転移先で砂漠の王子に愛されています

梅花

文字の大きさ
上 下
22 / 61
1章

138話

しおりを挟む
「カイル……ってば……」
「まったく、テトは周りの目を気にしなさすぎる」
沸々と込み上げてくる嫉妬に、こんなにも醜い感情があることに驚いた。
何があったかと言うと、王宮の庭でミリシャや双子竜神と水やりの雨を降らせながらもその濡れた身体をあろうことか平気で他へと晒したのだ。
暑いからと、双子竜神に多めに降らせて貰った雨をミリシャと一緒に全身に浴びていたところを見て、最初は可愛らしいと見ていたのだが……近寄っていくとテトはあろうことか薄いシャツを着ていたため、濡れて張り付いたうえに白いシャツから色々と透けていた。
アスミタや護衛騎士が控えているのにだ。
勿論、優秀な侍従や騎士は見ていない振りをしているのだが。
慌てて自分が羽織っていた上着を脱いでテトを抱き上げ、そして風呂に放り込んだ。
アスミタが慌ててテトを温めて指先まで冷えていないことを確認すると静かに部屋を出ていく、俺が少し機嫌が悪いのを察して項垂れたテトはそろそろと機嫌をうかがうように寄ってきて長椅子に座った俺の足元にちょこんと座った。
可愛いけれど、表向きは怒っているのだから許さない。
「ごめんなさいカイル……怒らないで」
「何に怒っているかわかるか?」
そう問い掛けると、テトはこくりと頷いた。
「前にも言われたけど……」
「そうだ、その濡れた身体を俺以外に見せるのは禁じたのにな?」
「うん……ごめんなさい」
テトはこういう時に言い訳をしない。
潔いと言うか何と言うか。
「もう、怒っていないが今度から気をつけてくれ」
「はい」
膝立ちになりそろそろと近寄ってきたテトは俺の膝の間に入りぎゅっと抱き付いてくる。
こんな可愛らしい伴侶を許さない訳にはいかないだろう。
「気をつけているんだけど、俺は水が好きだからさ……どうしても浴びたくなる……」
以前、人工の池がありそこで泳ぐこともあったのだと楽しそうに話していたテトを思い出しながら少しだけ申し訳なくもなる。
テトの願いは全て叶えてやりたいが、俺の心が狭量なのだろう閉じ込めてしまいたくもなるのだ。
「わかっている……」
「でも、カイルが怒ってくれるのも嬉しいから。怒らせたくはないけど俺のことを見てくれて俺の為にそうしてくれるのだから……ありがとう」
にこりと微笑むその表情は一番好きな表情なのだが……
「そうか、ならこっちへ来なさい」
夕飯まではまだ時間がある。
テトには悪いが少しだけ意地悪をさせてもらおうかと、膝にテトを抱き上げた。



☆☆☆☆☆☆☆

続きます。
こっそり○○○プレイ予定。
大丈夫、梅花が書くのでハードではありません。
いつか書きますよ( *´艸`)
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められた悪役令息の行く末は、

珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】 公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。 一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。 「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。 帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。 【タンザナイト王国編】完結 【アレクサンドライト帝国編】完結 【精霊使い編】連載中 ※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。