんと部屋を出ていった。
それを静かに見送ってから、もう少しだけ眠りたいとカップは窓辺に置いてから、寝台に座ったままうとうとしてしまう。
ぽすんと後ろに倒れると柔らかな感触に身体が包まれて俺はそのまま眠ってしまった。
「ルーカス、ルーカス!お見送りの時間だよ」
トントンと扉が叩かれたと思うと、ガチャリと開かれて声を掛けられる。
眠ってしまっていた俺はガバッと身体を起こすと心臓が早鐘を打っていた。
何故だろう。
「は、はい……行きます」
室内着で眠ってしまったため、慌ててシャツに着替えて髪を軽く結わえると部屋を出る。
階段を降りると玄関口には騎士様達が並んでいた。
楼主がお気を付けてと声を掛けると、騎士たちは順番に外へと向かう。
その中にひときわ大きく見えるアサド様がいて、こちらに気付いたのか軽く手を上げて見せた。
俺はペコリと頭を下げると、アサド様も外へと出ていく。
お気を付けてと祈りながら、最後の一人が出ていくまで静かに見送る。
騎士たちは馬の手綱を引いて行き、街の外に出ると騎乗する。
太陽が降り注ぎ、真っ青な空に白と赤の騎士団の外套がはためく。
今回の出会いが俺の人生を変えるものだとまだ俺は知らずにいた。
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