26 / 63
1章
142話
しおりを挟む
ミリシャの手から焼き菓子を貰う双子。
それを見ていると、腰に腕を回されて引き寄せられる。
「カイル」
「ん?」
背後に立ったのは愛しい伴侶だった。
「見ていてくれた?」
「あぁ、体調は悪くないか?」
「うん」
見上げた先には少し心配そうなカイルの表情。
「大丈夫……でも、やっぱり……」
「無理はするな」
優しいカイルに抱き締められた。
触れる部分がほんのりと温かい。
「ありがとう」
「食事にしよう、ミリシャ今朝は一緒に食べるか?」
「はい、お父様」
元気良く笑ったミリシャはバスケットをアスミタに預けて両手をそれぞれ竜神と繋いでいる。
先に歩き出した三人を追うようにして俺とカイルは歩き出し、その後にアスミタが続く。
良く見る光景だった。
食事後に、双子が雨を降らせてくれるのを見ながら、ミリシャと四阿でお茶を飲んでいた。
カイルは執務があると先に部屋に戻っていったからだ。
「ミリシャ、お祈りは辛くない?」
毎日の祈りを捧げる行為はミリシャが舞えるようになってから、ミリシャの仕事になってきている。
一生懸命俺から詩を教わり自分のものにしていっている。
あくまでも俺の詩を教えているだけで決まったものはないのだ。
独特の旋律を竜神が気に入って雨を降らせてくれるのだから、きっとアルーディアの竜神はアルーディアの曲の方が好きだと思っているのだけれど、アルーディアの旋律は複雑で、俺は絶対音感の持ち主ではないためなかなか修得できないでいる。
だが、生まれながらのアルーディア人のミリシャなら、それでもいいと思うのだがミリシャは頑なにお母様のお歌が好きと聞く耳を持たないのだ。
双子にそれとなくミリシャの詩が違う旋律でもいいかと聞いたところ、テトやミリシャが歌う事が大切なのだと言われた。
それならと、ミリシャに話をすると、ミリシャは笑顔でお母様と同じがいいのですと言う。
カイルに良く似たミリシャは言い出したら聞かないあたりも、やはり王の娘なのだなと思う。
愛らしく、優しく育ってくれ俺はそれがいつも嬉しかった。
「いつか、他の竜神様にも逢って貰いたいな。アルーディアの中の竜神様全てにとは言わないけれど、もう少しミリシャが大きくなったらお母様と一緒に神殿を巡りましょうか」
「本当?楽しみです」
手を叩いたミリシャは嬉しそうに笑うと、俺は先ずは近い神殿からとどこにしようかゆっくりと思案するのだった。
それを見ていると、腰に腕を回されて引き寄せられる。
「カイル」
「ん?」
背後に立ったのは愛しい伴侶だった。
「見ていてくれた?」
「あぁ、体調は悪くないか?」
「うん」
見上げた先には少し心配そうなカイルの表情。
「大丈夫……でも、やっぱり……」
「無理はするな」
優しいカイルに抱き締められた。
触れる部分がほんのりと温かい。
「ありがとう」
「食事にしよう、ミリシャ今朝は一緒に食べるか?」
「はい、お父様」
元気良く笑ったミリシャはバスケットをアスミタに預けて両手をそれぞれ竜神と繋いでいる。
先に歩き出した三人を追うようにして俺とカイルは歩き出し、その後にアスミタが続く。
良く見る光景だった。
食事後に、双子が雨を降らせてくれるのを見ながら、ミリシャと四阿でお茶を飲んでいた。
カイルは執務があると先に部屋に戻っていったからだ。
「ミリシャ、お祈りは辛くない?」
毎日の祈りを捧げる行為はミリシャが舞えるようになってから、ミリシャの仕事になってきている。
一生懸命俺から詩を教わり自分のものにしていっている。
あくまでも俺の詩を教えているだけで決まったものはないのだ。
独特の旋律を竜神が気に入って雨を降らせてくれるのだから、きっとアルーディアの竜神はアルーディアの曲の方が好きだと思っているのだけれど、アルーディアの旋律は複雑で、俺は絶対音感の持ち主ではないためなかなか修得できないでいる。
だが、生まれながらのアルーディア人のミリシャなら、それでもいいと思うのだがミリシャは頑なにお母様のお歌が好きと聞く耳を持たないのだ。
双子にそれとなくミリシャの詩が違う旋律でもいいかと聞いたところ、テトやミリシャが歌う事が大切なのだと言われた。
それならと、ミリシャに話をすると、ミリシャは笑顔でお母様と同じがいいのですと言う。
カイルに良く似たミリシャは言い出したら聞かないあたりも、やはり王の娘なのだなと思う。
愛らしく、優しく育ってくれ俺はそれがいつも嬉しかった。
「いつか、他の竜神様にも逢って貰いたいな。アルーディアの中の竜神様全てにとは言わないけれど、もう少しミリシャが大きくなったらお母様と一緒に神殿を巡りましょうか」
「本当?楽しみです」
手を叩いたミリシャは嬉しそうに笑うと、俺は先ずは近い神殿からとどこにしようかゆっくりと思案するのだった。
48
お気に入りに追加
3,898
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。