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11話
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「はい」
コンコンと扉にノックがあり、声を掛けた。
「悪いルーカス、部屋を貸してくれ」
ひょこりと扉を開けて顔を出したのは楼主だった。
俺は針の手を止めて椅子から立ち上がると扉へ近寄る。
「悪い、思ったより騎士の数が多くてな、部屋が足りないんだ。まだお前は店に出していないと言ってはあるし、寝台だけでもって言うから、悪いんだが……」
「あ、はい……構いませんが、本当に俺……お役にたたないですよ?」
初物を好むという人もいるし、無理やり犯されることも楼主たちが目を瞑ってしまえば揉み消されても仕方無い。
まぁ、騎士が相手だと言うのでその辺りは心配はしていない。
無体な事は騎士道精神に反すると聞く。
「では、どうぞ?」
そう言うと、悪いなと言って楼主は離れていき、それとすれ違いに違うノックがあった。
「お入り下さい」
扉が開いて顔を覗かせたのは、扉と同じくらい大きいだろう。
背の高くがっしりとした身体の騎士だった。
「悪かったな、少しでいいから眠らせてくれ」
無表情に近いその騎士からは強い疲れが感じられた。
「はい、良ければ脱ぐのをお手伝いします」
凄く気だるそうな様子から、長靴を履いたままでも眠ってしまいそうに見える。
「私がやりますので、どうぞ椅子へ」
先程まで自分が座っていた椅子に座るよう促すと、騎士はおとなしく従ってくれた。
大きな身体が自分の座っていた椅子に座る姿は少し窮屈そうに見えて可愛いと感じてしまう。
その、投げ出された足の前に膝をつくと、編み上げられた長靴の紐に手を掛けた。
手早く紐を引いて編み上げられた紐を緩めて脱がせると、備え付けの蛇口から水を盥に入れて布を浸す。
それで足を拭った。
本当は温かいお湯がいいのだが、貰ってくるよりは先に横にしてあげたい。
「騎士様、外套も外しますね?」
肩から下がる外套も紐を外してから机に畳んで、騎士服の釦を外しズボンのベルトを引き抜いた。
流石にズボンを脱がせるのは躊躇われたためそのままにすると、騎士は悪かったなと、のっそり立ち上がり一つしかない寝台へごろりと転がった。
なにやらもごもごと喋っていたのだが、そのうちには小さな寝息が聞こえ始めた。
「お疲れ様です」
大きな騎士服を皺にならないように掛けてから、俺はそっとお湯を貰いに厨房に向かった。
もう一度温かいお湯で手足を拭いてやりたいと思ったからで、厨房に入るもそこには誰もおらず鍋には少しお湯があるだけで、仕方がないと鍋にお湯を張って沸かし始める。
火の使い方はだいぶ慣れた。
火を起こすことすら知らなかったのだ。
いや、前の記憶ではマッチやライターの記憶はある。
たど、そんな便利な道具があるわけがないし、こちらの世界では火を点けることなど無かったからだ。
たっぷりのお湯を沸かしてから、その少しを部屋に運んで水で薄めて布を浸す。
眠りが深いのか騎士の手足を拭いたが、その夜は騎士は目覚めることは無かった。
コンコンと扉にノックがあり、声を掛けた。
「悪いルーカス、部屋を貸してくれ」
ひょこりと扉を開けて顔を出したのは楼主だった。
俺は針の手を止めて椅子から立ち上がると扉へ近寄る。
「悪い、思ったより騎士の数が多くてな、部屋が足りないんだ。まだお前は店に出していないと言ってはあるし、寝台だけでもって言うから、悪いんだが……」
「あ、はい……構いませんが、本当に俺……お役にたたないですよ?」
初物を好むという人もいるし、無理やり犯されることも楼主たちが目を瞑ってしまえば揉み消されても仕方無い。
まぁ、騎士が相手だと言うのでその辺りは心配はしていない。
無体な事は騎士道精神に反すると聞く。
「では、どうぞ?」
そう言うと、悪いなと言って楼主は離れていき、それとすれ違いに違うノックがあった。
「お入り下さい」
扉が開いて顔を覗かせたのは、扉と同じくらい大きいだろう。
背の高くがっしりとした身体の騎士だった。
「悪かったな、少しでいいから眠らせてくれ」
無表情に近いその騎士からは強い疲れが感じられた。
「はい、良ければ脱ぐのをお手伝いします」
凄く気だるそうな様子から、長靴を履いたままでも眠ってしまいそうに見える。
「私がやりますので、どうぞ椅子へ」
先程まで自分が座っていた椅子に座るよう促すと、騎士はおとなしく従ってくれた。
大きな身体が自分の座っていた椅子に座る姿は少し窮屈そうに見えて可愛いと感じてしまう。
その、投げ出された足の前に膝をつくと、編み上げられた長靴の紐に手を掛けた。
手早く紐を引いて編み上げられた紐を緩めて脱がせると、備え付けの蛇口から水を盥に入れて布を浸す。
それで足を拭った。
本当は温かいお湯がいいのだが、貰ってくるよりは先に横にしてあげたい。
「騎士様、外套も外しますね?」
肩から下がる外套も紐を外してから机に畳んで、騎士服の釦を外しズボンのベルトを引き抜いた。
流石にズボンを脱がせるのは躊躇われたためそのままにすると、騎士は悪かったなと、のっそり立ち上がり一つしかない寝台へごろりと転がった。
なにやらもごもごと喋っていたのだが、そのうちには小さな寝息が聞こえ始めた。
「お疲れ様です」
大きな騎士服を皺にならないように掛けてから、俺はそっとお湯を貰いに厨房に向かった。
もう一度温かいお湯で手足を拭いてやりたいと思ったからで、厨房に入るもそこには誰もおらず鍋には少しお湯があるだけで、仕方がないと鍋にお湯を張って沸かし始める。
火の使い方はだいぶ慣れた。
火を起こすことすら知らなかったのだ。
いや、前の記憶ではマッチやライターの記憶はある。
たど、そんな便利な道具があるわけがないし、こちらの世界では火を点けることなど無かったからだ。
たっぷりのお湯を沸かしてから、その少しを部屋に運んで水で薄めて布を浸す。
眠りが深いのか騎士の手足を拭いたが、その夜は騎士は目覚めることは無かった。
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