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1章
154話
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「……どうした、眠れないか?」
カイルが業務を終えるまで、俺は読書に没頭してしまいカイルを出迎える事が出来なかった。
それても何とか一緒に食事をして、入浴と身支度を手伝って貰い漸く同じ寝台で眠ろうとしていたのだったが、読書の興奮から寝付けずに寝返りをうったところでカイルの声がかかった。
「ごめん……遅くまで本を読んじゃったからかな……カイルは明日も早いのにね……俺、自分の部屋で眠るよ」
身体を起こすと、カイルの邪魔をしたくないとそっと寝台から降りようとして腰を掴まれた。
「気にしなくていい……俺も寝付けなかったところだ」
「カイル……カイルは少しでも眠らなきゃ。俺はやることがあまり無いから」
「そんなことはないだろう?少し庭でも歩くか?」
「あの……いえ、俺だけで……」
「危ないから一緒に行こう」
カイルも起き出そうとするため、慌てて俺はカイルを寝台に戻した。
「大丈夫ですから」
「そうか?なら、少し身体を動かすか。テトが辛くなければ」
カイルからの閨への誘い。
忙しいあまり、最近はご無沙汰だったなと思い出し、俺はカイルの手を取った。
「準備をしていません……」
「交わるだけが全てではないし、無理そうなら言ってくれ」
優しい言葉に、本当にこの人の伴侶でいいのか不安が込み上げる。
何もできないのだ。
「はい……カイル……愛しています」
寝台に強い力で引き上げられて、ゆっくりと寝かされる。
初めてではない行為にそれでも羞恥は襲ってくる。
有難いことに、眠る前だったため部屋には照明は小さな明かりだけ。
大きな月も窓に掛られた薄布が遮ってくれている。
昼間はあんなに暑いと言うのに、夜風が吹き込むとヒヤリとしている。
見下ろしてくるカイルの髪がひと房落ちてきて頬を擽った。
「カイル……」
「任せておけ?テトの悦ぶ部分は全て知っている」
指先で撫でられる頬に、無意識に目を伏せて頬を寄せる。
カイルが与えてくれる甘い誘惑の序章。
「ん……カイル……カイルに触られるのが好き……凄く幸せなんだ。この少し低い体温が上がっていくの……」
服を肌蹴られ、するりと喉元に唇を押し当てられる。
吸い上げられる感覚に声が漏れた。
「は……カイル……」
「テトの、気持ちいい部分は全て知っている」
「うん、俺も……どうしたらカイルがきもちよくなってくれるか、知ってる……カイル……」
唇を重ねて舌を絡める。
静かな部屋の中に小さな水音が繰り返される。
「ん、カイルも、脱いで?」
柔らかな夜着が落とされて少しずつ熱くなる肌がしっとりと重なった。
カイルが業務を終えるまで、俺は読書に没頭してしまいカイルを出迎える事が出来なかった。
それても何とか一緒に食事をして、入浴と身支度を手伝って貰い漸く同じ寝台で眠ろうとしていたのだったが、読書の興奮から寝付けずに寝返りをうったところでカイルの声がかかった。
「ごめん……遅くまで本を読んじゃったからかな……カイルは明日も早いのにね……俺、自分の部屋で眠るよ」
身体を起こすと、カイルの邪魔をしたくないとそっと寝台から降りようとして腰を掴まれた。
「気にしなくていい……俺も寝付けなかったところだ」
「カイル……カイルは少しでも眠らなきゃ。俺はやることがあまり無いから」
「そんなことはないだろう?少し庭でも歩くか?」
「あの……いえ、俺だけで……」
「危ないから一緒に行こう」
カイルも起き出そうとするため、慌てて俺はカイルを寝台に戻した。
「大丈夫ですから」
「そうか?なら、少し身体を動かすか。テトが辛くなければ」
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忙しいあまり、最近はご無沙汰だったなと思い出し、俺はカイルの手を取った。
「準備をしていません……」
「交わるだけが全てではないし、無理そうなら言ってくれ」
優しい言葉に、本当にこの人の伴侶でいいのか不安が込み上げる。
何もできないのだ。
「はい……カイル……愛しています」
寝台に強い力で引き上げられて、ゆっくりと寝かされる。
初めてではない行為にそれでも羞恥は襲ってくる。
有難いことに、眠る前だったため部屋には照明は小さな明かりだけ。
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昼間はあんなに暑いと言うのに、夜風が吹き込むとヒヤリとしている。
見下ろしてくるカイルの髪がひと房落ちてきて頬を擽った。
「カイル……」
「任せておけ?テトの悦ぶ部分は全て知っている」
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「ん……カイル……カイルに触られるのが好き……凄く幸せなんだ。この少し低い体温が上がっていくの……」
服を肌蹴られ、するりと喉元に唇を押し当てられる。
吸い上げられる感覚に声が漏れた。
「は……カイル……」
「テトの、気持ちいい部分は全て知っている」
「うん、俺も……どうしたらカイルがきもちよくなってくれるか、知ってる……カイル……」
唇を重ねて舌を絡める。
静かな部屋の中に小さな水音が繰り返される。
「ん、カイルも、脱いで?」
柔らかな夜着が落とされて少しずつ熱くなる肌がしっとりと重なった。
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