完結【BL】紅き月の宴～Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

７話

目を開くとそこは見たことのない天井。

「何処……？」

白い天井で窓には朱塗りの格子。
掛かったカーテンは薄い桃色。
自分が寝ていたのはしっかりとした寝台で、寝具は白を基調とした刺繍が入った豪華なものだった。

「おや、起きたのかい」

扉が開き入口から入ってきたのは化粧をし、髪を弛く纏め上げた美しい青年だった。
その右手には長い棒のようなものを持ち、その先端からは煙が上がっているためそれが煙管だと気付いた。

「アンタ名前は？」

少し高めの鼻にかかったような声で聞かれた。

「ルーカス……と、申します」
「そうかい、随分と貧相な姿だけど、その長い髪は中流以上だろ？此処は花街さ、春を売って金を稼ぐ場所だからね、アンタにも客を取って貰うよ」

そう言いながら青年はぷかりと、煙管を燻らせ煙を吐き出す。

「客って……」
「αかβさ、ごく稀にΩもいるけど」
「俺は……」
「此処に売られたのさ、何故かはアンタが良く知っているだろう？」

そう言われて思い当たる節はない。

「俺は馬車に乗っていて修道院に向かっていたのですが……御者の方が一緒に居たはず……」
「この店に来たのはアンタだけさ」

そう言うと青年は笑う。

「まぁ、色々と事情はあるだろうけどアンタをこの店で買っちまったんだ、逃げようと思わない方がいい。手紙を書きたい人がいるなら今日１日は休みにしてやるから自由にしな」
「あの、俺の鞄は……持っていませんでしたか」
「さぁね、此処に来たときには何も持っていなかったけどな」
「なら、着替えとか……」
「あぁ、ウチは良い店だから全部支給している。必要なものがあれば前借りか稼いだ金で買うんだな。それと、アンΩだろ？首に付けさせて貰うからな？」

煙管を窓際の机に置くと青年は幅広のベルトを取り出した。
強制番をさせないためのベルトだ。

「ほら、手を出しな。登録するから」

登録とはこのベルトを自由に外せなくするための認証方法で、登録した人間しか外せなく設定するのだ。

「あの、俺……売れるものなんて全く持っていないんですが」

つい、そんな言葉が口から出る。
自分は何も持っていないのだ。
修道院に行くからと持って出たのは少しばかりの着替えとお金。
それより、御者の存在も気にはなる。
無事だろうか。

「ほら、さっさとしろよ。登録しな」

青年に促され慌てて手を差し出した。
革の端に付いた宝石に触れることで指紋等を認証するのだろう。
触れるとブゥンと宝石が震えて点滅し、それが消えると男の手でベルトが俺の首へカチリと填まった。