61 / 62
2章
20話
しおりを挟む
「ほら、騒ぐなセラフィナ姿見を」
カミーユの指示に、セラフィナはこちらにと一抱えもある鏡を起こす。
銅板だろうか、凄く重そうな装飾で飾られた鏡は、セラフィナがいくら力があるとわかっていても、持ち歩ける手鏡を使っていた俺からすると、とても重そうにかんじた。
流石にキャスター付きの姿見って訳にもいかないだろうけれど、こんなものを運ばせるのが申し訳なくなってくる。
「立てるか?」
「あぁ、うん」
俺はそっと立ち上がり、全身を鏡に映す。
少しぐにゃりと歪む姿だったが、まぁまぁわからなくはない程度。
思っていたよりも装身具のおかげで、肌の露出は抑えられている気がした。
「これなら、まぁ何とか?」
俺の言葉に少しホッとした表情を浮かべたセラフィナ。
それに気付くと、わがままを言ってしまった事に申し訳なさを感じた。
三十路のオヤジが若者を困らせてしまっている。
「セラフィナ、鏡をありがとう。重そうだな……どうやってこの鏡は作っているのかなぁ……フロート法?」
ふと、昔の知識が蘇る。
学生の時に反射の授業でやった、光をレンズに通す実験で屈折率などを求めたりする事から話が逸れて何故が鏡の作り方などを当時聞いたなと言うのを思い出した。
黒いカーテンを敷いたガラスや夜にどうして自分の姿が映るのか。
そんな授業を思い出して俺は小さく笑いながら鏡に目を移す。
研磨の問題か何かは俺にはわからないけれど、鏡面が歪むのであれば、作っているのはフロート法ではないのかもしれないけれど……懐かしいなぁ……。
「フロート法?なんだそれは」
カミーユが興味があると聞いてきた事に俺は答える。
そもそもこの世界に錫などがあるかもわからないのだけれど。
「ほぅ、セラフィナ書き留めておけ」
「御意」
「ミオリ、フロート法とやらはまた帰ってきてから詳しく聞くが、先ずは神殿に向かうぞ?それから食べてみたかったと言う果物を持って帰ってきてからだ」
それは構わないけれど、俺だって詳しい訳じゃないから簡単な触りしか教えられない。それを進化させていくのは職人の腕に掛かっている。
「ほら、歩けるか?無理そうなら抱いていってやる」
「歩ける」
「じゃあ、手を」
まるでエスコートをするように自然な所作で手を出され、俺もそれにつられたのか手を添えてしまう。
「セラフィナ、重かっただろ?ごめんなありがとう」
「とんでもない、いってらっしゃいませ」
そう言われてセラフィナが一緒に来ない事を知る。
俺は無意識にカミーユを見上げた。
「セラフィナは今日は来れない、神殿には理由があって入れないのだ」
「そっか、買い物とかがあれば一緒には行ける?」
「商人を呼べばいい」
「待てよ、俺、買い物とかは物を見て買いたいんだって」
不穏な空気を感じて俺はカミーユから目を逸らした。
カミーユの指示に、セラフィナはこちらにと一抱えもある鏡を起こす。
銅板だろうか、凄く重そうな装飾で飾られた鏡は、セラフィナがいくら力があるとわかっていても、持ち歩ける手鏡を使っていた俺からすると、とても重そうにかんじた。
流石にキャスター付きの姿見って訳にもいかないだろうけれど、こんなものを運ばせるのが申し訳なくなってくる。
「立てるか?」
「あぁ、うん」
俺はそっと立ち上がり、全身を鏡に映す。
少しぐにゃりと歪む姿だったが、まぁまぁわからなくはない程度。
思っていたよりも装身具のおかげで、肌の露出は抑えられている気がした。
「これなら、まぁ何とか?」
俺の言葉に少しホッとした表情を浮かべたセラフィナ。
それに気付くと、わがままを言ってしまった事に申し訳なさを感じた。
三十路のオヤジが若者を困らせてしまっている。
「セラフィナ、鏡をありがとう。重そうだな……どうやってこの鏡は作っているのかなぁ……フロート法?」
ふと、昔の知識が蘇る。
学生の時に反射の授業でやった、光をレンズに通す実験で屈折率などを求めたりする事から話が逸れて何故が鏡の作り方などを当時聞いたなと言うのを思い出した。
黒いカーテンを敷いたガラスや夜にどうして自分の姿が映るのか。
そんな授業を思い出して俺は小さく笑いながら鏡に目を移す。
研磨の問題か何かは俺にはわからないけれど、鏡面が歪むのであれば、作っているのはフロート法ではないのかもしれないけれど……懐かしいなぁ……。
「フロート法?なんだそれは」
カミーユが興味があると聞いてきた事に俺は答える。
そもそもこの世界に錫などがあるかもわからないのだけれど。
「ほぅ、セラフィナ書き留めておけ」
「御意」
「ミオリ、フロート法とやらはまた帰ってきてから詳しく聞くが、先ずは神殿に向かうぞ?それから食べてみたかったと言う果物を持って帰ってきてからだ」
それは構わないけれど、俺だって詳しい訳じゃないから簡単な触りしか教えられない。それを進化させていくのは職人の腕に掛かっている。
「ほら、歩けるか?無理そうなら抱いていってやる」
「歩ける」
「じゃあ、手を」
まるでエスコートをするように自然な所作で手を出され、俺もそれにつられたのか手を添えてしまう。
「セラフィナ、重かっただろ?ごめんなありがとう」
「とんでもない、いってらっしゃいませ」
そう言われてセラフィナが一緒に来ない事を知る。
俺は無意識にカミーユを見上げた。
「セラフィナは今日は来れない、神殿には理由があって入れないのだ」
「そっか、買い物とかがあれば一緒には行ける?」
「商人を呼べばいい」
「待てよ、俺、買い物とかは物を見て買いたいんだって」
不穏な空気を感じて俺はカミーユから目を逸らした。
57
お気に入りに追加
3,867
あなたにおすすめの小説


ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。