転移先で砂漠の王子に愛されています

梅花

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1章

146話

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「お父様と相談をしてからになりますが、どうしたいか考えておきなさい」
「会いたい、色々な竜神様を見てみたいです」
ミリシャは即答した。
カイルに良く似た艶やかな美しさが見え隠れし始めている。
「そう、竜神様からそうお話しがあったのでお会いしたらお礼を言ってね?」
「はい」
ニコニコと笑うミリシャに、俺もつられて笑みを浮かべた。
「ん?ととさまも来るのか?」
「面倒じゃな」
双子がそれぞれそう呟くのを聞いてそちらを向くと、其所には人型をした双子が座っていた。
さらさらと揺れる濃藍と、濃翠の髪が肩より少し上で切り揃えられている。
「ニイラ、リュイ、そちらの姿になるなんてどうしたの?」
口許を軽く拭った双子は、同じ顔でこちらを見ていた。
「何でも無いが、ミリシャが部屋に戻るのであろ?」
「だから、この姿なのじゃ」
ミリシャを守護するように片時も傍を離れない双子に、嬉しくもあり心配でもあり、不安でもある。
「待って、まだお母様とお茶をしたいの」
「む。仕方あるまい後で庭で歌うなら待ってやる」
「待ってやるが」
「わかったわ、後で中庭に行きましょ」
双子とのやりとりが、昔を思い出してどこか懐かしく感じる。
「ミリシャ、大丈夫ですから庭に行っても」
「お母様はミリシャとお茶は嫌なのですか?」
首を傾げたミリシャにそんなことは無いと言う。
「お母様とお父様はいつもお忙しいから、こうしてお茶ができるだけでも嬉しいので」
そう笑うミリシャに寂しい思いをさせてさしまっていたのかもしれないと、血の気が引く思いをした。
「ミリシャ……」
「ごめんなさいお母様、私の我儘なの……でも、お仕事をおやすみするのも難しいのは理解しているから」
本当に優しいこに育ってくれている。
ミリシャには、本当の父親と母親は別にいることを話してはあるし、ミリシャもそれは理解している。
それでもなお自分とカイルの事をお母様とお父様、そう呼んでくれている。
そもそも、俺には子供が産めない。
カイルの優秀な血を残してあげられないことに胸を痛めた事もある。
カイルはそれで構わないし、ミリシャを本当の子供のように可愛がっており、帝王学も少しずつ学ばせている。
ただ、それはミリシャがやりたくないと言ったらやめるつもりでもいるらしい。
「ミリシャに気を使わせてしまいましたね。ミリシャこそ色々と忙しいでしょう?でも、いつでもいらっしゃい。俺はミリシャのお母様なのですからね?」
抱き締めたいと思うが、この距離だとそれもできないなと思うと、ミリシャが急に立ち上がるとぐるりとテーブルを回って近付いてきた。
「大好きお母様」
ぎゅうっとミリシャに抱き締められて、俺はミリシャを抱き締め返した。
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