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1章

151話

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シャランと足首のアンクレットが鳴った。
数年前から流行りだしたアンクレットがサンダルと繋がるようにデザインされたもの。
俺が、アンクレットが切れてしまいそうだと言ったことから編み上げサンダルを改良して作ったらしい。
若い女性たちを中心に足元のお洒落を楽しんでいると聞く。
ミリシャもいくつか持っていて、お気に入りがあるようだった。
「カイル……歩けるから」
そう、俺はカイルに抱き上げられて部屋に向かっている。
四阿から部屋に戻ろうとして立ち上がった瞬間、立ち眩みにふらりとしてしまったのがいけなかった。
カイルに抱き上げられて部屋まで連れて行くと言われた。
大丈夫だからと何度も言うが、カイルは許してくれず俺を抱き上げるのを他の誰かに任せたくもないと言いきられてしまうと、俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「テトあと少しだからそのままでいてくれ。テトを部屋に置いたら俺は執務に戻らないといけないからな。テトの急ぎの仕事は無いだろう?」
「無い……けど、でも何か出来ることを」
「テトがすることはゆっくり身体を休めることだ。そして無理をしない笑顔で俺を迎えて欲しい。テトは無意識のうちに頑張りすぎるきらいがあるからな、体調が戻るまで公務を休んでもいいんだぞ?」
カイルは、ちらりちらりと俺を見る。
「でも、俺がやっている仕事はそれほど大変じゃないし、竜神への祈りはミリシャにはまだ少し荷が勝ち過ぎているから……今回の行脚が終わって無事に戻ってくれば世代交代してもいいかなと思うけど」
世代交代と自分で口にしてから、ふと竜神の言葉に思い当たる節をみつけた。
俺、もしかして力が弱くなってきている?
体調が悪いのではなく祈りが薄れてきている?
魔力量は多かった筈なのに……雨を呼ぶのに時間が掛かったのはそういう事なのだろうか。
「テト、テト!部屋に着いたから後はアスミタに頼むが無理はするな」
静かに部屋の扉が開きカイルは俺を長椅子に座らせた。
簡易の寝台が隣の部屋にはあるが、そこまでではないだろうとカイルが判断したのだ。
「アスミタ、テトを頼む。今夜は食事を一緒に取るからそれも頼んだ」
「畏まりました。いってらっしゃいませ陛下」
アスミタはお任せくださいとばかりに頭を下げると、カイルは行ってくると笑いながら俺の唇にキスをした。
「カイル、気をつけて」
俺は、キスを受けてからそっと、カイルのシャープな頬に手を添える。
何だか行って欲しくないなと思うもそれは口にはできず俺はソファに腰掛けたままカイルを見送ったのだった。
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