転移先で砂漠の王子に愛されています

梅花

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1章

138話

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「カイル……ってば……」
「まったく、テトは周りの目を気にしなさすぎる」
沸々と込み上げてくる嫉妬に、こんなにも醜い感情があることに驚いた。
何があったかと言うと、王宮の庭でミリシャや双子竜神と水やりの雨を降らせながらもその濡れた身体をあろうことか平気で他へと晒したのだ。
暑いからと、双子竜神に多めに降らせて貰った雨をミリシャと一緒に全身に浴びていたところを見て、最初は可愛らしいと見ていたのだが……近寄っていくとテトはあろうことか薄いシャツを着ていたため、濡れて張り付いたうえに白いシャツから色々と透けていた。
アスミタや護衛騎士が控えているのにだ。
勿論、優秀な侍従や騎士は見ていない振りをしているのだが。
慌てて自分が羽織っていた上着を脱いでテトを抱き上げ、そして風呂に放り込んだ。
アスミタが慌ててテトを温めて指先まで冷えていないことを確認すると静かに部屋を出ていく、俺が少し機嫌が悪いのを察して項垂れたテトはそろそろと機嫌をうかがうように寄ってきて長椅子に座った俺の足元にちょこんと座った。
可愛いけれど、表向きは怒っているのだから許さない。
「ごめんなさいカイル……怒らないで」
「何に怒っているかわかるか?」
そう問い掛けると、テトはこくりと頷いた。
「前にも言われたけど……」
「そうだ、その濡れた身体を俺以外に見せるのは禁じたのにな?」
「うん……ごめんなさい」
テトはこういう時に言い訳をしない。
潔いと言うか何と言うか。
「もう、怒っていないが今度から気をつけてくれ」
「はい」
膝立ちになりそろそろと近寄ってきたテトは俺の膝の間に入りぎゅっと抱き付いてくる。
こんな可愛らしい伴侶を許さない訳にはいかないだろう。
「気をつけているんだけど、俺は水が好きだからさ……どうしても浴びたくなる……」
以前、人工の池がありそこで泳ぐこともあったのだと楽しそうに話していたテトを思い出しながら少しだけ申し訳なくもなる。
テトの願いは全て叶えてやりたいが、俺の心が狭量なのだろう閉じ込めてしまいたくもなるのだ。
「わかっている……」
「でも、カイルが怒ってくれるのも嬉しいから。怒らせたくはないけど俺のことを見てくれて俺の為にそうしてくれるのだから……ありがとう」
にこりと微笑むその表情は一番好きな表情なのだが……
「そうか、ならこっちへ来なさい」
夕飯まではまだ時間がある。
テトには悪いが少しだけ意地悪をさせてもらおうかと、膝にテトを抱き上げた。



☆☆☆☆☆☆☆

続きます。
こっそり○○○プレイ予定。
大丈夫、梅花が書くのでハードではありません。
いつか書きますよ( *´艸`)
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感想 77

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