5 / 51
5話
しおりを挟む
「本当にこれは、聖痕なのかしら」
自分の手の甲を見るも、数刻前には無かったもの。
綺麗に整えた爪と、痣のあった小指。
今日に限っては何も装身具を指にはしていなかった。
「気になるようでしたら、部屋に戻るまでは、こちらをどうぞ」
ベルナルドが差し出してきたのは真っ白な手袋だった。
ただ、それは男物で…
「お借りします、返すのは洗ってからになりますが、いつこの国を発たれますの?」
留学生と聞いている。
それならば帰国をするだろう。
「フェンリエッタ嬢に婚約の許可を貰うまではこの国に留まろうかと」
「まだ、そんな事を仰るの?私、婚約破棄をされた傷物ですことよ?そんな女を妻にだなんて酔狂ですわ」
借りた手袋を填めるも、指先は余るしかなり大きい。
ただ、白い手袋の手首の辺りに銀色で竜の紋様が見えた。
「そんなことはありませんよ、フェンリエッタ嬢?貴女は綺麗だ……」
「全く……口が上手くていらっしゃるのね」
ベルナルドは入学してから今まで浮いた話を聞いたことがない。
誰かと付き合うという話も無かった。
「フェンリエッタ嬢の手の甲に聖痕が出たと言うことは、そう言うことなのでしょう」
ベルナルドの大きな手が手袋ごと私の手を包む。
聖痕が浮かぶと言うことは乙女でないといけないのだ。
フェンリエッタはそう言うことをして来なかった。
勿論、王家に嫁ぐからである。
王家の血筋に他のものを混ぜないようにと、初夜は何人もの人間に囲まれて破瓜の印を見られなければならないのだ。
その恥辱に耐えてこそだと育てられてきている。
そのため、貴族の血をひく聖女の中から伴侶が選ばれる事もあった。
ただ、ここ数十年、聖女は現れていない。
だから、フェルディナンドのお妃候補が年も近いフェンリエッタに決まったのだ。
フェルディナンドとの婚約をしたのが9歳のとき。
それを10歳まで引き伸ばせば、その時に聖痕が現れていたのかもしれないとベルナルドは言った。
「そんなことがあるのかしら……聞いたことがないわ」
フェンリエッタは小さく呟いた。
自分の手の甲を見るも、数刻前には無かったもの。
綺麗に整えた爪と、痣のあった小指。
今日に限っては何も装身具を指にはしていなかった。
「気になるようでしたら、部屋に戻るまでは、こちらをどうぞ」
ベルナルドが差し出してきたのは真っ白な手袋だった。
ただ、それは男物で…
「お借りします、返すのは洗ってからになりますが、いつこの国を発たれますの?」
留学生と聞いている。
それならば帰国をするだろう。
「フェンリエッタ嬢に婚約の許可を貰うまではこの国に留まろうかと」
「まだ、そんな事を仰るの?私、婚約破棄をされた傷物ですことよ?そんな女を妻にだなんて酔狂ですわ」
借りた手袋を填めるも、指先は余るしかなり大きい。
ただ、白い手袋の手首の辺りに銀色で竜の紋様が見えた。
「そんなことはありませんよ、フェンリエッタ嬢?貴女は綺麗だ……」
「全く……口が上手くていらっしゃるのね」
ベルナルドは入学してから今まで浮いた話を聞いたことがない。
誰かと付き合うという話も無かった。
「フェンリエッタ嬢の手の甲に聖痕が出たと言うことは、そう言うことなのでしょう」
ベルナルドの大きな手が手袋ごと私の手を包む。
聖痕が浮かぶと言うことは乙女でないといけないのだ。
フェンリエッタはそう言うことをして来なかった。
勿論、王家に嫁ぐからである。
王家の血筋に他のものを混ぜないようにと、初夜は何人もの人間に囲まれて破瓜の印を見られなければならないのだ。
その恥辱に耐えてこそだと育てられてきている。
そのため、貴族の血をひく聖女の中から伴侶が選ばれる事もあった。
ただ、ここ数十年、聖女は現れていない。
だから、フェルディナンドのお妃候補が年も近いフェンリエッタに決まったのだ。
フェルディナンドとの婚約をしたのが9歳のとき。
それを10歳まで引き伸ばせば、その時に聖痕が現れていたのかもしれないとベルナルドは言った。
「そんなことがあるのかしら……聞いたことがないわ」
フェンリエッタは小さく呟いた。
32
お気に入りに追加
4,219
あなたにおすすめの小説
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。
さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」
王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。
前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。
侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。
王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。
政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。
ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。
カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる