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2章
9話
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暫くゆらゆらと浸かっていたが、身体や髪を洗いたいなと顔を上げた瞬間ぎょっとした。
数人の女性が静かに座ってこちらを見ているのだ。
それも、先程の脱衣所にいた人とは違う。
しかも、大胆な肌を露出しているのだから、目のやり場に困ってしまう。
「大丈夫そうなら身体を洗ってから上がるが」
カミーユの言葉に頭を振った。
「自分でやれるから、それに、女性が……」
できるだけ周りを見ないようにしてカミーユに近付くと、そっとその耳元に囁く。
できるだけ女性達に聞こえないように。
だって、俺より年下の……見るからに20歳前だろう若い女性達の服が張り付いた姿は流石に見てしまうのは申し訳ない。
と言うか下着とかの概念が無いのか?恐らく薄い布一枚を巻いているだけなのだろう。
「あぁ、あれは女官たちだから気にするなほら、上がるぞ?」
ざばりと抱き上げられてしまった俺は悲鳴をあげる。
「待てって、流石に俺より若い女性達がいるのは無理だっ!」
いいオッサンの目のやり場を確保させてくれ!
むしろ、もうちょっと若かったら眼福だとか思えたんだろうけれど。
「は?ちょっと待てミオリ……お前何歳だ?」
抱き上げられたまま動きを止めたカミーユの肩口に周りを見ないように額を当てる。
大丈夫ですよ、女性方……俺は見ていませんからね?
顔を上げない俺にチッと聞こえたのはカミーユの舌打ちだろうか、暫くするとカミーユの声が上から降ってくる。
「女官は下がらせたからそろそろ顔を上げろ……まったく」
「悪い……だって流石に若い子たちに世話をされるのなんて……俺の世界じゃお金を出してしてもらうことだからさ……」
「ミオリの世界は面白いな。まぁいい洗ってやるから取り敢えず……長椅子か」
そろそろと顔を上げると、其処に居た女性たちは確かに居なくなっていた。
長椅子に下ろされると、さばっとカミーユに頭から湯を掛けられた。
お湯は熱くなく、冷めた身体を少しだけ温めてくれる。
「カミーユ、一気に掛けたら危ないだろ!石鹸くれ、自分で出来るから」
この時俺は知らなかった。
石鹸がこの世界ではかなり貴重な物だと言うことを。
また、その石鹸が簡単に出てきたこと。
カミーユが他人だけでなく自分自身を洗うことに慣れていないこと。
おかしいと思う事にまだ俺は気づいていなかったのだ。
わかっていれば、もう少し違う事になっていたのかもしれない。
数人の女性が静かに座ってこちらを見ているのだ。
それも、先程の脱衣所にいた人とは違う。
しかも、大胆な肌を露出しているのだから、目のやり場に困ってしまう。
「大丈夫そうなら身体を洗ってから上がるが」
カミーユの言葉に頭を振った。
「自分でやれるから、それに、女性が……」
できるだけ周りを見ないようにしてカミーユに近付くと、そっとその耳元に囁く。
できるだけ女性達に聞こえないように。
だって、俺より年下の……見るからに20歳前だろう若い女性達の服が張り付いた姿は流石に見てしまうのは申し訳ない。
と言うか下着とかの概念が無いのか?恐らく薄い布一枚を巻いているだけなのだろう。
「あぁ、あれは女官たちだから気にするなほら、上がるぞ?」
ざばりと抱き上げられてしまった俺は悲鳴をあげる。
「待てって、流石に俺より若い女性達がいるのは無理だっ!」
いいオッサンの目のやり場を確保させてくれ!
むしろ、もうちょっと若かったら眼福だとか思えたんだろうけれど。
「は?ちょっと待てミオリ……お前何歳だ?」
抱き上げられたまま動きを止めたカミーユの肩口に周りを見ないように額を当てる。
大丈夫ですよ、女性方……俺は見ていませんからね?
顔を上げない俺にチッと聞こえたのはカミーユの舌打ちだろうか、暫くするとカミーユの声が上から降ってくる。
「女官は下がらせたからそろそろ顔を上げろ……まったく」
「悪い……だって流石に若い子たちに世話をされるのなんて……俺の世界じゃお金を出してしてもらうことだからさ……」
「ミオリの世界は面白いな。まぁいい洗ってやるから取り敢えず……長椅子か」
そろそろと顔を上げると、其処に居た女性たちは確かに居なくなっていた。
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この時俺は知らなかった。
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また、その石鹸が簡単に出てきたこと。
カミーユが他人だけでなく自分自身を洗うことに慣れていないこと。
おかしいと思う事にまだ俺は気づいていなかったのだ。
わかっていれば、もう少し違う事になっていたのかもしれない。
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