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1章

150話

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「食べられたなテト、良かった。アスミタ」
「畏まりました」
優秀な侍従はカイルの言外を汲み取って頭を下げるとそっと離れていく。
「どうしたの、カイル」
「今宵はテトと食事をしようと思ってな?また、この氷菓を出して貰おうと思ってアスミタに頼んだ」
空になったガラスの器。
「そう?最近カイルも忙しかったしゆっくりできるなら良かった」
俺はほっと胸を撫で下ろす。
食事を一緒に取るだけでなく、一緒の寝台で眠ることも時折出来なかったカイル。
 「一日くらい王様を休めばいいのに」
俺はそんな事が出来ないカイルを知っているが言わずにはいられない。
「俺にはカイルの代わりをするだけの力が無いのが悔しいよ………だけど、休んで欲しいな」
王としてのカイルの補佐的な仕事は何とか出来るが、最終決定権を持つカイルの仕事を俺はできずにいる。
努力はしているのだが、どうしても性格からか後込みをしてしまうのだ。
だから、カイルの仕事が減ることが無い。
「テト、適材適所だろう?俺はテトのように龍神の祝福は貰えていない。テトのおかげで少しだけ祝福を分けて貰ってはいるが雨を降らせるほどの力は無いのだからな?俺の仕事は官吏もできるが、テトの仕事はテトにしかできないぞ?」
カイルの優しい笑顔に俺は申し訳なさを表さないように笑みを浮かべた。
「テトの力はこの国には無くてはならない力なのだから、唯一無二なんだ。勿論俺にとっても代わりは無い大切な伴侶だから、テト……そのように、自分に何も無いなどと言うのではないよ。俺からしたら大切な伴侶であり、ミリシャからすれば大切な母だ。アスミタからすれば大切な主だろう……国民からすれば大切な国母になるな。
だからテト……アルーディアにはテトが居なければならない。それとも俺がテトを愛し足りないと感じさせてしまっているのか?」
「そんな!滅相もない」
まさかと俺は頭を振る。
カイルの愛を疑った事などない。
「いつもたくさん愛していただいています、むしろ俺が返しきれていなくて」
「そんな事は無い。いつもテトが俺の服を決めてくれていると聞く。毎日は大変だろう?でも、テトが選んでくれたと言うだけで一日が頑張れるんだ」
カイルの必要な着替えをアスミタに手伝って貰いながら予定と照らし合わせて前日に用意するのがいつからか日課になっていた。
カイルが俺の装身具を選んでくれるように、俺も何かをしたいと思うようになってからアスミタに相談して翌日の服を決めるようになった。
来賓を迎える服、謁見時の服。
様々な服を取り揃えているカイルだから、色だけでは決められないのだ。
「気づいてた?」
「勿論だ、最初は奇抜な組み合わせだなと思った時もあったが、最近は随分と落ち着いてきたしな?」
ははっと思い出しをして笑ったカイルに俺は恥ずかしくなって目を伏せた。
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